名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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ダノンプラチナのイメージビジュアル
ダノンプラチナDanon Platina
Danon Platina

ダノンプラチナ

通算成績15戦5勝

獲得賞金19,582万円

生年月日 2012.03.23(平成24年)毛色 芦毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ダノンプラチナの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
11 GIII東京新聞杯 東京 芝1600 7人気 田辺裕信 1:34.6 上り33.5映像
1 OPニューイヤーS 中山 芝1600 1人気 蛯名正義 1:34.5 上り34.5
8 OPキャピタルS 東京 芝1600 5人気 蛯名正義 1:33.3 上り34.5
GIII京成杯オータムH 中山 芝1600 蛯名正義 映像
5 GIII関屋記念 新潟 芝1600 8人気 蛯名正義 1:32.5 上り33.0映像
3 GIII富士S 東京 芝1600 2人気 蛯名正義 1:34.2 上り34.0
3 GIII京成杯オータムH 中山 芝1600 2人気 蛯名正義 1:33.3 上り34.3
4 GIII東京新聞杯 東京 芝1600 2人気 蛯名正義 1:34.6 上り33.0映像
7 GI香港マイル 香港 芝1600 8人気 蛯名正義 1:34.3 映像
1 GIII富士S 東京 芝1600 4人気 蛯名正義 1:32.7 上り32.8
11 GI皐月賞 中山 芝2000 5人気 蛯名正義 1:59.5 上り35.3映像
3 GIIフジTVスプリングS 中山 芝1800 2人気 蛯名正義 1:49.2 上り34.0映像
1 GI朝日杯フューチュリティステークス 阪神 芝1600 1人気 蛯名正義 1:35.9 上り35.4映像
1 ベゴニア賞 東京 芝1600 1人気 蛯名正義 1:34.3 上り34.8
1 2歳未勝利 東京 芝1600 1人気 蛯名正義 1:35.5 上り34.3
2 2歳新馬 札幌 芝1500 1人気 蛯名正義 1:32.5 上り35.2

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ダノンプラチナの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ウインドインハーヘアWind in Her HairAlzao
Burghclere
バディーラBadeelahUnbridled's SongUnbridled
Trolley Song
Magical AllureGeneral Meeting
Rare Lady
STORY

旅程 — この馬の物語

2012年生まれの芦毛の牡馬。父ディープインパクト、母バディーラ。主な勝ち鞍は朝日フューチュリティ・富士S。

プラチナのように光り ― 名前と血

JRAに登録されたこの馬の名の意味は、願いの文体で書かれている。「冠名+プラチナ。プラチナのように光り、活躍する芦毛馬になるように」。名づけられた時点で、この馬はもう芦毛だった。 2012年3月23日、北海道新ひだか町の千代田牧場に生まれる。父ディープインパクト、母はアメリカ産のバディーラ。母の父Unbridled's Songも芦毛で、白は母の側から流れてきた。バディーラは一度も競走馬として走っておらず、ダノンプラチナはその初仔にあたる。 血を遡ると、思いがけない縁に行き当たる。祖母Magical Allureはアメリカでラブレアステークスを勝った牝馬で、その半姉フローラルマジックから伸びた枝には、菊花賞馬ナリタトップロードと、有馬記念馬マツリダゴッホがいる。そのマツリダゴッホを美浦で預かり、2007年の暮れに中山の頂へ送り出したのが国枝栄であり、鞍上は蛯名正義だった。 冠名「ダノン」を背負ったこの馬も、同じ厩舎に入り、同じ男が手綱を握った。新馬戦から最後の一戦のひとつ前まで、鞍上はずっと蛯名正義である。

三連勝 ― 阪神に移った暮れのGI

2014年9月6日、札幌の芝1500m。単勝1.7倍の圧倒的支持を受けた新馬戦は、前を行くダイトウキョウを捉えきれずに2着だった。歩みは、わずかに届かないところから始まっている。 次からは間違えなかった。10月の東京・2歳未勝利、11月のベゴニア賞と、いずれも1番人気に応えて連勝。そして抽選を突破し、暮れの阪神へ向かう。 第66回朝日杯フューチュリティステークス。この年から施行場が中山から阪神の芝1600mへ移された、最初の一戦だった。稍重の馬場に前半3ハロン34秒9というハイペースがかかり、ダノンプラチナは18頭の14番手にいる。 最後の直線で一気に脚を伸ばして先頭に立つと、同じように後方から追い込んできた14番人気のアルマワイオリを、3/4馬身だけ抑え込んだ。1分35秒9。三連勝でのGI制覇であり、関東馬による戴冠だった。 蛯名正義は前の週、同じ阪神のマイルを阪神ジュベナイルフィリーズのショウナンアデラで勝っている。二週続けての二歳GI。そして退けた2着馬アルマワイオリの父の名は、マツリダゴッホ――七年前、蛯名と国枝が有馬記念を獲ったあの馬だった。年が明けて、ダノンプラチナはJRA賞最優秀2歳牡馬に選ばれる。

短い春 ― 二〇一五年のクラシック

2015年、王者としてクラシックへ向かう。3月のスプリングステークスは中山の芝1800m、2番人気。4コーナーを4番手で回り、無傷の三連勝で駆け抜けたキタサンブラックから3/4馬身、0秒1差の3着に食い込んだ。 4月19日、皐月賞。5番人気で7番手を進んだが、勝負どころで置かれて4コーナーには13番手まで下がり、11着。勝ったドゥラメンテからは1秒3も離されていた。 春は、そこで終わる。この馬は休養に入り、その年の東京優駿にダノンプラチナの名はなかった。 手綱を握る蛯名正義は、1991年のシャコーグレイドを皮切りに、30年で25回、東京優駿のゲートに入っている。2着が二度、3着が二度。ダービージョッキーの称号だけが、この名手の手元に最後まで残らなかった。二歳の頂を獲った馬とともに迎えた春も、府中の2400mには続かなかった。

三十二秒八 ― 秋の府中

半年の休養を経て、秋初戦は10月24日の富士ステークス。東京の芝1600m、4番人気。スタートで寄られ、16頭の14番手まで下げられての競馬になった。 そこから繰り出した上がり3ハロンは32秒8。この日の16頭で最も速い数字だった。後方から全馬をまとめて捉え、1番人気サトノアラジンをゴール前でクビだけ差し切った。1分32秒7。二歳王者の看板に、古馬相手の重賞がひとつ加わる。 12月13日、沙田。香港マイルへ遠征する。14頭立ての8番人気で、1分34秒37の7着。勝ったモーリスとの差は0秒45だった。海の向こうの一線級と、コンマ数秒しか隔たっていない場所を走っていた。

蹄 ― 届かなかった二年

2016年、東京新聞杯は2番人気の4着。勝ったスマートレイアーとは0秒5差だった。四歳の春に予定していた安田記念は、直前で回避することになる。 秋、9月の京成杯オータムハンデキャップは58キロを背負って3着。この日勝ったロードクエストの父も、またマツリダゴッホだった。10月、連覇を狙った富士ステークスも57キロで3着。ヤングマンパワーの前に、二年続けての戴冠はならない。 そこから長い休みに入る。2017年8月の関屋記念でおよそ十か月ぶりに姿を見せたが、馬体は12キロ増え、8番人気の5着。翌月の京成杯オータムハンデキャップは左前挫跖のため出走取消。11月のキャピタルステークスは8着に終わった。 躓きの理由は、ずっと同じ場所にあった。国枝栄は言葉を選びながら、こう振り返っている。「これまでなんだかんだ蹄に泣かされてね」[^1]。後肢が前肢に当たるのを避けるためのプロテクト鉄。蹄底を守るゲル状の『エクイパット』は、本来は蹄葉炎や爪の病気のときに使う保護材で、それを履いた馬はほとんど裸足に近い状態で走ることになる。二歳でGIを勝った馬は、持っているものから割り引かれたままゲートに入り続けていた。

出典:競馬ラボ「【東京新聞杯】ダノンプラチナは輝きを取り戻すのか?慢性的な蹄の不安と戦った国枝師を直撃!」2018年1月31日配信、https://www.keibalab.jp/yosou/uchirachi/7/、閲覧日:2026年7月27日。

二年三か月 ― 勝っても厳しい顔

2018年1月14日、中山のニューイヤーステークス。10頭立ての1番人気、馬体重490キロは8キロの増加だった。後方に構え、直線は外へ持ち出して豪快に差し切る。2着シュウジに0秒2差。前の勝利からは、2年3か月が経っていた。 この頃には『エクイパット』はもう外れ、蹄の状態は普通の装蹄に戻せるところまで良くなっていた。それでも、検量室前に戻ってきた二人の表情は、勝った陣営のそれではなかった。蛯名正義は言う。「勝ちはしましたが、こんな馬ではないです。まだ6割くらい。いいころはもっとギアが上がる馬ですからね」[^1]。国枝栄も、もっと楽に勝ってほしかった、と言葉を継いだ。 オープン特別を0秒2差で完勝してなお足りないと言えるのは、この馬の「いいころ」を鞍上から、そして厩舎から見た者だけである。二人が思い描いていたのは、三年前の暮れの阪神と、あの秋の府中だった。

出典:競馬ラボ「【東京新聞杯】ダノンプラチナは輝きを取り戻すのか?慢性的な蹄の不安と戦った国枝師を直撃!」2018年1月31日配信、https://www.keibalab.jp/yosou/uchirachi/7/、閲覧日:2026年7月27日。

最後の直線 ― 二月四日、東京

2月4日、東京新聞杯。この日の鞍上は田辺裕信だった。蛯名正義は同じレースにデンコウアンジュで参戦し、4着に入っている。三年あまりを並んで走ってきた二つの影が、最後の一戦だけ、別々の馬の上にあった。 ダノンプラチナは16頭の最後方から運ばれ、直線で上がり33秒5を使って追い上げたが、届いたのは11着まで。武豊のリスグラシューが抜け出したそのレースで、勝ち馬から0秒5差。時計は1分34秒6――二年前に同じ舞台で4着に入ったときと、寸分違わない数字だった。 春に掲げた安田記念のゲートに、この馬が入ることはなかった。6月20日付でJRA競走馬登録を抹消。行き先は南アフリカ共和国で、種牡馬としての次の生涯が始まる。2020年には、かの地で最初の産駒が生まれたと伝えられた。 通算15戦5勝、総獲得賞金1億9582万3000円。重賞は二つ、うち一つはGI。二歳の暮れに阪神で掴んだ一冠が、生涯の頂として残った。

殿堂 ― 同じ日に呼ばれた二つの名

ニューイヤーステークスから二週間あまりのち、国枝栄は次の一戦を待ちきれない様子で、二頭の名を並べていた。厩舎がGIから遠ざかって三年、その空白の始点は、ほかならぬダノンプラチナの朝日杯フューチュリティステークスだった。「ダノンプラチナの安田記念だけでなく、アーモンドアイの桜花賞があるからね」[^1]。 二頭のうち、扉を開けたのは後者だった。アーモンドアイはその年の4月に桜花賞を勝ち、オークス、秋華賞、そして三歳の身でジャパンカップまで駆け上がる。国枝厩舎のGIの列は、2014年のダノンプラチナで一度途切れ、2018年のアーモンドアイでふたたび繋がった。阪神の芝1600mを14番手から差し切ったダノンプラチナは、その断層のちょうど上に立っている。 2026年3月3日、国枝栄は定年で調教師を退いた。翌4月、美浦・小島茂之厩舎の補充員として、また馬房のある場所へ戻っている。蛯名正義は2021年2月に騎手を引退し、翌年から美浦で厩舎を構えた。東京優駿の勝利だけは、25回の騎乗を重ねてついに訪れなかった。 そして2026年6月15日、二人の名は同じ日に呼ばれる。JRAはその年度の顕彰者に、元調教師・国枝栄と元騎手・蛯名正義を選定した。騎手部門の選出は、2014年の創立60周年記念事業での選定以来、12年ぶりのことだった。ダノンプラチナが二人を結んだ暮れの阪神から、十一年半が経っていた。 プラチナのように光り、活躍する芦毛馬になるように――名づけに託された願いは、2014年12月21日、阪神の直線で確かに叶っている。十八頭の後方から一頭が伸びてきたあの数完歩は、日本の二歳王者の列に、いまも消えずに残っている。

出典:競馬ラボ「【東京新聞杯】ダノンプラチナは輝きを取り戻すのか?慢性的な蹄の不安と戦った国枝師を直撃!」2018年1月31日配信、https://www.keibalab.jp/yosou/uchirachi/7/、閲覧日:2026年7月27日。

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