名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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ダノンザキッドのイメージビジュアル
ダノンザキッドDanon the Kid
Danon the Kid

ダノンザキッド

通算成績19戦3勝

獲得賞金46,086万円

生年月日 2018.01.29(平成30年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ダノンザキッドの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
12 GI香港マイル シャティン 芝1600 7人気 北村友一 映像
5 GIマイルチャンピオンS 京都 芝1600 6人気 北村友一 1:32.8 上り33.5映像
13 GI宝塚記念 阪神 芝2200 8人気 北村友一 2:12.6 上り36.5映像
5 GIクイーンエリザベス2世カップ シャティン 芝2000 5人気 C.ホー
3 GI大阪杯 阪神 芝2000 10人気 横山和生 1:57.4 上り35.0映像
11 GII中山記念 中山 芝1800 2人気 北村友一 1:48.2 上り36.1映像
2 GI香港カップ シャティン 芝2000 6人気 北村友一 映像
2 GIマイルチャンピオンS 阪神 芝1600 8人気 北村友一 1:32.7 上り33.5映像
3 GII毎日王冠 東京 芝1800 4人気 戸崎圭太 1:44.3 上り34.3映像
3 GIII関屋記念 新潟 芝1600 2人気 川田将雅 1:33.4 上り32.6映像
6 GI安田記念 東京 芝1600 7人気 川田将雅 1:32.5 上り33.7映像
7 GII中山記念 中山 芝1800 1人気 川田将雅 1:47.8 上り37.2映像
3 GIマイルチャンピオンS 阪神 芝1600 5人気 川田将雅 1:32.8 上り33.0映像
4 GII富士S 東京 芝1600 2人気 川田将雅 1:33.7 上り34.3映像
15 GI皐月賞 中山 芝2000 1人気 川田将雅 2:03.1 上り39.3映像
3 GII報知弥生ディープ記念 中山 芝2000 1人気 川田将雅 2:02.3 上り34.2映像
1 GIホープフルS 中山 芝2000 1人気 川田将雅 2:02.8 上り36.4映像
1 GIII東京スポーツ杯2歳S 東京 芝1800 1人気 川田将雅 1:47.5 上り33.5映像
1 2歳新馬 阪神 芝1800 2人気 北村友一 1:48.3 上り34.7

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ダノンザキッドの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ジャスタウェイJust a WayハーツクライHeart's CryサンデーサイレンスSunday Silence
アイリッシュダンス
シビルWild Again
シャロンCharon
エピックラヴEpic LoveDansiliデインヒルDanehill
Hasili
Leopard HuntDiesis
Alcando

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2018年生まれの鹿毛の牡馬。父ジャスタウェイ、母エピックラヴ。主な勝ち鞍はホープフルS・東京スポーツ杯2歳S。

無敗の頂 ― 二歳王者

2020年6月28日、阪神の新馬戦。鞍上は北村友一。ほぼ馬なりのまま、2着に3馬身の差をつけて勝ち上がった。この馬の最初の勝利を届けたのが北村だったことは、覚えておいていい。 秋、鞍上を川田将雅に替えて東京スポーツ杯2歳ステークス。1番人気に応え、2着タイトルホルダー――のちに菊花賞と天皇賞・春を制する長距離の雄――を1馬身1/4退けた。そして12月26日、中山のホープフルステークス。1番人気でオーソクレースを差し切り、デビューから無傷の3連勝でGIを手にする。父ジャスタウェイにとって、これが産駒初のGI制覇だった。 年が明け、ダノンザキッドはJRA賞最優秀2歳牡馬に選ばれる。負けを知らないまま、クラシックの主役として三歳の春を迎えた。

折れた春

最初の綻びは、弥生賞だった。2021年3月7日、1番人気で3着。初めての黒星である。それでも4月18日の皐月賞では、二歳王者は当然のように1番人気に推された。 だが、この日のダノンザキッドは、勝負どころで一度も浮かび上がってこなかった。見せ場のないまま15着。連勝で覆い隠されていた何かが、中山の坂で表に出た。 敗因は、レースのあとに知れる。ダービーを目前にして、右橈骨粗面の剥離骨折が判明したのだ。二歳の暮れに頂へ駆け上がった馬は、三歳の春、ダービーの舞台に立つことなく戦列を離れた。クラシックの王道は、これで閉じた。

マイルへ、届かぬ日々

骨折から癒えて戻ったダノンザキッドが選んだのは、二千の王道ではなく、マイルの道だった。2021年秋、富士ステークス4着、続くマイルチャンピオンシップは3着。府中や阪神のマイルで確かな末脚は見せる。しかし、勝ち切れない。 2022年、中山記念7着、安田記念6着、関屋記念3着、毎日王冠3着。掲示板には載る。だが、あと一歩が遠い。3着、また3着と、そのたびに先頭の背中を見送った。 皮肉が一つ。あの東京スポーツ杯で退けたタイトルホルダーは、この間に菊花賞を勝ち、天皇賞・春を勝ち、世代の頂点へ駆け上がっていた。かつて自分が前にいた馬が、ずっと先へ行く。無敗だった二歳の残響は、少しずつ遠ざかっていた。

帰ってきた男

2021年5月2日、阪神。一人の騎手が、レース中の落馬で地に叩きつけられた。北村友一。背骨を八本、右の肩甲骨を折る重傷だった。普通に歩けるようになるまで、どれほどかかるか分からない――それほどの傷である。三十四歳、騎手人生で最大の危機だった。 復帰までに、一年一か月を要した。2022年6月、北村はターフに戻ってくる。 そして同年11月、マイルチャンピオンシップ。ダノンザキッドの鞍上に、北村友一の名が戻った。二年前、この馬の最初の勝利を届けた男である。若くして頂を知り、そこから転げ落ち、それでももう一度立ち上がった者どうしが、阪神のゲートに並んで立った。

あと一歩の海

8番人気だった。世間の評価は、とうに落ちていた。それでもダノンザキッドは、北村を背に末脚を伸ばす。勝ったセリフォスとの差は、わずか0.2秒。2着。デビュー勝ち以来、この馬と北村がもっとも高く登った瞬間だった。 勢いは海を越える。12月、香港カップ。シャティンの二千で、勝ったロマンチックウォリアーには及ばなかったものの2着。世界の一線と、確かに渡り合った。 明けて2023年、大阪杯。10番人気という低評価をあざ笑うように3着へ食い込む。力は、まだ確かにあった。だが宝塚記念13着、香港のクイーンエリザベス2世カップ5着、秋のマイルチャンピオンシップ5着――勝利という二文字だけが、最後まで手のひらからこぼれ続けた。

二歳の栄光を越えて

2023年12月、ダノンザキッドは現役を退いた。19戦3勝。勝ち星はすべて、無敗を誇った二歳の年に集めたものだった。三歳以降、GIの舞台で二度2着に迫りながら、あの日の頂には二度と戻れなかった。 だが、この馬の値打ちを勝ち鞍の数で量るのは違う。二歳王者の称号、父ジャスタウェイに捧げた最初のGI、世界の強豪と分けた際どいコンマ二秒。そして何より、崖から落ちて這い上がった一人の騎手を、もう一度てっぺん近くまで連れ戻したこと。最初の勝利を託した馬と、騎手生命の淵から戻った男は、最後にいちばん高い場所を分け合った。 ダノンザキッドは新冠のビッグレッドファームで種牡馬となった。無敗で駆け上がった二歳の輝きを、こんどは仔たちに託して。頂の記憶は、血の中でまだ走り続けている。

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