名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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コスモフリーゲンのイメージビジュアル
コスモフリーゲンCosmo Fliegen
Cosmo Fliegen

コスモフリーゲン

通算成績10戦5勝

獲得賞金11,318万円

生年月日 2020.03.31(令和2年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
コスモフリーゲンの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
9 GIII新潟記念 新潟 芝2000 4人気 柴田大知 1:58.4 上り33.6映像
1 GIII七夕賞 福島 芝2000 2人気 柴田大知 2:00.5 上り36.0映像
1 サンシャインS 中山 芝2200 2人気 柴田大知 2:10.4 上り34.4
2 スピカS 中山 芝1800 5人気 柴田大知 1:46.8 上り35.6
3 六社S 東京 芝2400 2人気 横山武史 2:26.1 上り33.9
2 美浦S 中山 芝2000 2人気 柴田大知 1:58.7 上り35.4
4 湾岸S 中山 芝2200 2人気 柴田大知 2:13.2 上り35.4
1 4歳以上2勝クラス 中山 芝2200 2人気 柴田大知 2:12.7 上り35.8
1 高山特別 中京 芝2200 5人気 柴田大知 2:14.1 上り34.8
1 3歳未勝利 中山 芝1800 8人気 柴田大知 1:53.9 上り37.4

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
コスモフリーゲンの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
スクリーンヒーローScreen HeroグラスワンダーGrass WonderSilver Hawk
Ameriflora
ランニングヒロインサンデーサイレンスSunday Silence
ダイナアクトレス
フライングメリッサダンスインザダークDance in the DarkサンデーサイレンスSunday Silence
ダンシングキイ
ウイングオブラックブライアンズタイムBrian's Time
バブルウイングスBubble Wings
STORY

旅程 — この馬の物語

2020年生まれの栗毛の牡馬。父スクリーンヒーロー、母フライングメリッサ。主な勝ち鞍は七夕賞。

飛ぶ、という名

2020年3月31日、北海道のビッグレッドファームに栗毛の牡馬が生まれた。母の名はフライングメリッサ。「飛ぶ(Flying)」を負った牝馬である。息子に与えられた名は、コスモフリーゲン。冠名コスモに、ドイツ語で「飛ぶ」を意味するフリーゲンを継いだ。母の飛翔を、別の言葉でもう一度なぞった名だった。血の格は母の側に眠っていた。祖母ウイングオブラックの半妹には、阪神ジュベナイルフィリーズを勝った牝馬ショウナンパントルがいる。同じ一族の末からは、日本ダービーのディープブリランテ、菊花賞のザッツザプレンティも出た。父スクリーンヒーローは自らジャパンカップを制し、ゴールドアクターモーリスを送り出した種牡馬である。地味と言われもしたが、飛ぶ血は確かに流れていた。その名が初めてターフに記されたのは、2023年3月、中山の3歳未勝利。八番人気だった。低い評価を覆し、栗毛は遅れてきたデビューを勝利で飾る。鞍上は柴田大知。この日から、一頭と一人の長い道行きが始まった。

癒えるまで

だが、飛ぶための脚はあまりに脆かった。デビュー勝ちの直後、右前に挫跖からの跛行が出る。熱発も出て、やがてローヒール症候群と診断された。北海道へ戻し、秋まで休ませるほかない。九か月近くぶりに戻った暮れの中京・高山特別を五番人気で勝ち、年明けの二勝クラスも連勝した。ようやく上のクラスが見えたところで、今度は左前の橈骨遠位端に骨膜が見つかる。2024年6月、骨片を摘出する手術。また長い放牧が待っていた。勝てば脚を痛め、癒えれば勝ち、また痛める。その繰り返しの傍らに、いつも柴田大知がいた。全十戦のうち九戦の手綱を、彼が握っている。レースだけでなく調教にも積極的に跨り、濃密な時間を重ねてきた。ベテランにも影は差していた。2020年暮れのターコイズステークスを最後に、重賞から遠ざかって久しく、重賞のゲートに入ること自体、2023年以来なかった。「焦っていた時期もありました」[^1]。人も馬も、同じ遅れを取り戻そうとしていた。

出典:デイリースポーツ「【七夕賞】柴田大 23年以来の重賞挑戦 「思い入れすごくある」コスモフリーゲンと二人三脚で4年7カ月ぶり重賞Vだ」2025年7月11日配信、https://www.daily.co.jp/umaya/news/2025/07/11/0019211921.shtml、閲覧日:2026年7月17日。

連勝

2025年3月、およそ十か月ぶりのスピカステークス。五番人気で二着に食い込み、脚が戻っていることを示した。翌月のサンシャインステークスを二番人気で勝つ。中山の芝二千二百に応え、前で運ぶ競馬がこの馬の型になりつつあった。勝ち上がったクラスの数だけ、脚を壊した回数がある。それでも栗毛は、戻るたびに前より強くなって帰ってきた。次に陣営が選んだ舞台は、七夕賞。重賞初挑戦だった。

星まで、飛ぶ

2025年7月13日、福島。七夕から六日後のターフに、赤に緑の格子の勝負服があった。二番人気。ゲートを出ると、コスモフリーゲンは前へ行きたがった。ショウナンマグマとの先手争いを制し、自分の刻むペースで先頭に立つ。行きたがる馬をなだめるのに苦労した、と柴田は後に振り返っている。直線、外から一番人気のドゥラドーレスが猛然と伸びてくる。並びかけられても、栗毛は前へ首を差し出し続けた。アタマ差。凌ぎ切った。重賞初挑戦での初制覇である。柴田大知にとっては、四年七か月ぶりの重賞だった。宇宙を意味する名に飛ぶという言葉を継いだ馬が、星祭りの一戦を勝った。レース前、柴田はこの馬をこう語っていた。「この馬に思い入れはすごくあるし、ここまで来たかという感じです」[^1]。ここまで来たか――挫跖に、手術に、幾度もの放牧に付き添った男の、実感のこもった一言だった。

出典:デイリースポーツ「【七夕賞】柴田大 23年以来の重賞挑戦 「思い入れすごくある」コスモフリーゲンと二人三脚で4年7カ月ぶり重賞Vだ」2025年7月11日配信、https://www.daily.co.jp/umaya/news/2025/07/11/0019211921.shtml、閲覧日:2026年7月17日。

また、牧場で

七夕賞から七週後の新潟記念。どちらも夏の中距離王者を決めるサマー2000シリーズの一戦である。だがハナに立って懸命に粘ったのも残り二百メートルまでで、力尽きて九着に沈む。レースの後、左前脚に浅屈腱炎が見つかった。飛ぶための脚が、また悲鳴を上げていた。長い休養に入り、2026年5月、同じ左前の腱が、ふたたび炎症を起こす。いまコスモフリーゲンは牧場で脚を癒している。宇宙を飛ぶと名づけられた栗毛が、星祭りの空にいちど手を届かせたのは、確かなことだ。もう一度あの脚で飛べる日が来るかは、まだ誰にも分からない。それでも、赤に緑格子の勝負服とともに掴んだ一勝は、消えない。

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