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エピファネイア
通算成績14戦6勝
獲得賞金6億9,858万円
生年月日 2010.02.11(平成22年)毛色 鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 9 | GIドバイワールドカップ | アラブ首長国連邦 ダ2000 | 3人気 | C.スミヨン | — | 映像 | ||
| 5 | GI有馬記念 | 中山 芝2500 | 2人気 | 川田将雅 | 2:35.5 | 上り34.6 | 映像 | |
| 1 | GIジャパンカップ | 東京 芝2400 | 4人気 | C.スミヨン | 2:23.1 | 上り35.0 | 映像 | |
| 6 | GI天皇賞(秋) | 東京 芝2000 | 4人気 | 福永祐一 | 1:59.9 | 上り34.1 | 映像 | |
| 4 | GIクイーンエリザベス2世カップ | 香港 芝2000 | 2人気 | 福永祐一 | — | — | ||
| 3 | GII産経大阪杯 | 阪神 芝2000 | 1人気 | 福永祐一 | 2:00.6 | 上り34.4 | 映像 | |
| 1 | GI菊花賞 | 京都 芝3000 | 1人気 | 福永祐一 | 3:05.2 | 上り35.9 | 映像 | |
| 1 | GII神戸新聞杯 | 阪神 芝2400 | 1人気 | 福永祐一 | 2:24.8 | 上り34.3 | — | |
| 2 | GI東京優駿 | 東京 芝2400 | 3人気 | 福永祐一 | 2:24.4 | 上り33.9 | 映像 | |
| 2 | GI皐月賞 | 中山 芝2000 | 2人気 | 福永祐一 | 1:58.1 | 上り35.6 | 映像 | |
| 4 | GII報知杯弥生賞 | 中山 芝2000 | 1人気 | W.ビュイック | 2:01.1 | 上り35.3 | — | |
| 1 | GIIIラジオNIKKEI杯 | 阪神 芝2000 | 1人気 | 福永祐一 | 2:05.4 | 上り34.4 | — | |
| 1 | OP京都2歳S | 京都 芝2000 | 1人気 | 福永祐一 | 2:03.0 | 上り33.7 | — | |
| 1 | 2歳新馬 | 京都 芝1800 | 1人気 | 福永祐一 | 1:48.9 | 上り33.5 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父シンボリクリスエスSymboli Kris S | Kris S. | Roberto |
| Sharp Queen | ||
| Tee Kay | Gold Meridian | |
| Tri Argo | ||
| 母シーザリオCesario | スペシャルウィークSpecial Week | サンデーサイレンスSunday Silence |
| キャンペンガール | ||
| キロフプリミエールKirov Premiere | Sadler's Wells | |
| Querida |
引退後・牧場での映像
ゴール板の先の時間旅程 — この馬の物語
2010年生まれの鹿毛の牡馬。父シンボリクリスエス、母シーザリオ。主な勝ち鞍は菊花賞・ジャパンC・ラジオNIKKEI杯。
十二夜から来た名 ― 名と血
2010年2月11日、北海道安平町のノーザンファームに鹿毛の牡馬が生まれた。父シンボリクリスエスは2002年と2003年に天皇賞(秋)と有馬記念をそれぞれ連覇し、二年続けて年度代表馬に選ばれた馬である。ただしこの仔が生まれた時点で、その産駒の唯一のGI馬はダートのサクセスブロッケンだった。 母はシーザリオ。2005年に優駿牝馬(オークス)を勝ち、そのままアメリカへ渡ってアメリカンオークスを4馬身差で制した青毛の牝馬である。日本調教馬として初めて米国のGIを勝ったその牝馬は、通算6戦5勝という短い戦績のまま、右前脚の繋靭帯炎で競走生活を終えた。主戦を務めたのが福永祐一、管理したのが栗東の角居勝彦だった。 ノーザンファームで繁殖に上がったシーザリオは、最初に産んだ二頭をいずれも脚部不安で大成させられず、一年の不受胎を挟んで、シンボリクリスエスとの間に三番仔を産んだ。それがこの鹿毛である。馬主はキャロットファーム。厩舎は母と同じ角居厩舎。そして鞍上には、母の背を知る男が座ることになる。 名はエピファネイア。ギリシャ語で公現祭――クリスマスから十二日目、一月六日の祝日を指す。母シーザリオの名は、シェイクスピアの喜劇『十二夜』でヴァイオラが男装するときに名乗った偽名だった。そしてその『十二夜』が指すのは、クリスマスから十二日目、公現祭の夜である。母は芝居の登場人物の名を、仔はその芝居が指し示す祝日の名を負った。芝居の続きのような命名だった。
伝説の新馬戦 ― 三連勝の秋
デビューは2012年10月21日、京都の芝1800m。菊花賞当日に組まれるこの条件の新馬戦は、ローズキングダムやアンライバルドが勝ち上がったことから「伝説の新馬戦」と呼ばれることがある。福永祐一を背にした鹿毛は中団から進み、2着に3馬身の差をつけて初陣を飾った。 一か月後の京都2歳ステークスは単勝1.2倍。前めの位置から上がり最速の33秒7を使って1馬身3/4差。暮れの阪神、ラジオNIKKEI杯2歳ステークスは七頭立てで1000m通過66秒という遅い流れになったが、逃げるバッドボーイと、二番手を追走したキズナを競り落として三連勝、重賞初制覇を果たした。 三戦三勝、すべて1番人気。母の名を知る者にとって、この鹿毛はもう来春の主役だった。
二分の一馬身 ― 春の二つの二着
2013年3月3日、弥生賞。前の週に福永が騎乗停止となり、代役はウィリアム・ビュイックが務めた。直線で一旦は先頭に立ちながら、そこから伸びを欠いて4着。初黒星だった。掛かった、という一言が残る。母シーザリオも持っていた激しい前進気勢――折り合いという課題が、ここで表に出た。 4月14日、皐月賞。福永が戻る。だが馬は行きたがり、中団に置くはずの位置が前になった。直線、内から抜け出しにかかったエピファネイアを、外からロゴタイプが差し切る。レコードで駆け抜けた二歳王者との差は、二分の一馬身。 5月26日、東京優駿。道中で躓く場面もありながら、直線では皐月賞上位馬の間を割って伸び、一度は先頭に立った。その一瞬あと、外から鋭く弾け飛んできたのがキズナだった。残り50メートル。差はまた、二分の一馬身。 二つのクラシックを、同じ着差で落とした。福永はこの二着を長く背負う。十年後、彼はあのころ「これほどの馬を用意してもらって、うまく乗れない騎手のせいで馬の戦績を汚してしまうのなら、いっそ辞めたほうがいい」[^1]と本気で考えていた、と明かしている。父・福永洋一は「天才」と呼ばれた騎手だったが、日本ダービーは勝てないまま騎手生活を終えている。その息子が、父の届かなかった一つに最も近づいて、また落とした。
出典:Number Web「「いっそ辞めたほうが」10年前、福永祐一は本気で引退を考えていた…エピファネイアを操った“会心の手綱”の真相〈JRAラスト騎乗〉」(片山良三)2023年2月19日配信、https://number.bunshun.jp/articles/-/856327、閲覧日:2026年7月29日。
泥の淀 ― 菊花賞
夏は休養に充てた。ハミを替え、舌を縛る。折り合いのための工夫を積んで臨んだ9月22日の神戸新聞杯は単勝1.4倍。直線で楽に抜け出し、2馬身半差の圧勝で重賞2勝目を挙げた。 10月20日、京都・芝3000m。皐月賞馬ロゴタイプは中距離路線へ向かい、ダービー馬キズナは凱旋門賞のためフランスにいた。単勝1.6倍の断然人気。前夜からの雨で馬場は不良――菊花賞が不良馬場で行われるのは1957年以来、56年ぶりのことだった。 この日のエピファネイアは、鞍上がゲートから出ないのではないかと案じるほど落ち着いていた。ところがスタートは抜群で、二頭を行かせて三番手。一周目のスタンド前でこそ行きたがったが、それも一、二コーナーまで。向正面で人馬の息が合ったとき、福永は早くも勝ちを確信していたという。 三、四コーナー、泥にスタミナを削られて脱落する馬と、押し上げにかかる馬が入り乱れる。その中を馬なりのまま通過し、直線で少し気合をつけられただけで先頭に立った。あとは独走だった。鞭は一度も入らないまま、二着サトノノブレスに五馬身。3分05秒2。 福永祐一、牡馬クラシック初制覇。牡馬クラシックには四十二度目の騎乗での戴冠だった。父・洋一は1971年にニホンピロムーテーで菊花賞を勝っている。親子二代の菊花賞ジョッキーが、この日生まれた。「春にはできなかった騎乗があの大一番でできた充実感は一生忘れられない」[^1]――彼はのちにそう語っている。
出典:Number Web「「いっそ辞めたほうが」10年前、福永祐一は本気で引退を考えていた…エピファネイアを操った“会心の手綱”の真相〈JRAラスト騎乗〉」(片山良三)2023年2月19日配信、https://number.bunshun.jp/articles/-/856327、閲覧日:2026年7月29日。
立て直し ― 二〇一四年の遠回り
三冠最後の一冠を獲った馬は、その年のジャパンカップにも有馬記念にも姿を見せなかった。右前脚の捻挫もあり、年内は休養に充てられた。 明けて4月6日、産経大阪杯。八頭立てにキズナ、メイショウマンボ、ビートブラック、ショウナンマイティが並ぶ濃いメンバーで1番人気に推されたが、四コーナーで仕掛けたところを、後方で脚をためていたキズナにかわされ、先行して粘るトウカイパラダイスも捉えきれずに3着。 4月27日、香港・沙田のクイーンエリザベス2世カップ。初めての海外遠征は、香港ダービー馬デザインズオンロームの4着に終わった。 帰国後、疲れが抜けきらず宝塚記念を回避。放牧のため安平町のノーザンファーム早来に着いたとき、馬体からは明らかに筋肉が落ちていた。まず疲労を抜き、それから週に二、三回、強い負荷をかける。夏をまるごと使った作り直しだった。 六か月ぶりの復帰戦となった11月2日の天皇賞(秋)は、出遅れが響いてスピルバーグの6着。数字だけを見れば、菊花賞から一年余り、この馬は何も勝っていない。
四馬身 ― 手綱が替わった日
天皇賞(秋)のあと、陣営は中距離路線を切り上げてジャパンカップへ向かうことを決め、同時に鞍上を替えた。福永祐一から、クリストフ・スミヨンへ。 11月30日、東京・芝2400m。GI馬が十二頭という顔ぶれだった。ジャパンカップ三連覇を狙うジェンティルドンナ、世界ランキング一位のジャスタウェイ、天皇賞(秋)を勝ったばかりのスピルバーグ、皐月賞馬イスラボニータ、ダービー馬ワンアンドオンリー、桜花賞馬ハープスター。エピファネイアは4番人気だった。 パドックでは汗をかいて入れ込み、鞍上が跨ってからも興奮は収まらない。サトノシュレンが引っ張る流れを好位の内で追走したが、道中は掛かりっぱなしで、前の馬にぶつかりそうでハラハラしたとスミヨンは振り返っている。直線を向いた時点でも、ここまで行きたがり通しでは普通ならもたない、と感じていたという。 ところが残り400メートルで先頭に立つと、そこから後続との差がみるみる開いた。外を伸びたジャスタウェイが届かない。内で追ったジェンティルドンナとスピルバーグは三着争いに落ちた。2分23秒1、四馬身差。 その二着ジャスタウェイの鞍上が、福永祐一だった。 ブエナビスタにもオルフェーヴルにも跨った男は、レース後にこう言った。「自分が乗せてもらった日本馬の中では、いちばん強い」[^1]。この一戦の内容は129ポンドと評価され、ワールドベストレースホースランキングの世界2位。1位はジャスタウェイで、その年、日本調教馬が世界の一位と二位を占めた。
出典:日本中央競馬会「第34回 ジャパンカップ」(レース結果・回顧、谷川善久)2014年11月30日施行、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/jc/result/jc2014.html、閲覧日:2026年7月29日。
左前の繋靭帯 ― 早すぎた幕
12月28日、有馬記念。スミヨンはワールドスーパージョッキーズシリーズ出場に伴う限定騎乗で乗れず、福永はジャスタウェイに騎乗する。手綱は川田将雅に託された。直線で一度は先頭に立ったものの、そこから後続にかわされて5着。勝ったのは、ジャパンカップで四着に退けたジェンティルドンナだった。 年が明けて2015年3月、ドバイ・メイダン。ドバイワールドカップは初めてのダートで、プリンスビショップの9着に終わる。これが最後の一戦になった。 帰国後は宝塚記念へ向けて調整されていたが、6月10日の調教のあと、左前脚に繋靭帯炎を発症する。ファン投票二位に選ばれていた宝塚記念を回避し、一次登録を済ませていた凱旋門賞への挑戦も白紙になった。復帰は断念され、7月31日、競走馬登録が抹消された。 母シーザリオの現役を終わらせたのも、繋靭帯炎だった。母は右前、仔は左前。母は6戦5勝、仔は14戦6勝。どちらも、まだ走れるはずの時間を残したまま、ターフを降りている。
種を継ぐ ― 産駒たちの十年
2015年8月、安平町の社台スタリオンステーションへ移った。初年度の種付料は250万円である。 初年度産駒のデビューは2019年。同じ年に初年度産駒が走り出した種牡馬には、あのキズナがいた。新種牡馬リーディングは重賞馬を出したキズナに次ぐ二位。ただし勝ち上がり頭数は30頭で、キズナの27頭を上回った。初年度産駒のJRA勝ち上がり頭数としては、ディープインパクトの34頭、ロードカナロアの30頭に次ぐ数字だった。 2020年4月12日、デアリングタクトが桜花賞を勝つ。産駒の重賞初制覇が、そのままGI初制覇だった。彼女はオークス、秋華賞と勝ち進み、史上初の無敗の三冠牝馬になる。翌2021年はエフフォーリアが皐月賞・天皇賞(秋)・有馬記念を制して年度代表馬となり、サークルオブライフが阪神ジュベナイルフィリーズを勝った。一年でGI四勝。2022年度の種付料は1800万円、社台スタリオンステーションで最も高い額になった。 母シーザリオは2021年2月27日に世を去っている。息子の血が日本の頂に届いていく、その途中だった。彼女はこの馬のあとにも、朝日杯フューチュリティステークスを勝ったリオンディーズ、ホープフルステークスと皐月賞を勝ったサートゥルナーリアを産んでいる。全妹ロザリンドの産駒には、青葉賞とアルゼンチン共和国杯を勝ったオーソリティがいる。 そこから数年は伸び悩んだ。古馬になってからの成績を理由に「早熟」と評される時期が続き、2024年度の種付料は1500万円に下がって、最高額の座はキタサンブラックに移る。だが同じ2024年、ダノンデサイルが東京優駿を、ステレンボッシュが桜花賞を、テンハッピーローズがヴィクトリアマイルを、ブローザホーンが宝塚記念を勝ち、再びGI四勝を並べた。翌2025年3月にはダノンデサイルがドバイシーマクラシックを制し、産駒に初めての海外GIをもたらす。父が最後に敗れた砂の街で、仔が芝を獲った。 2025年秋、エピファネイアは2歳リーディングサイアーの首位を独走した。2021年から四年続けて二位に甘んじていた座である。2025年度に1200万円まで下げられた種付料は、2026年度に1500万円へ戻されている。
顕現 ― 残る一冠
五大クラシック――桜花賞、優駿牝馬、皐月賞、東京優駿、菊花賞。このうち四つは、すでに産駒が勝った。残っているのは菊花賞だけである。父自身が泥の淀で鞭を一度も使わずに五馬身ちぎった、あの一冠に、2025年の菊花賞までまだ産駒の名は届いていない。 あの手綱の続きも書いておきたい。2018年5月27日、福永祐一はワグネリアンで東京優駿を勝った。十九回目の挑戦だった。父・洋一が届かなかった一つに、息子が届いた日である。2023年2月に鞍を置き、いまは調教師として栗東にいる。そして、あの春に二分の一馬身で二度取りこぼした鹿毛は、のちに東京優駿を勝つ仔の父になった。 エピファネイアが走ったのは十四戦、三年に満たない。その短さのなかに、泥を蹴って五馬身、掛かり通しで四馬身という二つの独走がある。いま、その脚は仔たちの中にある。公現――隠れていたものが顕れること。名は、あとから追いついてきた。
産駒 — 旅を継ぐ馬
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