名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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ドライスタウトのイメージビジュアル
ドライスタウトDry Stout
Dry Stout

ドライスタウト

通算成績10戦6勝

獲得賞金19,519万円

生年月日 2019.03.21(令和元年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ドライスタウトの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 GIII東京中日S杯武蔵野S 東京 ダ1600 2人気 横山武史 1:35.2 上り36.0映像
1 JpnⅢテレ玉杯オーバルスプリント 浦和 ダ1400 1人気 戸崎圭太 1:25.7 上り37.7
2 JpnⅢかきつばた記念 名古屋 ダ1500 1人気 戸崎圭太 1:31.1 上り36.4
4 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 2人気 戸崎圭太 1:36.3 上り36.9映像
2 LすばるS 中京 ダ1400 1人気 戸崎圭太 1:23.9 上り36.9
1 OP霜月S 東京 ダ1400 1人気 戸崎圭太 1:24.7 上り35.8
4 JpnⅡ兵庫チャンピオンシップ 園田 ダ1870 1人気 戸崎圭太 2:04.3 上り41.2
1 JpnⅠ全日本2歳優駿 川崎 ダ1600 1人気 戸崎圭太 1:39.2 上り37.2映像
1 オキザリス賞 東京 ダ1400 3人気 戸崎圭太 1:23.4 上り35.9
1 2歳新馬 中京 ダ1200 3人気 福永祐一 1:11.2 上り35.4

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ドライスタウトの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
シニスターミニスターSinister MinisterOld TriesteA.P. Indy
Lovlier Linda
Sweet MinisterThe Prime Minister
Sweet Blue
マストバイアイテムアフリートAfleetMr. Prospector
Polite Lady
ビッグマリーンフジキセキFuji Kiseki
ドラゴンマリーン

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの黒鹿毛の牡馬。父シニスターミニスター、母マストバイアイテム。主な勝ち鞍は全日本2歳優駿・オーバルスプリント・武蔵野S。

黒ビールの名 ― 名前と血

黒鹿毛の馬体は、光を吸うように黒かった。その色から一杯の黒ビールを連想して、名がついた。ドライスタウト。辛口の黒麦酒の名を、下河辺牧場で2019年3月21日に生まれたこの牡馬は背負った。 父はシニスターミニスター。日本のダート路線に幾多の強者を送り込んだ種牡馬で、チャンピオンズカップと帝王賞を制したテーオーケインズも、この父を持つ。母はマストバイアイテム、その父はアフリート。芝の華やかさより、砂を掻いて前へ出る血が、はっきりと流れていた。 一口の出資を募るYGGホースクラブの馬として、栗東の牧浦充徳のもとへ。飛び抜けた良血ではない。だが、砂の上でこそ物を言う血だった。物語は、黒ビールの名を得た一頭の、砂への確かな適性から静かに始まる。

無傷三連勝 ― 二歳の頂点

2021年9月、中京のダート1200メートル。福永祐一を背に、新馬戦を勝ち上がる。手綱はすぐに戸崎圭太へ渡り、11月の東京・オキザリス賞も続けて制した。砂を苦にしない二歳馬が、静かに評価を上げていく。 そして12月15日、川崎。交流のJpnI・全日本2歳優駿。1番人気に応えたドライスタウトは、4コーナーから早めに先頭を奪うと、追ってくるコンバスチョンを突き放し、2馬身半差で押し切った。勝ち時計1分39秒2は、ラブミーチャンの持つレースレコードを0秒8も更新する快時計。無傷の三連勝で、ダート二歳の頂点に立った。牧浦にとっては、これがGI級競走の初制覇でもあった。まだ底を見せない黒鹿毛に、翌春からの三歳ダート路線への期待が膨らんだ。

ゲートの躓き ― 王者の蹉跌

明けて2022年5月、園田。三歳のダート路線、兵庫チャンピオンシップ(JpnII)に1番人気で臨む。だが、勝負はゲートの内で決していた。発馬でゲートに脚を滑らせるアクシデント。右前の蹄と右のトモを痛め、態勢を立て直せぬまま四着に沈んだ。 無傷だった王者の、初めての黒星。傷は軽くなかった。三歳ダート路線の頂点・ジャパンダートダービーを回避して、長い休養に入る。順風に見えた歩みが、砂の上で初めて足踏みした。三連勝の勢いと、故障の現実の間には、思いのほか深い溝が横たわっていた。

勝ち切れない日々 ― 壁の前で

半年の休養を経て、2022年11月の霜月ステークスで復帰。先行から直線を危なげなく抜け出し、完勝でオープンの舞台へ戻ってきた。だが、そこから先が長かった。 年明けのすばるステークスは二着。2月、フェブラリーステークス(GI)では2番人気に支持され、五番手から手応えよく運びながら、追ってからの反応が鈍く、馬群を割れずに四着。5月のかきつばた記念(JpnIII)は、直線で一度は先頭に立ちながら、ウィルソンテソーロとの激しい叩き合いの末に捉えられ、二着。戸崎とともに、堅実に上位を走る。しかし、あと一歩が届かない。勝利という頂は、いつも指の先をすり抜けていった。

武蔵野の直線 ― 取り返した重賞

流れが変わったのは、2023年9月の浦和・テレ玉杯オーバルスプリント(JpnIII)だった。戸崎を背に1番人気に応え、久しぶりに重賞のゴール板を先頭で駆け抜ける。勝てない日々の澱を、一戦で洗い流した。 そして11月11日、東京・武蔵野ステークス(GIII)。鞍上は横山武史に替わっていた。2番人気のドライスタウトは、直線で鋭く抜け出すと、追いすがるタガノビューティーを一馬身四分の三差で退け、重賞三勝目を掴んだ。二歳の頂点から、ゲートの躓きと勝ち切れぬ日々を越えて、砂の一線級であることを、もう一度その脚で証明してみせた。——この一勝が、彼がターフに刻む最後の勝利になるとは、まだ誰も知らない。

繋の痛み、弟の同じ舞台

五歳を、根岸ステークスから始めるはずだった。だが2024年1月、その一週前に歩様の異常が出る。診断は左前繋部の浅屈腱炎。砂を掻き続けた脚が、悲鳴を上げていた。放牧に出され、復帰を期して時を待つ。しかし年の暮れ、12月に同じ患部が再発する。もう、無理はさせられなかった。武蔵野ステークスの直線を最後に、ドライスタウトは一度もゲートをくぐらぬまま、競走馬としての登録を去った。通算十戦六勝。二歳のJpnIを含む重賞三勝を残し、北海道日高のブリーダーズ・スタリオン・ステーションで、種牡馬としての第二の生を歩み始める。 この物語には、静かな続きがある。2025年、浦和のオーバルスプリント。彼が2023年に先頭で駆け抜けたのと同じ砂の1400メートルを、半弟のサンライズフレイムが制した。父は違えど、マストバイアイテムという同じ母から生まれた弟が、兄と同じ舞台で重賞初制覇を果たし、兄弟での制覇が成った。黒ビールの名を背負った馬が砂に刻んだ道を、同じ血がもう一度なぞっていく。彼が残したのは、記録だけではない。次に走る者へ手渡された、砂の記憶だった。

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