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ダノンキングリー
通算成績14戦6勝
獲得賞金5億1,505万円
生年月日 2016.03.25(平成28年)毛色 黒鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 8 | GI香港マイル | シャティン 芝1600 | 2人気 | 川田将雅 | — | 映像 | ||
| 2 | GII毎日王冠 | 東京 芝1800 | 2人気 | 川田将雅 | 1:44.8 | 上り33.7 | 映像 | |
| 1 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 8人気 | 川田将雅 | 1:31.7 | 上り33.1 | 映像 | |
| 12 | GI天皇賞(秋) | 東京 芝2000 | 3人気 | 戸崎圭太 | 2:00.7 | 上り35.8 | 映像 | |
| 7 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 5人気 | 戸崎圭太 | 1:32.4 | 上り34.6 | 映像 | |
| 3 | GI大阪杯 | 阪神 芝2000 | 1人気 | 横山典弘 | 1:58.5 | 上り34.3 | 映像 | |
| 1 | GII中山記念 | 中山 芝1800 | 1人気 | 横山典弘 | 1:46.3 | 上り34.2 | 映像 | |
| 5 | GIマイルチャンピオンS | 京都 芝1600 | 2人気 | 横山典弘 | 1:33.4 | 上り34.1 | 映像 | |
| 1 | GII毎日王冠 | 東京 芝1800 | 1人気 | 戸崎圭太 | 1:44.4 | 上り33.4 | 映像 | |
| 2 | GI東京優駿 | 東京 芝2400 | 3人気 | 戸崎圭太 | 2:22.6 | 上り34.5 | 映像 | |
| 3 | GI皐月賞 | 中山 芝2000 | 3人気 | 戸崎圭太 | 1:58.1 | 上り34.5 | 映像 | |
| 1 | GIII共同通信杯 | 東京 芝1800 | 3人気 | 戸崎圭太 | 1:46.8 | 上り32.9 | 映像 | |
| 1 | ひいらぎ賞 | 中山 芝1600 | 2人気 | 戸崎圭太 | 1:33.7 | 上り35.7 | — | |
| 1 | 2歳新馬 | 東京 芝1600 | 2人気 | 戸崎圭太 | 1:37.5 | 上り33.4 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父ディープインパクトDeep Impact | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| ウインドインハーヘアWind in Her Hair | Alzao | |
| Burghclere | ||
| 母マイグッドネス | Storm Cat | Storm Bird |
| Terlingua | ||
| Caressing | Honour and Glory | |
| Lovin Touch |
旅程 — この馬の物語
2016年生まれの黒鹿毛の牡馬。父ディープインパクト、母マイグッドネス。主な勝ち鞍は安田記念・共同通信杯・毎日王冠。
王にふさわしい、という名
2016年3月25日、北海道浦河町の三嶋牧場に、一頭の黒鹿毛の牡馬が生まれた。生まれたときからバランスの取れた馬体で、怪我にも病気にも縁がなく、性格も利口だった。三嶋牧場での中期育成を経て、ノーザンファーム空港牧場で鍛えられている。 父はディープインパクト。母マイグッドネスはストームキャットを父に持つアメリカ産で、自身の競走成績は海外6戦1勝にとどまる。だがその母――つまりこの馬の祖母キャレッシングは、2000年のブリーダーズカップ・ジュヴェナイルフィリーズを勝ち、同じ年のエクリプス賞最優秀2歳牝馬に選ばれた牝馬だった。マイグッドネスは米国にいた頃に半兄ダノンレジェンド――2016年のJBCスプリントを制することになる馬――を産み、のちに海を渡って浦河で仔を産み続けた。5代内にはノーザンダンサーが5×4で重なっている。 名は、馬主ダノックスの冠名「ダノン」に、王にふさわしい、王位に君臨してほしいという願いを重ねたもの。ダノンキングリー。王という言葉を名に背負った馬が、その王冠に指をかけるまでには、三年近い時間がかかることになる。 預けられたのは美浦の萩原清厩舎だった。この厩舎は2009年、ロジユニヴァースで日本ダービーを勝っている。そのロジユニヴァースを担当した厩務員・松山直樹が、この黒鹿毛の世話を任された。府中の芝2400mで一度だけ手にした栄冠の記憶が、厩舎の隅に静かに置かれていた。
府中から始まった三連勝
2018年10月8日、東京の芝1600m。新馬戦は2番人気だった。道中は3番手を進み、直線で鋭く伸びて先頭に立つ。外から食い下がってきた牝馬をアタマ差だけ振り切った。その牝馬の名はカレンブーケドール。翌年のオークス、秋華賞、ジャパンカップと二着を重ね、シルバーコレクターと呼ばれることになる同期である。互いのキャリアの最初の一戦が、この二頭の差し比べだった。 12月15日、中山のひいらぎ賞。中団から直線で抜け出し、ミトロジーに3馬身半差をつけた。連勝。 年が明けた2月10日、東京の共同通信杯。1番人気は前年の朝日杯フューチュリティステークスを勝った2歳王者アドマイヤマーズだった。そのアドマイヤマーズが逃げる展開を、ダノンキングリーは好位で我慢し、直線で内から並びかけて交わし切る。上がり3ハロン32秒9。無傷の3連勝で重賞初制覇。府中の直線は、この馬の庭のように見えた。
アタマとハナとクビ ― 二〇一九年春
4月14日、中山の皐月賞。1番人気は無敗のサートゥルナーリア。ダノンキングリーは3番人気で、好位の内につけた。直線、外からヴェロックスが早めに抜け出し、それを目標にサートゥルナーリアが伸びる。最内で脚を伸ばしたのがダノンキングリーだった。ゴール前は三頭が横一線。決着は1分58秒1の同タイム。2着ヴェロックスからハナ差、勝ったサートゥルナーリアからはアタマ+ハナの3着だった。あと二完歩あれば、という負け方である。 5月26日、東京優駿。リオンリオンが1000m通過57秒8で飛ばす縦長の隊列の、5番手にがっちりと抑えられていた。4コーナーで内から3番手へ押し上げ、直線、先に抜け出したロジャーバローズを外から追う。府中の坂を上りきってもなお、前の馬は止まらなかった。2分22秒6のレースレコード。またしてもクビ差の、2着。 戸崎圭太にとっては、前年のエポカドーロに続く二年連続のダービー2着だった。「馬の雰囲気はダービー仕様で良かったですね。あそこまでいったので、悔しかったです。馬は頑張ってくれた。あとはちょっとした乗り方だと思います」[^1]。悔しさの矛先を、この男は自分に向けた。萩原清もまた、いいレースはできた、これも競馬だから、と静かに引き取っている。
出典:デイリースポーツ「【日本ダービー】ダノンキングリー首差の銀 戸崎圭悔しい2年連続2着」2019年5月27日配信、https://www.daily.co.jp/horse/2019/05/27/0012369190.shtml 、閲覧日:2026年7月25日。
秋の府中、最速の脚
10月6日の毎日王冠には、GIを勝った馬が5頭並んだ。2017年のNHKマイルカップを勝ったアエロリット、この年の春の安田記念で三冠牝馬アーモンドアイを破ったインディチャンプ。そこにGI未勝利の3歳馬が1番人気で加わったのは、春の二戦の内容ゆえだった。負担重量は54kg。 ところがゲートで後手を踏み、10頭立ての最後方に置かれる。それでも直線で外に持ち出されると、馬群がみるみる近づいた。逃げ粘るアエロリットを捉え、1馬身1/4差。上がりは最速の33秒4。重賞2勝目と、天皇賞(秋)への優先出走権を同時に手に入れた。 だが陣営が選んだのは天皇賞ではなく、マイルチャンピオンシップだった。そしてその直前、11月4日の浦和。JBCレディスクラシックで戸崎圭太が落馬し、右肘を開放骨折する。靱帯と神経も損ない、戦列に戻るまで200日を要する重傷だった。 11月17日、京都。手綱は横山典弘に託された。最内枠から中団を進み、直線も内を突いたが、インディチャンプの決め手には届かず5着。1番人気で2着に入ったのは、同じ勝負服のダノンプレミアムだった。デビューから六戦、すべての手綱を取ってきた男が、この日は鞍上にいなかった。
一番人気という重さ ― 二〇二〇年
2020年3月1日、中山記念。横山典弘とのコンビは続いた。中山記念三連覇を狙うウインブライトらGI馬5頭を抑えての1番人気。逃げ馬を行かせて3番手につけ、直線で先頭に立つとそのまま押し切った。2着ラッキーライラックに1馬身3/4差。重賞3勝目。四歳初戦として、これ以上ない内容だった。 4月5日、阪神の大阪杯。またも1番人気に推される。ところがゲートを出ると、意図せずハナに立ってしまった。差してこその馬が、緩んだ流れを自ら作る形になる。直線まで粘ったものの最後に交わされて3着。横山典弘はスタートが誤算だったと振り返った。 6月7日、安田記念。5月23日に戸崎圭太が復帰し、四戦ぶりにコンビが戻る。だが稍重の府中でダノンキングリーは伸びを欠き7着。デビュー以来はじめて掲示板を外した。 そして11月1日、天皇賞(秋)。12頭立ての3番人気。中盤まではアーモンドアイを見る位置にいた。直線で追い出されると、反応がない。ずるずると後退し、ゴールしたときは最下位。11着とは7馬身が開いていた。鞍上も、はっきりした敗因を掴みかねていた。名に負った「王」という字が、いちばん遠くに見えた秋だった。
二〇二一年六月六日 ― 王冠
天皇賞(秋)から、およそ7か月が過ぎていた。5歳になったダノンキングリーの単勝は47.6倍、8番人気。1番人気は連覇を狙うグランアレグリア、続いてインディチャンプ、サリオス、NHKマイルカップを差し切った3歳のシュネルマイスター。この馬を上位に取る者は、多くはなかった。 ただ、初めて手綱を託された川田将雅は違った。もともと能力の高い馬で、レースで戦って走りも見てきた、イメージはできている――そう言って、静かに算段を立てていた。 ダイワキャグニーが引っ張り、1000m通過は57秒8。あの日のダービーと同じ、緩みのない流れだった。中団で脚を溜めたダノンキングリーは、直線で外へ持ち出される。坂上でインディチャンプが抜け出し、外からシュネルマイスターが並びかけ、馬群を割ってグランアレグリアが飛んできた。四頭が府中の直線を横に広がる。ダノンキングリーはシュネルマイスターを競り落としながらインディチャンプをかわし、最後は追いすがるグランアレグリアをアタマ差だけしのいだ。1分31秒7、上がり33秒1。七度目のGIにして、はじめて先頭でゴール板を過ぎた。 「こういうメンバーでも勝ち切れる。これがこの馬の本来の姿」[^1]と川田は言った。萩原清にとっては安田記念初勝利。単勝は4760円ついた。 そしてその日、同じゲートにはもう一人いた。戸崎圭太である。トーラスジェミニの手綱を取って2番手からレースを運び、5着。六戦を共にした相棒が外から伸びていくのを、同じ直線で見ていた。
出典:日本中央競馬会「2021年 農林水産省賞典 安田記念」レース結果(文・谷川善久)、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/yasuda/result/yasuda2021.html 、閲覧日:2026年7月25日。
アタマ差の秋、そして香港
10月10日、毎日王冠。5か月ぶりの実戦を後方2番手から進め、3コーナー手前で中団まで押し上げる。直線で抜け出し、勝ったと見えたところを、外から3歳のシュネルマイスターにアタマ差だけ差された。「普通なら勝ったレースでしたが、勝った馬が相当に強かったです」[^1]と川田。六月の府中で競り落とした3歳馬に、十月の府中ではアタマ差で差し返された。 12月12日、シャティン。初めての海外遠征となった香港マイルは2番人気に支持されたが、1分34秒37で押し切ったゴールデンシックスティから0秒51差の8着に終わる。14日に帰国し、22日付で競走馬登録が抹消された。 14戦6勝、獲得賞金5億1505万円。成績表には、アタマ、ハナ、クビと、わずかな差を表す言葉がいくつも並んでいる。GIの舞台でその紙一重を自分の側へ引き寄せられたのは、六月六日の一度だけだった。だからこそ1分31秒7は、この馬の生涯でいちばん厚い一行になった。
出典:中日スポーツ「ダノンキングリーは頭差かわされ2着 「普通なら勝ったレースでしたが…」【毎日王冠】」2021年10月10日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/345339 、閲覧日:2026年7月25日。
安平の牧場で
2022年、ダノンキングリーは北海道安平町の社台スタリオンステーションに立った。2023年に生まれた最初の世代がターフに現れたのは2025年のこと。父の名を継いだ仔たちの物語は、まだ書き出しのあたりにいる。 そして2026年5月20日、萩原清が病のため世を去った。67歳。1996年に厩舎を開き、2024年にはJRA通算700勝へ到達した美浦の調教師である。ロジユニヴァースで日本ダービーを勝った十年後、ダノンキングリーで同じ府中の栄冠をクビ差で取りこぼし、その二年後、同じ競馬場で安田記念を初めて勝った。 浦河の牧場で生まれ、王にふさわしいと名づけられ、七度目のGIでようやく王冠に届いた。届かなかった日のほうが、ずっと多い。それでも2021年6月6日、東京競馬場の芝1600mの直線で、ダノンキングリーは確かにいちばん前にいた。いま安平の牧場で草を食むその背には、あの一日が、まだ乗っている。
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