名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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コーリンベリーのイメージビジュアル
コーリンベリーCorin Berry
Corin Berry

コーリンベリー

通算成績29戦8勝

獲得賞金25,746万円

生年月日 2011.04.13(平成23年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
コーリンベリーの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
14 アフター5スター賞 大井 ダ1200 4人気 的場文男 1:15.5 上り41.3
4 しらさぎ賞 浦和 ダ1400 1人気 御神本訓史 1:28.3 上り40.1
16 GIIIカペラS 中山 ダ1200 7人気 松山弘平 1:14.1 上り39.9映像
6 JpnⅠJBCスプリント 大井 ダ1200 5人気 松山弘平 1:11.7 上り37.1映像
6 JpnⅡ東京盃 大井 ダ1200 5人気 松山弘平 1:12.6 上り37.3
15 GIII根岸S 東京 ダ1400 12人気 松山弘平 1:25.1 上り37.2映像
3 GIIIカペラS 中山 ダ1200 1人気 松山弘平 1:10.7 上り37.0
3 JpnⅠJBCスプリント 川崎 ダ1400 4人気 松山弘平 1:28.9 上り39.6映像
2 JpnⅡ東京盃 大井 ダ1200 3人気 松山弘平 1:12.3 上り38.2
8 JpnⅡさきたま杯 浦和 ダ1400 3人気 松山弘平 1:27.5 上り37.8
1 JpnⅢ東京スプリント 大井 ダ1200 3人気 松山弘平 1:11.4 上り35.7
15 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 12人気 松山弘平 1:36.8 上り38.4映像
13 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 13人気 松山弘平 1:51.9 上り39.0映像
1 JpnⅠJBCスプリント 大井 ダ1200 3人気 松山弘平 1:10.9 上り36.2映像
3 JpnⅡ東京盃 大井 ダ1200 2人気 松山弘平 1:11.6 上り36.7
2 GIIIプロキオンS 中京 ダ1400 2人気 松山弘平 1:22.8 上り36.2映像
1 JpnⅢかきつばた記念 名古屋 ダ1400 1人気 松山弘平 1:25.1 上り37.1
1 OPコーラルS 阪神 ダ1400 1人気 松山弘平 1:22.5 上り36.0
10 GIフェブラリーS 東京 ダ1600 12人気 松山弘平 1:36.8 上り36.2映像
1 OP2014ファイナルS 阪神 ダ1400 2人気 松山弘平 1:22.9 上り35.5
9 JpnⅠJBCレディスクラシック 盛岡 ダ1800 5人気 松山弘平 1:51.9 上り39.8映像
9 GIIIプロキオンS 中京 ダ1400 4人気 松山弘平 1:23.0 上り36.5
2 GIIIユニコーンS 東京 ダ1600 4人気 松山弘平 1:36.4 上り36.9
2 OP端午S 京都 ダ1400 1人気 松山弘平 1:24.1 上り37.4
18 GI桜花賞 阪神 芝1600 12人気 藤田伸二 1:37.6 上り38.7映像
1 OP昇竜S 中京 ダ1400 9人気 松山弘平 1:24.5 上り36.8
1 3歳500万下 京都 ダ1200 5人気 松山弘平 1:11.6 上り37.2
1 3歳未勝利 京都 ダ1200 13人気 松山弘平 1:12.7 上り37.0
11 2歳新馬 小倉 芝1200 14人気 小牧太 1:10.6 上り35.6

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
コーリンベリーの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
サウスヴィグラスSouth VigorousエンドスウィープEnd SweepフォーティナイナーForty Niner
Broom Dance
ダーケストスターDarkest StarStar de Naskra
Minnie Riperton
コーリンラヴィアンミシックトライブMythic TribeMr. Prospector
Miesque
コーリンビビアンアジュディケーティングAdjudicating
シルケット
STORY

旅程 — この馬の物語

2011年生まれの栗毛の牝馬。父サウスヴィグラス、母コーリンラヴィアン。

門別の栗毛 ― 冠名と、小さな木の実

2011年4月13日、北海道日高町の今井牧場に栗毛の牝馬が生まれた。馬主・伊藤恵子(のちに伊藤恵介)の冠名「コーリン」に、小さな木の実を意味するベリーを継ぎ足して、コーリンベリーと名がついた。 父サウスヴィグラスは1996年アメリカ生まれの栗毛で、2002年から2003年にかけてダートの短距離重賞を八つ勝った馬である。そのうちの一つ、2003年11月3日の大井・JBCスプリントが引退レースであり、生涯唯一のGIになった。 母コーリンラヴィアンは2001年生まれの芦毛。その父ミシックトライブの血統書は、じつは驚くほど華やかだ。父はミスタープロスペクター、母はGIを10勝した名牝ミエスク、全兄はキングマンボ。だが本人は1999年の秋にフランスで一度だけゲートに入って6着に終わり、それきり走るのをやめた。日本に輸入されて初年度こそ103頭の繁殖牝馬を集めたものの、供用4年目には一桁まで落ち込み、2004年の種付けを最後にアロースタッドを去って青森の個人牧場へ移っている。中央・地方を通じて、その産駒から重賞勝ち馬は一頭も出なかった。 二歳上の半兄コーリンギデオンは浦和に所属して6959万円あまりを稼いでいる。 ミスタープロスペクターは、父方に四代、母方に三代でふたたび現れる。走らずに終わった良血と、砂しか走らなかった父。日高の小さな牧場で、その二つが一頭の牝馬になった。

京都の冬 ― 松山弘平と出会う

2013年8月3日、小倉の芝1200m。デビュー戦は14番人気で11着に終わった。5馬身の差をつけて逃げ切ったのは武豊のベルカント――のちに重賞を五つ勝つ快速牝馬である。 二戦目は年が明けた2014年1月11日、京都のダート1200m。13番人気。この日から鞍上に松山弘平が座った。芝で沈んだ馬は、砂に替わったとたんに2着を0秒2突き放して勝ち上がる。続く500万下、3月の昇竜ステークスも連勝し、デビュー2戦目から三つ勝った。 松山は1990年3月1日、神戸の生まれ。小学生のころ競馬好きの父と祖父に阪神競馬場へ連れて行かれたのが始まりで、競馬学校を一度落ちて一年浪人し、2009年3月1日、19歳の誕生日に小倉で初騎乗初勝利を決めた男だ。この頃はもう関西の中堅として重賞も勝っていたが、GIにはまだ手が届いていない。 厩舎は栗東の柴田政見。青森・上北町の農家の次男で、1965年に騎手になり、弟の政人・利秋とともに「柴田三兄弟」と呼ばれた。4260戦364勝で鞍を降り、1991年に自分の厩舎を開いている。派手な厩舎ではない。開業から23年で勝った重賞は四つ、そのうちの一つが2012年の中山大障害だった。

桜の下の大差

2014年4月13日、阪神。ダートで三連勝した3歳牝馬を、陣営は芝のマイルGI・桜花賞へ送り出した。12番人気。鞍上は藤田伸二で、松山はこの日、同じレースにリラヴァティで乗っている(9着)。 1番人気は単勝1.2倍のハープスター。18番人気のフクノドリームが1000m通過57秒0の大逃げを打ち、コーリンベリーは3コーナーで三番手、その速い流れを追いかける側にいた。直線、最後方に控えていたハープスターが外から17頭をまとめて抜き去り、桜花賞タイレコードの1分33秒3でゴール板を過ぎる。 コーリンベリーの時計は1分37秒6。18着、着差は「大差」と記録された。 この一戦を最後に、彼女は二度と芝を走っていない。

砂に還る

戻った砂で、馬は着実に上がっていった。5月の端午ステークス2着、6月の東京・ユニコーンステークスはレッドアルヴィスの2着。7月のプロキオンステークスは9着。11月3日には盛岡のJBCレディスクラシックに出走したが、ダート1800mは短距離馬には遠すぎて9着に沈んだ。彼女がJBCの日にゲートへ入ったのは、これが最初である。 年の暮れ、阪神のファイナルステークスをニシケンモノノフに0秒6差をつけて勝つ。年明けのフェブラリーステークスは出遅れて後方に置かれ、それでも詰め寄って10着、勝ったコパノリッキーとの差は0秒5だった。 2015年4月4日、阪神のコーラルステークス。1番人気。この日ハナを切ったのは、初めてダートを使うベルカントだった。1年8か月前、小倉の芝の新馬戦を5馬身差で逃げ切り、コーリンベリーを11着に置き去りにした相手である。直線でそのベルカントが失速し、代わって先頭に躍り出たのがコーリンベリーだった。突き放して3馬身。松山はこの勝利でJRA通算300勝に到達している。

重賞、そして厩舎が閉じる

5月4日、名古屋のかきつばた記念。単勝1.5倍に応えて先手を取り、マイペースに落として押し切った。重賞初制覇である。柴田政見にとっては1991年の開業以来、五つ目の重賞であり、ただ一つの地方交流重賞になった。 7月のプロキオンステークスはベストウォーリアの2着、9月30日、大井の東京盃はダノンレジェンドドリームバレンチノに先着を許して3着。順調そのものに見えた秋の入口で、しかし厩舎のほうが先に終わった。 10月1日、JRAが柴田政見の20日付勇退を発表する。理由を問われた師は「体調不良のためです」[^1]と答えた。69歳。中央で4234戦259勝、24年あまりの厩舎生活だった。 東京盃を最後に、コーリンベリーは美浦の小野次郎厩舎へ移る。栗東から美浦へ、関西から関東へ。小野は1970年東京生まれ、8547戦528勝を挙げた元騎手で、騎手時代には柴田政見の弟・政人が引退したあとの高松邦男厩舎を支えた人でもある。2011年に鞍を降り、同じ年に厩舎を開いて五年目。まだ重賞を勝っていなかった。 転厩初戦に選ばれたのは、11月3日、大井のJBCスプリントだった。

出典:デイリースポーツ「柴田政見調教師が体調不良のため勇退」2015年10月2日配信、https://www.daily.co.jp/horse/2015/10/02/0008447863.shtml、閲覧日:2026年7月28日。

十一月三日、大井

馬場は不良。16頭立ての内枠から、コーリンベリーは抜群のスタートを切った。外から押してきた馬を制してハナに立ち、そのまま息を入れずに1200mを運ぶ。番手には1番人気のダノンレジェンド――前走の東京盃で自分の前を走った馬がいた。 直線に入っても手応えは残ったままで、彼女は後続を突き放しにかかる。ダノンレジェンドが一完歩ずつ差を詰めてきたが、4分の3馬身は最後まで縮まらなかった。1分10秒9。3番人気、単勝10.5倍。 第15回にして、JBCスプリントを牝馬が勝った。 松山弘平にとって、これがGI級の初制覇だった。小野次郎にとっては、調教師として初めて勝った重賞が、いきなりJpnIだった。 そして12年前の同じ11月3日、同じ大井の砂を、父サウスヴィグラスが引退レースとして駆け抜けている。あの日その背にいたのは柴田善臣――コーリンベリーをデビューから預かってきた柴田政見の、甥である。 母の父ミシックトライブの産駒からは、ついに一頭も重賞勝ち馬が出なかった。その血は、孫の代でようやくJpnIの真ん中に立った。

1200mの居場所

12月のチャンピオンズカップは中京のダート1800m、13着。2016年のフェブラリーステークスも15着。距離についての答えは、もう出ていた。 本領は1200mにある。4月6日、大井の東京スプリントを1分11秒4で制し、2着グレープブランデーに0秒5をつけて重賞3勝目。浦和のさきたま杯は8着に終わったが、9月の東京盃はドリームバレンチノの2着、11月3日、川崎のJBCスプリントは1400mでダノンレジェンドの3着。12月のカペラステークスは1番人気で3着に粘った。掲示板の常連であり続けたが、二度目のJpnIには届かなかった。 2017年は根岸ステークス15着のあと長い休みに入り、秋に戻って東京盃6着、JBCスプリント6着、12月10日のカペラステークス16着。12月16日付でJRAの競走馬登録を抹消され、大井の的場直之厩舎へ移った。

大井で終わり、大井から続く

2018年4月25日、浦和のしらさぎ賞。1番人気に推され、御神本訓史を背に4着。8月29日、大井のアフター5スター賞では的場文男が乗った。管理する的場直之の叔父にあたる、大井の大ベテランである。14着。これが最後の一戦になり、8月31日付で地方競馬の登録も抹消された。29戦8勝、獲得賞金は2億5746万1000円。 その年の3月4日、父サウスヴィグラスが世を去っている。 繁殖牝馬になった彼女は、2020年に初仔コーリンラズベリー、翌年にコーリングヘニーを産んだ。息子が入ったのは大井・的場直之厩舎――母を最後に預かった厩舎である。以後もオルフェーヴルジャスタウェイリアルスティールの仔を産み続けている。 松山弘平は2017年、中央のGIに38回目の挑戦でアルアインの皐月賞を勝ち、平成生まれ初のGIジョッキーになった。2020年にはデアリングタクトでJRA史上初の無敗の牝馬三冠を達成し、2026年、11度目のダービー騎乗でロブチェンとともに府中の頂に立った。その一連のタイトルのいちばん最初に置かれているのが、2015年11月3日、大井のダート1200mである。 JBCスプリントは2025年に第25回を数えた。その四半世紀ぶんの優勝馬のなかで、牝馬はいまなお、コーリンベリーひとりだけである。

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