名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

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ドウデュースのイメージビジュアル
ドウデュースDo Deuce
Do Deuce

ドウデュース

通算成績16戦8勝

獲得賞金177,587万円

生年月日 2019.05.07(令和元年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ドウデュースの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
GI有馬記念 中山 芝2500 武豊 映像
1 GIジャパンカップ 東京 芝2400 1人気 武豊 2:25.5 上り32.7映像
1 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 2人気 武豊 1:57.3 上り32.5映像
6 GI宝塚記念 京都 芝2200 1人気 武豊 2:12.9 上り34.6映像
5 GIドバイターフ メイダン 芝1800 1人気 武豊 映像
1 GI有馬記念 中山 芝2500 2人気 武豊 2:30.9 上り34.3映像
4 GIジャパンカップ 東京 芝2400 3人気 戸崎圭太 2:22.7 上り33.7映像
7 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 2人気 戸崎圭太 1:56.6 上り35.3映像
GIドバイターフ メイダン 芝1800 武豊 映像
1 GII京都記念 阪神 芝2200 1人気 武豊 2:10.9 上り34.0映像
19 GI凱旋門賞 パリロンシャン 芝2400 3人気 武豊 映像
4 GIIニエル賞 パリロンシャン 芝2400 2人気 武豊 映像
1 GI東京優駿 東京 芝2400 3人気 武豊 2:21.9 上り33.7映像
3 GI皐月賞 中山 芝2000 1人気 武豊 2:00.0 上り33.8映像
2 GII報知弥生ディープ記念 中山 芝2000 1人気 武豊 2:00.5 上り35.0映像
1 GI朝日杯フューチュリティステークス 阪神 芝1600 3人気 武豊 1:33.5 上り34.5映像
1 LアイビーS 東京 芝1800 2人気 武豊 1:49.3 上り34.0
1 2歳新馬 小倉 芝1800 1人気 武豊 1:50.2 上り34.1

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ドウデュースの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ハーツクライHeart's CryサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
アイリッシュダンストニービンTony Bin
ビューパーダンスBuper Dance
ダストアンドダイヤモンズDust and DiamondsVindicationSeattle Slew
Strawberry Reason
MajesticallyGone West
Darling Dame

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの鹿毛の牡馬。父ハーツクライ、母ダストアンドダイヤモンズ。主な勝ち鞍は朝日フューチュリティ・東京優駿・有馬記念。

テニスの祈り ― 名前と血

2019年5月7日、ノーザンファーム生まれの鹿毛。父はディープインパクトの好敵手として知られたハーツクライ、母は2012年ブリーダーズカップ・フィリー&メアスプリント2着の米重賞馬ダストアンドダイヤモンズで、ノーザンファームが100万ドルで輸入した牝馬だった。 名は、京言葉の「どうどす?」を転じたもの。名付け親は彫刻家の名和晃平で、テニスの「デュース」――勝利目前で競り合う、あの一語が重ねられている。勝負どころで踏ん張る馬であれ、という願いだった。 そしてこの馬の物語には、もう一本の縦糸が通っている。鞍上・武豊。デビュー戦から、一度の海外遠征を除くすべてのレースでこの名手が手綱を取った。馬と騎手、二つの夢が、ここから一つの旅になる。

完成された二歳 ― 朝日杯まで

2021年9月、小倉の新馬戦を単勝1番人気できっちり勝ち上がると、東京のアイビーステークスも危なげなく連勝。そして暮れの朝日杯フューチュリティステークス、阪神の1600mを1分33秒5で差し切り、二歳王者の座を射止めた。 三戦三勝の完璧な二歳。マイルの王者として年を越したこの馬が、翌春には2400mのダービーを勝つことになる――この時点で、その距離適性の幅を見抜けた者は多くなかった。

53歳の府中 ― 最年長ダービー

2022年、クラシック戦線。弥生賞はアスクビクターモアにクビ差で敗れ2着、皐月賞も勝ったジオグリフから0.4秒差の3着に終わる。連勝は止まり、評価はライバルのイクイノックスジオグリフに傾いていた。 だが5月29日の日本ダービー、武豊は静かに後方に構えた。直線、馬群の大外から繰り出した末脚は次元が違った。逃げ込みを図る各馬を呑み込み、追い込んでくるイクイノックスをクビ差抑えてゴール。2分21秒9のダービーレコードだった。 このとき武豊、53歳。自身のダービー6勝目は史上最多、そして50代で頂点に立つのは史上初――最年長のダービー制覇記録だった。デビューから乗り続けてきた騎手が、その馬で自らの記録を更新する。三戦目の弥生賞での黒星も、皐月賞の三着も、この一日のための助走だったかのように見えた。

ロンシャンの雨 ― 凱旋門賞の蹉跌

ダービー馬は秋、海を渡った。武豊が長く抱いてきた凱旋門賞の夢を、この馬に託したのだ。前哨戦のニエル賞は4着。そして2022年10月2日、パリロンシャンの凱旋門賞。レース直前に大雨が降り、馬場は深く重くなっていた。 3番人気に支持されながら、ドウデュースは序盤からダッシュがつかず最後方。直線でもエンジンに火は入らず、伸びを欠いたまま流れ込んだ。結果は20頭立ての19着――ブービーだった。武豊にとっては10度目の凱旋門賞挑戦。日本のダービー馬は、フランスの雨に沈んだ。 夢の舞台で味わった、最も大きな挫折。だがこの一敗は、二年後にもう一度この馬を世界へ向かわせる伏線でもあった。

復活の有馬 ― 二〇二三年暮れ

帰国後は脚部不安などもあり、戦列に戻るまで時間を要した。2023年、京都記念を快勝して復活を印象づけたものの、ドバイターフは出走取消。秋は鞍上を戸崎圭太に替えた天皇賞(秋)で7着、ジャパンカップでも怪物イクイノックスの前に4着と、かつての輝きは陰っていた。 しかし暮れの有馬記念、手綱は再び武豊に戻る。中山の直線、ドウデュースは外から豪快に伸び、タイトルホルダースターズオンアースを抜き去って優勝した。武豊54歳での有馬記念制覇は、これも最年長記録。 ダービー以来、実に一年半ぶりのGI。一度は世界の底に沈んだ馬と騎手が、年の瀬のグランプリで再び立ち上がった。

秋の頂 ― 天皇賞・ジャパンカップ連勝

2024年春、再びのドバイターフは5着、宝塚記念は1番人気に推されながら6着に敗れた。重賞の勝ち負けすらおぼつかない――そんな声も出はじめた秋、ドウデュースは別の馬になっていた。 10月の天皇賞(秋)、東京の2000mを1分57秒3で差し切って優勝。繰り出した上がり32秒5は、JRAのGI勝ち馬として史上最速だった。これで4年連続のJRA平地GI制覇――牡馬が二歳から五歳までの四年で毎年GIを勝つのは史上初の快挙となる。 続くジャパンカップも、東京の2400mを2分25秒5で完勝。秋古馬三冠へ王手をかけ、馬も騎手も、誰もが認める充実の極みにあった。

走れなかったラストラン ― 引退

秋古馬三冠の最後の一冠、そして引退レースと定められた2024年の有馬記念。だが、その日は来なかった。 12月20日、中山への輸送を翌日に控えた朝、キャンター調教のあとに右前肢の跛行を発症。友道康夫調教師は出走取消を決断した。「これだけの馬なので競馬で何かあったらと思い、オーナーサイドと相談して決めました」[^1]。多くのファンがゲートでの再会を待っていた中山の有馬記念に、ドウデュースの姿はなかった。 通算16戦8勝。テニスの「あと一本」を名に背負った馬は、最後の最後で一本を取れずにターフを去った。だが残したものは数字以上だ。53歳での最年長ダービー、54歳での有馬、史上初の四年連続GI――この馬が走った四年は、そのまま「いまなお頂点にいる武豊」の物語でもあった。デビューから引退まで一頭の馬に寄り添い続けた名手の夢を、ドウデュースは確かに前へ運んだ。

出典:友道康夫調教師の談話=日本経済新聞(2024年12月20日配信)、閲覧日:2026年6月25日。

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