名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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コスモキュランダのイメージビジュアル
コスモキュランダCosmo Kuranda
Cosmo Kuranda

コスモキュランダ

通算成績21戦2勝

獲得賞金43,839万円

生年月日 2021.02.23(令和3年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
コスモキュランダの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
4 GI宝塚記念 阪神 芝2200 8人気 横山武史 2:12.6 上り36.1映像
7 GII日経賞 中山 芝2500 1人気 横山武史 2:31.7 上り36.7映像
2 GI有馬記念 中山 芝2500 12人気 横山武史 2:31.6 上り35.5映像
9 GIジャパンカップ 東京 芝2400 16人気 丹内祐次 2:21.9 上り35.6映像
12 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 14人気 津村明秀 1:59.2 上り33.3映像
8 GII産経賞オールカマー 中山 芝2200 5人気 丹内祐次 2:11.0 上り35.2映像
10 GII札幌記念 札幌 芝2000 6人気 丹内祐次 2:02.6 上り36.1映像
8 GI大阪杯 阪神 芝2000 9人気 丹内祐次 1:56.8 上り34.6映像
3 GIIアメリカジョッキークラブカップ 中山 芝2200 3人気 横山武史 2:12.2 上り36.4映像
6 GIII中日新聞杯 中京 芝2000 2人気 横山武史 1:59.1 上り35.6映像
14 GI菊花賞 京都 芝3000 3人気 M.デムーロ 3:08.4 上り39.4映像
2 GII朝日セントライト記念 中山 芝2200 1人気 M.デムーロ 2:11.9 上り34.2映像
6 GI東京優駿 東京 芝2400 6人気 M.デムーロ 2:25.1 上り34.3映像
2 GI皐月賞 中山 芝2000 7人気 J.モレイラ 1:57.1 上り34.2映像
1 GII報知弥生ディープ記念 中山 芝2000 6人気 M.デムーロ 1:59.8 上り34.9映像
2 3歳1勝クラス 中山 芝2000 5人気 丹内祐次 1:59.9 上り34.9
8 GIIIラジオN杯京都2歳S 京都 芝2000 14人気 角田大河 2:00.4 上り35.9映像
1 2歳未勝利 新潟 芝2000 1人気 丹内祐次 2:03.8 上り36.2
2 2歳未勝利 中山 芝2000 6人気 丹内祐次 2:03.5 上り35.2
4 2歳未勝利 中山 芝2000 8人気 丹内祐次 2:01.5 上り36.0
12 2歳新馬 東京 芝1600 5人気 戸崎圭太 1:39.4 上り36.4

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
コスモキュランダの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
アルアインAl AinディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday Silence
ウインドインハーヘアWind in Her Hair
ドバイマジェスティDubai MajestyEssence of Dubai
Great Majesty
サザンスピードSouthern SpeedSouthern ImageHalo's Image
Pleasant Dixie
Golden EagleZabeel
Rising Eagle
STORY

旅程 — この馬の物語

2021年生まれの黒鹿毛の牡馬。父アルアイン、母サザンスピード。主な勝ち鞍は報知弥生ディープ記念。

赤緑格子の血 ― 名と一族

「コスモ」はビッグレッドファーム(岡田系)の冠名。願いや由来を読み込むべきは、その先の固有部分——キュランダである。オーストラリア北東部、クイーンズランド州の熱帯雨林に抱かれた町キュランダ(Kuranda)。一帯は世界遺産に登録された緑の名だ。なぜ南半球の地名なのか。答えは母にある。 母サザンスピードは豪州産。2011年の豪G1コーフィールドカップ、翌年の豪G2マカイビーディーヴァステークスなど重賞を3つ勝った、南半球の実力馬だった。母の故郷の名を、子が背負っている。 父はアルアインディープインパクト産駒で、2017年の皐月賞と2019年の大阪杯を勝った中距離の強者だ。その全弟が、2021年のダービーを制したシャフリヤール——同じディープインパクトと母ドバイマジェスティから出た、血の格を示す一族である。 2021年2月23日、新冠のビッグレッドファームに生まれた黒鹿毛。2023年6月、東京・芝1600メートルの新馬戦は戸崎圭太を背に12着と出遅れた。距離を2000メートルに延ばし、丹内祐次とともに未勝利を3戦。3戦目の新潟でようやく勝ち上がる。マイルではなく、長い距離でこそ息をする血だった。

弥生賞 ― 父が持たなかったタイトル

2024年3月3日、中山の報知杯弥生賞ディープインパクト記念。6番人気、鞍上はM・デムーロ。序盤は後方から3番手に控え、2コーナーを過ぎたあたりから位置を上げ、3コーナーではもう2番手に取り付いていた。直線、先に抜け出したシリウスコルトとの叩き合いを制し、後方から伸びるシンエンペラーを寄せつけずに先頭でゴール。勝ち時計1分59秒8はレースレコードだった。 2着シンエンペラー、3着シリウスコルト。そしてこの一勝には、もう一つの意味があった。父アルアインが種牡馬として手にした、初めての重賞タイトル。父が現役時代に積み上げた勲章を、母の名を負った子が、初めて次の代へ運んだのだった。

皐月賞 ― 父の時計を上書きして

2024年4月14日、皐月賞。手綱はモレイラに替わり、7番人気で中山に立った。中団から3コーナーで外を押し上げ、直線は勝ち馬ジャスティンミラノと馬体を併せる叩き合い。だがクビ差、わずかに前へ出させてもらえず2着に終わる。 そのとき、時計が競馬史をかすめていた。コスモキュランダ自身の走破タイムは1分57秒1。父アルアインが7年前にこの舞台で刻んだレースレコード1分57秒8を、上回る数字だった。勝ったのは同じ1分57秒1のジャスティンミラノで、記録の栄誉は勝ち馬のものになったが——父が持っていた皐月賞の時計を、その子が塗り替える側に立っていた。勝てはしなかった。それでも血は、確かに同じ4月の中山にいた。 続くダービー(5月26日)は6着。府中の2400メートルでは、皐月賞のクビ差ほどには伸びきれなかった。

淀に沈む ― 三歳秋の陰

秋、始動戦のセントライト記念は1番人気に推されたが、上がり最速の脚を使いながらも捉えきれず2着(M・デムーロ)。勝ち切るには、あと一歩が遠かった。 本番は菊花賞。3番人気で臨んだ京都の3000メートルは、しかし14着の大敗に終わる。上がりは39秒4まで鈍り、長い距離が牙を剥いた。母譲りのスタミナを託された舞台で、逆に淀の3000に沈んだのは皮肉だった。暮れの中日新聞杯も6着。栄光の春から、勝ち星はすっかり遠ざかっていた。

横山武史と、長いトンネル

2025年1月、アメリカジョッキークラブカップ。中山・芝2200メートルで、初めて横山武史が手綱を取った。結果は3着。派手ではないが、この馬が中山の起伏を巧く走ることを、鞍上は静かに確かめていたのかもしれない。 だが、そこからトンネルが続く。大阪杯8着、札幌記念10着、オールカマー8着、天皇賞(秋)12着、ジャパンカップ9着。鞍上も丹内、津村と替わり、人気は落ちていった。一年前に皐月賞でクビ差まで迫った馬が、もう掲示板をにぎわすことも少なくなっていた。世代の頂をうかがった一頭の、平凡な古馬一年目。物語はここで静かに閉じても、おかしくはなかった。

有馬記念 ― 十二番人気の百点

2025年12月28日、有馬記念。単勝111.5倍、12番人気。本命に推す声は、ほとんどなかった。手綱は一年ぶりに横山武史。横山の進言でブリンカーを着け、中山に戻ってきた。 好スタートから先団の3番手を取り、直線で先頭に躍り出る。前でやり合い、後続に脚を使わせる——鞍上が描いた通りの運びだった。だがゴール前、後ろから伸びたミュージアムマイルに半馬身だけ差され、2着。3着はダノンデサイル。勝ち切れはしなかったが、12番人気の激走が、暮れの中山を沸かせた。 横山は「理想の競馬ができました」[^1]と振り返り、例えは古いがと断って、1992年に大波乱の有馬を逃げ切った伏兵メジロパーマーの名を挙げた。前でやり合い、後ろに脚を使わせる競馬。その像の通りに、伏兵は走った。府中でも京都でもなく、中山の直線こそが、この馬の答えだった。

出典:中日スポーツ・東京中日スポーツ「【有馬記念】あわやの場面も…2着に大健闘したコスモキュランダ 横山武「理想の競馬ができた」、加藤士師「完璧に乗って馬も力を出し切った」」2025年12月28日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/1186056、閲覧日:2026年7月16日。

奇襲の逃げ ― そして、次の一戦へ

明けて2026年、日経賞(中山・芝2500メートル)は1番人気に推された。有馬の激走が幻でなかったかを問う一戦だったが、答えは7着——出し切れなかった。 6月、宝塚記念。8番人気。横山はレース前から加藤士津八調教師に「逃げたい」と告げ、雨の阪神でハナを切る奇襲に出た。切れ味の勝負では分が悪い。ならば雨で他馬の切れを鈍らせ、前々の競馬で勝負する——その読み通り、粘りに粘って4着まで残した。勝ったのは連覇を果たしたメイショウタバル、2着クロワデュノール、3着ダノンデサイル。勝ち切れはしなかったが、この馬の形がどこにあるのかを、鞍上ははっきり掴んでいた。 2026年7月現在、コスモキュランダは現役にある。豪州の母の名を負い、父アルアインに初めての重賞をもたらし、皐月賞では父の時計が塗り替えられる決着の、半歩後ろに立った。連勝で語れる戦績ではない。それでも、中山の直線で前を奪いにいくあの走りは、まだ次の一戦を待っている。

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