名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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ダノンデサイルのイメージビジュアル
ダノンデサイルDanon Decile
Danon Decile

ダノンデサイル

通算成績14戦5勝

獲得賞金154,087万円

生年月日 2021.04.06(令和3年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ダノンデサイルの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
3 GI宝塚記念 阪神 芝2200 3人気 戸崎圭太 2:12.6 上り35.0映像
3 GI大阪杯 阪神 芝2000 2人気 坂井瑠星 1:57.9 上り34.9映像
3 GI有馬記念 中山 芝2500 2人気 戸崎圭太 2:31.6 上り35.0映像
3 GIジャパンカップ 東京 芝2400 3人気 戸崎圭太 2:20.8 上り33.8映像
5 GI英インターナショナル ヨーク 芝2050 3人気 戸崎圭太
1 GIドバイシーマクラシック メイダン 芝2410 4人気 戸崎圭太 2:27.0 映像
1 GIIアメリカジョッキークラブカップ 中山 芝2200 1人気 戸崎圭太 2:12.1 上り36.0映像
3 GI有馬記念 中山 芝2500 2人気 横山典弘 2:32.0 上り35.4映像
6 GI菊花賞 京都 芝3000 1人気 横山典弘 3:04.8 上り35.5映像
1 GI東京優駿 東京 芝2400 9人気 横山典弘 2:24.3 上り33.5映像
GI皐月賞 中山 芝2000 横山典弘 映像
1 GIII京成杯 中山 芝2000 5人気 横山典弘 2:00.5 上り34.1映像
4 GIIIラジオN杯京都2歳S 京都 芝2000 11人気 横山典弘 1:59.9 上り35.2映像
1 2歳未勝利 京都 芝1800 5人気 横山典弘 1:47.9 上り35.0
4 2歳新馬 東京 芝1600 3人気 横山典弘 1:37.7 上り34.1

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ダノンデサイルの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
エピファネイアEpiphaneiaシンボリクリスエスSymboli Kris SKris S.
Tee Kay
シーザリオCesarioスペシャルウィークSpecial Week
キロフプリミエールKirov Premiere
トップデサイルTop DecileCongratsA.P. Indy
Praise
Sequoia QueenForestry
Barefoot Dyana
STORY

旅程 — この馬の物語

2021年生まれの栗毛の牡馬。父エピファネイア、母トップデサイル。主な勝ち鞍は東京優駿・ドバイシーマクラシッ・京成杯。

名と血 ― 上位十分の一

栗毛の牡馬の名は、二つの言葉でできている。馬主ダノックスの冠名「ダノン」と、母の名から継いだ「デサイル」。母トップデサイル――Top Decile、英語で「上位十分の一」を指す統計の言葉だ。アメリカに生まれたこの牝馬は、2014年のブリーダーズカップ・ジュヴェナイルフィリーズで2着に走った素質馬で、その血がはるばる海を渡って日本でつけた仔が、父にエピファネイアを得た。シーザリオを母に持ち、菊花賞とジャパンカップを制したあの黒鹿毛の産駒である。 2021年4月6日、ダノンデサイルは栗東・安田翔伍厩舎に預けられる一頭として生を受けた。そして手綱を取ったのが横山典弘。デビューからこの馬の歩みのほとんどに、五十代半ばを過ぎてなお第一線に立つ名手の姿があった。馬の小さな異変を誰よりも早く察する――その眼が、やがてこの馬の運命を分けることになる。

京成杯 ― 距離が伸びて見えたもの

2023年秋、東京の芝1600mでデビューすると4着。距離が足りなかった。続く京都の未勝利戦を1800mで勝ち上がると、走るたびに馬が大きく見えてくる。年が明けた2024年1月、中山の京成杯。芝2000m、単勝5番人気。ここでダノンデサイルは好位から抜け出し、2分00秒5で重賞のタイトルを掴んだ。 短い距離では足りず、延ばすほどに脚を伸ばす――その輪郭が、はっきりと見えた一戦だった。重賞馬となった栗毛は、世代の頂点を争う皐月賞へと駒を進める。誰もがクラシックの主役の一頭として、その名を数えはじめていた。

皐月賞の朝 ― 降りるという勇気

2024年4月14日、中山。皐月賞のゲート前で、横山典弘は異変に気づく。右前脚の歩様に、わずかな狂いがあった。名手はためらわず、出走の取りやめを申し出る。ダノンデサイルは右前肢跛行で競走除外――走ることなく、世代一冠目の舞台を降りた。後の検査で、蹄冠部に打撲が見つかった。軽いものではあったが、もしあのまま発走していたら、何が起きていたか分からない。 一世一代のクラシック初戦を、自ら手放す。出走すれば賞金も名誉もある場面で、騎手は将来を選んだ。横山典は後にこう振り返っている。「将来性を断たなくて良かった」[^1]。無念をのみ込んだその判断が、一か月後に何を意味することになるか――このときはまだ、誰も知らない。

出典:スポーツナビ「【日本ダービー】ダノンデサイルを頂点に導いた皐月賞除外の決断、横山典騎手「将来性を断たなくて良かった」」2024年5月27日配信、https://sports.yahoo.co.jp/official/detail/2024052700010-spnaviow、閲覧日:2026年6月25日。

東京優駿 ― 二十四秒三の答え

2024年5月26日、東京。皐月賞を回避した馬に、世間の評価は厳しかった。単勝9番人気。だが横山典弘とダノンデサイルは、いつも通りに好位を進み、直線で迷いなく抜け出す。追いすがるのは1番人気で皐月賞を勝ったジャスティンミラノ。その追撃を、栗毛は最後まで譲らなかった。2分24秒3、上がり33秒5。サラブレッド7906頭の頂点に立ったのは、二週間前にゲートを降りた馬だった。 横山典弘、このとき56歳3か月。武豊が持っていたJRA・GI最年長勝利の記録を塗り替え、2009年ロジユニヴァース、2014年ワンアンドオンリーに続くダービー3勝目を手にした。鞍上初挑戦の安田翔伍にとっては、初めて挑んだダービーでの戴冠だった。皐月賞の朝に下した「降りる」という決断が、最高の舞台で報われる。あの英断がなければ、この一日は無かった。馬を守った者に、馬が応えた。

三冠は遠く ― 横山典との秋

ダービー馬には、三冠の夢が架かる。10月の菊花賞、京都の芝3000m。ダノンデサイルは堂々の1番人気に推されたが、長い距離の底で脚は鈍り、6着に沈んだ。世代の三冠は、ここで途切れる。暮れの有馬記念では古馬の一線級に混じって3着。府中と中山で見せた粘りは、決して見劣りするものではなかったが、勝利には届かなかった。 それでも、この年の働きは正当に評価される。2024年のJRA賞最優秀3歳牡馬――除外の朝から始まった一年は、世代の頂点という称号で締めくくられた。横山典弘と歩んだ三歳の旅は、ここで一区切りを迎える。デビューから二人三脚で登ってきた古老の名手は、この馬を確かに頂へ届けてみせた。

ドバイ ― ベリーベリーホース

2025年、ダノンデサイルは戸崎圭太を新たな主戦に迎える。1月のアメリカジョッキークラブカップを1番人気で快勝し、2分12秒1で復活を告げると、陣営は海を渡る決断をした。4月、ドバイ・メイダンのドバイシーマクラシック。芝2410m、世界の強豪が揃うGIで、ダノンデサイルは4番人気だった。 レースは戸崎が先頭に立って押し切る横綱相撲。外から伸びたカランダガンを退け、日本のドゥレッツァを従え、前年の覇者レベルスロマンスを4着に置き去りにした。日本ダービー馬が、世界の真ん中で力を証明した瞬間だった。安田翔伍にとっても、戸崎にとっても、これが海外GI初制覇。勝利の直後、戸崎は馬上で第一声を放った。「ベリーベリーホース!」[^1]。続けて、「デサイルの力を証明できてよかった。ベリーベリーハッピー!」[^2]と、興奮そのままに言葉を継ぐ。この第一声はやがて戸崎の決まり文句となり、競馬ファンに親しまれていく。

出典:THE ANSWER「5.4億円GETの第一声にネット笑撃「腹筋壊れる」 ダノンデサイル・戸崎圭太のインタ内容が話題沸騰」2025年4月6日配信、https://the-ans.jp/news/522352/、閲覧日:2026年6月25日。/テレ東スポーツ「【ドバイSC】ダノンデサイルがダービー馬の威厳見せる!戸崎圭太騎手「デサイルの力を証明できてよかった。ベリーベリーハッピー!」」2025年4月6日配信、https://www.tv-tokyo.co.jp/sports/articles/2025/04/037594.html、閲覧日:2026年6月25日。

三番手の意地 ― いまも旅の途中

ドバイの栄光のあと、ダノンデサイルは世界と国内の最前線に身を置き続ける。2025年夏、イギリスのインターナショナルステークスでは強豪オンブズマンらに挑んで5着。秋に戻ってからは、ジャパンカップ3着、有馬記念3着、そして2026年の大阪杯3着、宝塚記念3着――王者たちがひしめくGIの上位に、常にその名を刻んだ。勝ちきれない悔しさはある。だが、トップ戦線に居続けて三番手を譲らないことそのものが、ダービー馬の地力の証だった。 母トップデサイル――「上位十分の一」の名を継いだ栗毛は、いまも一線で走っている。2026年6月の宝塚記念が、現時点で最後の一戦。放牧を挟み、次の戦いへ向けて態勢を整えているところだ。除外の朝に始まり、世界の頂を踏み、なお走り続ける旅。その物語は、まだ途中である。

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