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コパノリチャード
通算成績22戦6勝
獲得賞金3億450万円
生年月日 2010.04.15(平成22年)毛色 黒鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 14 | GIII京阪杯 | 京都 芝1200 | 10人気 | 古川吉洋 | 1:09.4 | 上り35.2 | — | |
| 12 | GII毎日放送賞スワンS | 京都 芝1400 | 7人気 | 藤岡康太 | 1:21.4 | 上り35.2 | — | |
| 13 | GIスプリンターズS | 中山 芝1200 | 10人気 | M.デムーロ | 1:08.9 | 上り33.9 | 映像 | |
| 14 | GIII函館スプリントS | 函館 芝1200 | 1人気 | 武豊 | 1:09.4 | 上り36.2 | 映像 | |
| 5 | GI高松宮記念 | 中京 芝1200 | 5人気 | 武豊 | 1:09.3 | 上り34.7 | 映像 | |
| 6 | GIII阪急杯 | 阪神 芝1400 | 1人気 | 武豊 | 1:24.4 | 上り37.2 | 映像 | |
| 2 | GII阪神カップ | 阪神 芝1400 | 3人気 | 武豊 | 1:20.7 | 上り34.8 | — | |
| 16 | JpnⅠJBCスプリント | 盛岡 ダ1200 | 3人気 | 武豊 | 1:11.9 | 上り38.3 | 映像 | |
| 12 | GIスプリンターズS | 新潟 芝1200 | 3人気 | 浜中俊 | 1:09.2 | 上り34.1 | 映像 | |
| 7 | GII京王杯スプリングカップ | 東京 芝1400 | 1人気 | 浜中俊 | 1:20.4 | 上り35.7 | — | |
| 1 | GI高松宮記念 | 中京 芝1200 | 3人気 | M.デムーロ | 1:12.2 | 上り37.2 | 映像 | |
| 1 | GIII阪急杯 | 阪神 芝1400 | 2人気 | 浜中俊 | 1:20.7 | 上り35.8 | — | |
| 10 | GII阪神カップ | 阪神 芝1400 | 2人気 | 浜中俊 | 1:22.0 | 上り35.1 | — | |
| 4 | GIマイルチャンピオンS | 京都 芝1600 | 6人気 | 浜中俊 | 1:33.0 | 上り34.7 | 映像 | |
| 1 | GII毎日放送賞スワンS | 京都 芝1400 | 8人気 | 浜中俊 | 1:20.8 | 上り34.0 | — | |
| 16 | OPポートアイランドS | 阪神 芝1600 | 2人気 | 浜中俊 | 1:35.8 | 上り39.0 | — | |
| 8 | GINHKマイルカップ | 東京 芝1600 | 4人気 | 福永祐一 | 1:33.1 | 上り35.3 | 映像 | |
| 13 | GI皐月賞 | 中山 芝2000 | 5人気 | 内田博幸 | 1:59.5 | 上り37.4 | 映像 | |
| 1 | GIIIアーリントンC | 阪神 芝1600 | 1人気 | W.ビュイック | 1:34.8 | 上り34.0 | — | |
| 1 | 白梅賞 | 京都 芝1600 | 1人気 | W.ビュイック | 1:33.9 | 上り34.7 | — | |
| 2 | 千両賞 | 阪神 芝1600 | 2人気 | 福永祐一 | 1:33.6 | 上り35.7 | — | |
| 1 | 2歳新馬 | 京都 芝1400 | 2人気 | 岩田康誠 | 1:21.3 | 上り34.6 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父ダイワメジャーDaiwa Major | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| スカーレットブーケ | ノーザンテーストNorthern Taste | |
| スカーレットインクScarlet Ink | ||
| 母ヒガシリンクス | トニービンTony Bin | カンパラKampala |
| Severn Bridge | ||
| ビッグラブリー | Caerleon | |
| アルガリーAlghalih |
引退後・牧場での映像
ゴール板の先の時間旅程 — この馬の物語
2010年生まれの黒鹿毛の牡馬。父ダイワメジャー、母ヒガシリンクス。主な勝ち鞍は高松宮記念・アーリントンC・毎日放送賞スワンS。
暴君の名 ― 七番仔に与えられた危うさ
北海道日高町のヤナガワ牧場に、ヒガシリンクスという牝馬がいた。父はトニービン、三代母は牧場が1991年にアメリカから輸入したアルガリー。馬体の出来を牧場が高く買い、いずれ繁殖に迎えるつもりで、まずは代表の名義でホッカイドウ競馬から走らせる算段だったという。だがデビュー前に屈腱炎を発症する。一度もゲートに入らないまま競走生活は終わり、彼女は生まれた場所で母になった。 2003年の初仔から6年で5頭。父はすべて別の種牡馬だった。産駒には、名古屋で重賞を7つ勝ち梅見月杯を三連覇した半兄サイモンロードや、朱鷺ステークス(OP)を制した半姉コパノオーシャンズがいる。走る仔は出ていた。ただ、揃って馬格に恵まれなかった。そこで8年目の種付けで、それを補う相手として初めてダイワメジャーが選ばれる。 2010年4月15日に生まれた七番仔は、黒鹿毛の牡馬だった。兄姉になかった実の入った馬体をしており、牧場代表の梁川正晋は、贔屓目なしに見映えがして、野武士のようなたくましさを持った馬だと評している。 コパノフウジンを縁に、この牧場の生産馬を毎年買っていた馬主がいた。風水師Dr.コパとして知られる小林祥晃である。小林はこの年ヤナガワ牧場を訪ね、当歳を二頭買った。一頭がこの七番仔。もう一頭が、のちにGI級競走を11勝することになるコパノリッキーだった。 初めて七番仔と向き合ったとき、小林は、何をしでかすか分からない狂気のような危うさを感じたと振り返っている。育成先の牧場を訪ねたときには、この馬は危ないから離れていてほしい、と止められた。 小林には、そういう馬につけようと温めていた名前があった。イングランドの暴君、リチャード3世。冠名「コパノ」に王の名を継ぎ足して、コパノリチャード。危うさに、名が与えられた。預けられたのは、コパノフウジン、コパノジングーを手がけてきた栗東の宮徹厩舎である。
前にいる ― 逃げるという流儀
2012年11月4日、京都の芝1400m。岩田康誠を背に2番人気でデビューすると、ゲートを出るなりハナを奪い、後続に2馬身をつけて逃げ切った。この馬の流儀は、最初の一戦ではっきりしていた。前にいること。 12月の千両賞は2番手から先行して最終コーナーで抜け出しながら、直線でカオスモスにかわされて2着。年が明けた1月の白梅賞では、短期免許で来日していたイギリスのウィリアム・ビュイックが手綱を取り、逃げて5馬身の独走で2勝目を挙げる。 ビュイックが続けて乗った2月のアーリントンカップが、重賞初挑戦だった。単勝2.2倍の1番人気。逃げ馬に次ぐ2番手につけ、直線で抜け出すと、千両賞で先着を許したカオスモスに1馬身半差。デビュー4戦目で重賞を獲り、クラシックへの扉が開いた。 だが中山の芝2000mは遠すぎた。皐月賞は5番人気13着。距離を戻したNHKマイルカップでは4番人気に推され、東京の四角を先頭で回りながら、後方から飛んできた10番人気マイネルホウオウに交わされて8着に沈む。獲得賞金では日本ダービーに出走できたが、陣営はその権利を使わず、放牧に出した。
八番人気の逃げ ― 淀のスワンステークス
秋の復帰戦は、9月のポートアイランドステークス。ここから浜中俊とのコンビが始まった。初めての古馬相手、17頭立ての16着。ほめようのない負け方だった。 一か月後のスワンステークス、京都の芝1400m。重賞3勝のマジンプロスパーが2.8倍、GI2勝のグランプリボスが4.6倍で人気を分け合い、コパノリチャードは8番人気の20.5倍。前走の大敗が、そのまま値札になっていた。 ゲートが開くと、この馬はいつものように前へ行った。四角でマジンプロスパーに並ばれても譲らず、直線で相手が伸びあぐねると、そこから差を広げていく。追い込んだ後続が捉えたのは、失速したマジンプロスパーまでだった。1馬身3/4差の逃げ切りで重賞2勝目。3歳馬によるスワンステークス制覇は、2004年のタマモホットプレイ以来9年ぶりだった。 続くマイルチャンピオンシップは18頭立ての1枠1番から4着。勝ったトーセンラーとの差は0秒6。年末の阪神カップは10着に終わり、3歳の一年が閉じた。
二週続けての三月 ― 牧場と馬主の春
2014年2月23日、東京。フェブラリーステークスを勝ったのは、単勝272.1倍の最低16番人気に置かれたコパノリッキーだった。同じヤナガワ牧場、同じ小林祥晃、同じ2010年生まれ。四年前に牧場で並んでいた二頭のうち、生産者がより高く買っていたのは、じつはコパノリチャードのほうだったという。 その翌週、3月2日の阪急杯。コパノリチャードは1枠1番を引き当てた。浜中を背に、好ダッシュを決めたカレンブラックヒルをすぐ制して先頭に立つと、最終コーナーで迫ったガルボを直線で突き放し、独走になる。2着サンカルロに4馬身差。1番人気のダノンシャークは9着だった。逃げ切りでの阪急杯制覇は2008年のローレルゲレイロ以来6年ぶりで、この一勝が高松宮記念への優先出走権になった。 牧場と馬主にとって、二週続けてのJRA重賞制覇である。三月の日高に、風が吹いていた。
春の嵐、飛行機 ― 二〇一四年高松宮記念
2014年3月30日、中京。 近五走を任され重賞を二つ勝った浜中は、この日ドバイにいた。デニムアンドルビーでドバイシーマクラシックに乗るためである。空いた鞍に座ったのは、短期免許で来日していたミルコ・デムーロだった。 春の嵐が芝を叩き、中京の馬場は不良。芝1200mのGIとして争われるようになって以降、この競走が不良馬場で行われるのは初めてのことだった。加えて強風。速さだけでなく持久力とパワーまで要求される条件である。コパノリチャードにとっては1200mそのものが初めてで、支持は3番人気、単勝770円。1番人気は前走シルクロードステークスを勝ったストレイトガール、2番人気は前年のこのレース3着ハクサンムーンだった。前年限りでロードカナロアが引退し、短距離の王座は空いていた。 手応えは確かだったが、鞍上の胸には不安も去来したという。「この距離は少し短いかも知れない」[^1]。 15番人気のエーシントップが飛ばし、コパノリチャードは三番手、馬場のいちばん内を進む。四角で外へ持ち出して馬場の中央から追い上げを始めると、道悪の芝の上で力強く加速した。残り200mでエーシントップを捉えて先頭。そこから先は、誰も近づけなかった。大外から追い込んだスノードラゴンに3馬身差。1番人気ストレイトガールは3着だった。 ゴール寸前、デムーロは両手を手綱から離し、左右へ水平に伸ばした。飛行機ポーズ。決勝線手前での御法として過怠金10万円が科された。2007年の中日新聞杯をサンライズマックスで勝ったときと同じ所作で、あのときの5万円から額は倍になっていた。 勝ち時計1分12秒2。デムーロにとっても宮徹にとっても、高松宮記念は初勝利だった。そしてグレード制が導入された1984年以降、同じ馬主がその年のJRAのGIを開幕から連勝したのは、これが初めてのことだった。二月に最低人気の馬で、三月にその危うさを名にした馬で。
出典:日本中央競馬会「第44回高松宮記念(GI) コパノリチャードが道悪馬場を力強く押し切ってGI初制覇」(文・谷川善久)2014年3月30日施行分、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/takamatsu/result/takamatsu2014.html 、閲覧日:2026年7月29日。
取りこぼしていく季節 ― 王座のあとで
王座を獲った馬の、その後の一年半は、ほどけていく糸のようだった。 5月の京王杯スプリングカップは1番人気で7着。安田記念を回避し、函館スプリントステークスを選んだものの、右トモに筋肉痛が出て使えず、育成でも世話になった小国スティーブルで夏を過ごした。秋は前哨戦を置かずスプリンターズステークスへ直行する。暑い時期から本格的な調教を積ませずに済むし、鉄砲の利く馬だから、というのが宮の説明だった。だがその一戦はスタートで後手を踏んで12着。11月のJBCスプリントでは盛岡へ遠征して初めてダートを走り、16着。年末の阪神カップは直線で三頭が並ぶ叩き合いになり、リアルインパクトにハナ差だけ届かず2着だった。あと一完歩で、もとの場所へ戻れそうだった。 5歳の2015年も、前年と同じ道順を辿る。不良馬場の阪急杯は1番人気で6着。連覇のかかった高松宮記念は5着。勝ったエアロヴェロシティとの差は0秒8で、力を失ったようには見えなかった。だが6月、1番人気に推された函館スプリントステークスで14着に沈むと、そこから先はもう戻らなかった。秋のスプリンターズステークス13着、スワンステークス12着、11月末の京阪杯14着。 小林は、これは体ではなく気持ちの問題だろうと考えた。これ以上いやな思いをさせて走らせるのは、この馬のためによくない。そう判断して引退を決める。12月4日、JRAの競走馬登録が抹消された。22戦6勝、重賞4勝、獲得賞金3億450万7000円。危うさに名を与えた人が、最後はその気性を思って、走ることをやめさせた。
ドン ― 新冠の森で
引退後は新ひだか町のレックススタッドで種牡馬になった。初年度16頭、二年目46頭。そこが頂点で、以後は集まる繁殖牝馬が減っていく。2021年のシーズンを最後に、種牡馬の役目も終えた。 それでも血は走っている。船橋記念を2022年・2023年と連覇し、川崎スパーキングスプリントと習志野きらっとスプリントも勝ったキモンルビー。岩手でダイヤモンドカップと東北優駿を制したグットクレンジング。地方の短い距離で、父の速さを受け継いだ馬たちが結果を出した。 種牡馬を退いたコパノリチャードが移ったのは、新冠町のにいかっぷホロシリ乗馬クラブである。去勢され、昼夜放牧で群れの中に置かれると、気性の荒さで知られた馬は、拍子抜けするほどおとなしくなった。担当する吉田真理さんは、実家がマイネルホウオウの生産牧場だという。2013年のNHKマイルカップで四角を先頭で回っていた馬と、それを直線で差した馬。八年あまりを経て、その二頭の縁が新冠で結び直された。 鞍やハミをつけようとすると「はむっ」とちょっかいをかけてくる。人を襲うわけではない。構ってほしいときだけ構ってくれ、という距離の取り方で、思春期の少年のようだと吉田さんは言う。愛称はリチャードン、いまは縮まって「ドン」。客を乗せる前、鞍を置かれたまま、こっくりこっくり居眠りをしていることもある。 訪れる人の多くは、あの日の中京を覚えている。乗馬の最後には記念の写真を撮るのだが、「『飛行機ポーズしていいですか』っておっしゃるお客様もいます」[^1]。不良馬場を力でねじ伏せた四歳の春から、十年あまり。暴君の名を与えられた馬は、森の中で、両手を広げた人たちを背に立っている。
出典:テレ東スポーツ「コパノリチャードの第3の馬生 想像していたのと真逆な思春期のツンデレ少年【もうひとつの引退馬伝説】」2026年3月29日配信、https://www.tv-tokyo.co.jp/sports/articles/2026/03/041436.html 、閲覧日:2026年7月29日。
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