名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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ドンインザムードのイメージビジュアル
ドンインザムードDon in the Mood
Don in the Mood

ドンインザムード

通算成績13戦5勝

獲得賞金14,738万円

生年月日 2022.05.07(令和4年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ドンインザムードの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
3 GIII東海S 中京 ダ1400 1人気 荻野極 1:23.3 上り37.2映像
1 OP欅S 東京 ダ1400 1人気 荻野極 1:22.0 上り35.8
1 LオアシスS 東京 ダ1600 2人気 荻野極 1:35.6 上り35.4
2 OPバレンタインS 東京 ダ1400 1人気 荻野極 1:23.1 上り35.2
2 OPコールドムーンS 中京 ダ1400 2人気 荻野極 1:22.6 上り35.4
11 JpnⅠジャパンダートクラシック 大井 ダ2000 6人気 松山弘平 2:08.3 上り43.1映像
1 GIIIレパードS 新潟 ダ1800 5人気 松山弘平 1:50.5 上り36.8映像
6 3歳以上2勝クラス 阪神 ダ1800 1人気 松山弘平 1:53.7 上り39.0
3 GIIUAEダービー メイダン ダ1900 5人気 坂井瑠星 1:59.54 映像
3 LヒヤシンスS 東京 ダ1600 9人気 田辺裕信 1:38.0 上り35.8映像
1 3歳1勝クラス 中京 ダ1800 8人気 松山弘平 1:53.3 上り38.3
6 もちの木賞 京都 ダ1800 6人気 松山弘平 1:53.9 上り39.5
1 2歳新馬 京都 ダ1800 7人気 松山弘平 1:55.0 上り39.2

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ドンインザムードの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
アジアエクスプレス 栗毛ヘニーヒューズ 栗毛ヘネシー
Meadow Flyer
ランニングボブキャッツ 鹿毛Running Stag
Backatem
ハギノウィッシュ 鹿毛アグネスタキオン 栗毛サンデーサイレンス
アグネスフローラ
アヴェニューズレディ 黒鹿毛Avenue of Flags
Lady Sauce Boat
STORY

旅程 — この馬の物語

2022年生まれの黒鹿毛の牡馬。父アジアエクスプレス 栗毛、母ハギノウィッシュ 鹿毛。主な勝ち鞍はレパードS。

気分はグルーヴで ― 名前と血

2022年5月7日、北海道新冠で生まれた黒鹿毛の牡馬。名のドン(Don)は冠名、そこに続くイン・ザ・ムード(in the Mood)は、グレン・ミラー楽団が1939年に世に送り出し、スウィングの時代を象徴する名曲から取られた。戦火の暗い時代に人々の足を踏み鳴らし、リズムを心に刻んだあの曲の空気を、この馬は名に宿して生まれてきた。 父アジアエクスプレスはヘニーヒューズの息子で、自身も朝日杯フューチュリティステークスを制した俊足のスプリンター。その産駒にダートの砂を勢いよく蹴り上げる資質は父から自然と受け継がれた。母ハギノウィッシュは「ハギノ」の冠が示す通り、信定牧場ゆかりの牝馬系。母の父はサンデーサイレンスの傑作産駒アグネスタキオンで、短距離の速さと中距離の底力を紡ぐ血が交差した。速さを活かすダートの舞台で、この馬の物語は動き始めた。

出足と星 ― 新馬からの助走

2024年10月12日、京都のダート1800メートル。7番人気の評価を覆し、デビュー戦を制した。松山弘平を背に走ったこの勝利は地味に映ったかもしれないが、のちに振り返れば、大きなリズムの始まりの一小節だった。続くもちの木賞で6着に敗れ、年が明けた中京の1勝クラスで再び先頭を奪取。一歩一歩、土台を踏み固めながら世代のダート路線を上っていった。

砂漠の夕陽に ― UAEダービー3着

3歳春、陣営が選んだ舞台はメイダンだった。2025年4月5日、UAE(アラブ首長国連邦)ダービー。日本馬4連覇が懸かる一戦に、鞍上を坂井瑠星に乗り替えて臨んだ。4コーナーで先頭集団に取り付き、直線では一時先頭のアドマイヤデイトナを射程に捉えた。「4コーナーから直線の途中まではやったかなと思いました」[^1]。管理する今野貞一調教師はそう振り返った。最後は苦しくなり3着。それでも世界の砂を経験した馬体は、本格化前の試金石を確かに踏んだ。メンタルは大人びているが体の成長はまだこれから――今野師はこのとき、すでに先を見ていた。

出典:東京スポーツ 2025年4月6日配信、閲覧日:2026年6月25日。

不良馬場のビート ― レパードSで重賞初制覇

2025年8月10日、新潟ダート1800メートル。天候は曇り、馬場は不良。5番人気の評価を気にする様子も見せず、松山弘平を背にドンインザムードはスタートから力強くリズムを刻んだ。3番手のインを先行し、直線では内から先頭に立つと、外から迫るヒルノハンブルク、ルヴァンユニベールとの叩き合いを半馬身差でものにした。初の重賞タイトル、レパードステークス。前走で負けはしたが十分に重賞でやれる馬だと思っていた、と松山は言い、「こうして力を証明することができてホッとしています」[^1]と続けた。いまは左回りのほうがしっかり能力を出せる――そう付け加えて、手綱を下ろした。

出典:東京スポーツ 2025年8月10日配信、閲覧日:2026年6月25日。

右回りの壁と冬の足踏み

GIIIを手にした次の挑戦は秋。10月のジャパンダートクラシック(大井ダート2000メートル・JpnI)では、右回りの難しさと距離の壁を見せて11着に沈んだ。左回りのほうが力を出せる、とレパードSで松山が語った感触が、そのまま裏返しに証明された夜だった。冬のコールドムーンSで2着、年明けのバレンタインSでも2着。左回りでは常に上位争いを演じながら、タイトルまであと一歩届かない日々が続いた。それでもドンインザムードは走り続けた。

充実の春 ― 荻野極とのリズム

2026年、鞍上が荻野極に替わると、馬はギアを上げた。4月26日のオアシスステークス(東京ダート1600メートル)。1番人気テーオーパスワードとの叩き合いを制し、リステッド競走を勝利。馬が凄く充実している、この条件も合うと思っていた――荻野極のそんな手応えを裏付けるように、5月23日の欅ステークス(東京ダート1400メートル)では、59キロの斤量を課されながらも後続を7馬身引き離す圧勝。今野師はもともと東海Sを狙って欅Sを使ったと明かし、「強かったですね。ビックリしました」[^1]と驚きを隠さなかった。荻野極も、この距離のレースが器用になってきた、反応も良く強い競馬だったと続けた。短距離から中距離まで、どの舞台でも力を示せる馬になっていた。今野師の言葉どおり、欅Sは布石にすぎない。視線はもう、その先の夏に向いていた。

出典:中日スポーツ 2026年5月23日配信、閲覧日:2026年6月25日。

中京の坂 ― 東海S

2026年7月26日、中京ダート1400メートル、東海ステークス(GIII)。春先から狙いを定め、59キロを背負って欅ステークスを7馬身ちぎってから迎えた一戦である。単勝の支持は集中し、断然の1番人気に推された。 荻野極を背に、馬は流れに乗った。だが中京の直線、坂を上がったところで脚色が鈍る。7番人気のマテンロウコマンドが松山弘平の手で抜け出し、ドンインザムードは3着に止まった。1分23秒3、勝ち馬とは0秒5。狙って向かった夏の重賞は、はじめから満点の答えをくれる場所ではなかった。 4歳。重賞のタイトルは、いまもレパードステークスの一つ。それでも、条件戦からリステッド、オープンと一段ずつ登り、斤量を背負っても後続を突き放した春の充実は、この一敗では消えない。グレン・ミラーの曲がそうであったように、本当のビートは、途中で止まったりしない。

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