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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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チェリヴェントCoeli Vento
Coeli Vento

チェリヴェント

通算成績10戦3勝

獲得賞金5,692万円

生年月日 2023.03.26(令和5年)毛色 黒鹿毛性 牡

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
チェリヴェントの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 GIIIレパードS 新潟 ダ1800 6人気 吉村誠之助 1:51.2 上り37.6
1 3歳以上1勝クラス 阪神 ダ1800 1人気 吉村誠之助 1:51.3 上り35.6
3 3歳1勝クラス 京都 ダ1800 1人気 吉村誠之助 1:52.2 上り37.4
2 3歳1勝クラス 阪神 ダ1800 7人気 吉村誠之助 1:50.2 上り36.1
15 3歳1勝クラス 中山 ダ1800 5人気 戸崎圭太 1:56.3 上り42.1
1 3歳未勝利 阪神 ダ1800 3人気 鮫島克駿 1:54.8 上り37.2
6 2歳未勝利 京都 芝1800 5人気 吉村誠之助 1:47.7 上り36.1
7 2歳未勝利 京都 芝2000 7人気 松山弘平 2:05.9 上り37.1
8 2歳未勝利 新潟 芝1600 4人気 松山弘平 1:34.9 上り33.8
7 2歳新馬 阪神 芝1600 3人気 松山弘平 1:38.4 上り35.9
STORY

旅程 — この馬の物語

2023年生まれの黒鹿毛の牡馬。主な勝ち鞍はレパードS。

天と風の間 ― 名前と血

2023年3月26日、北海道新冠町のノースヒルズに黒鹿毛の牡馬が生まれた。父はコントレイル。同じ牧場が育て、2020年に無敗のまま三冠を制した馬である。種牡馬になったコントレイルの、これが最初の世代だった。 母クリアリーコンフューズドはアメリカ生まれ。現役時代は本国の砂で31戦を走って6勝を挙げ、2015年にはGIのマディソンステークスで3着に入っている。日本へ渡って繁殖入りし、最初の仔がキズナ産駒のフィオリキアリ。この半姉は2020年、桜花賞・オークス・秋華賞の三つをすべて走った。デアリングタクトが牝馬三冠を成し、コントレイルが牡馬三冠を成した、あの年である。三年後、母はそのコントレイルと配合され、この黒鹿毛を産んだ。 馬名は「天と風」。天と風の間を駆ける者、と登録の由来には添えられている。馬主は中村忠彦。預けられた先は栗東の清水久詞厩舎で、かつてキタサンブラックを送り出した厩舎だった。担当厩務員の辻田義幸も、あの馬を世話した人である。清水は当歳の頃から、馬っぷりの良さに期待をかけていたという。

芝の四戦、砂の三馬身

2025年6月22日、阪神の芝1600メートルで新馬戦を迎えた。鞍上は松山弘平、3番人気。2番手で流れに乗ったが、直線で置かれて7着に終わる。勝ったのはフェスティバルヒルだった。秋に新潟、京都、京都と芝で三戦しても、着順は8着、7着、6着。11月末の一戦から手綱を取ったのが、清水厩舎に所属する若手、吉村誠之助である。目標の騎手に松山の名を挙げるデビュー2年目の若手が、その松山から馬を引き継いだ格好だった。 年が明けて、陣営は矛先を砂に変えた。2026年2月21日、阪神のダート1800メートル。鮫島克駿を背にハナを切ると、一度も先頭を譲らないまま3馬身差で初勝利を挙げた。芝で四戦して掴めなかったものが、砂の一戦で手に入った。 ただし、道はまっすぐではない。3月の中山では2番手から3コーナーで後退し、上がり3ハロン(最後の600メートル)に42秒1を要して15着。着順が二桁に沈んだのは、これが唯一である。4月の阪神は重馬場。7番人気で2番手を進み、直線で粘りに粘ったが、後方から上がり35秒1で追い込んだシルバーレシオにゴール前で捉えられ、クビ差の2着。差した相手は翌月、ユニコーンステークスを勝つ馬だった。5月の京都は1番人気で3着。 そして6月7日の阪神、3歳以上1勝クラス。稍重の馬場を好位で進み、早めに外へ持ち出して直線で先頭に立つと、2着に6馬身の差をつけた。上がり35秒6はメンバー最速だった。 「パワーがすごい。パドックでもぐいぐいと引っ張っていく」[^1]。辻田厩務員はそう評した。清水も、使うごとに馬が良くなっている、と手応えを口にしている。

出典:デイリースポーツ「【レパードS】チェリヴェント 快パワーでVへ コントレイル産駒ダート重賞V一番乗りを目指す」2026年8月7日配信、https://www.daily.co.jp/umaya/news/2026/08/07/0020677661.shtml、閲覧日:2026年9月5日。

残り二百メートル ― 新潟、八月九日

新潟の日曜日は晴れ、ダートは良。第18回レパードステークス。チェリヴェントは6番人気だった。 ゲートが開くと、ドンエレクトスがハナを奪う。2番手にパイロマンサー。前年の全日本2歳優駿を勝ち、春はドバイのUAEダービーを走ってきた馬である。1番人気メルカントゥールもすぐに並びかけ、有力馬が三頭、前で固まった。 吉村はその後ろにいた。ペースは速くなる、と読んでいた。前半は砂の1800メートルとしては前が苦しくなる流れである。ダートの馬群では、前の馬が蹴り上げる砂を浴びたくない。だがその日は結果として、前の三頭を見ながら控える形になった。4番手、5番手、また4番手。手応えは、これまで勝ってきた時のように楽ではなかった、とのちに吉村は振り返っている。 3コーナー、4コーナー。順位はほとんど動かない。前の三頭も、その後ろの一頭も。動かないまま、ラップだけが落ちていく。逃げたドンエレクトスの脚色が鈍り、直線でパイロマンサーが先に抜け出した。メルカントゥールが食い下がる。 チェリヴェントは、その二頭の後ろから伸びた。速い脚ではない。長い脚である。最後の600メートルはメンバーで最も速く、パイロマンサーより0秒3だけ速かった。それが残り200メートルで、じわじわと縮まる差になる。100メートル。50メートル。そしてゴール線の上で、アタマひとつぶんだけ前に出ていた。 勝ち時計1分51秒2。 「やっと勝てました!! うれしいですね」[^1]。清水久詞は、そう顔をほころばせた。

出典:東スポ競馬「【レパードS】一気に世代トップクラスに浮上したチェリヴェント コントレイル産駒がダートで頂点を狙う!」2026年8月9日配信、閲覧日:2026年9月5日。

天と風の間 ― 師弟の一勝

清水久詞は笑って言った。期待馬だから芝から使ったけれど、適性はダートだったね、と。見立ては外れた。けれど、外れたその先に、この馬の本当の舞台があった。芝で四戦して勝てなかった馬が、砂に降りて三勝。伏兵の立ち位置で臨んだ重賞を、最後の一完歩で差し切った。 厩舎所属の吉村誠之助を乗せて重賞に挑むのは、これが四度目だった。二十歳の弟子と、五十四歳の師匠。かつてキタサンブラックで頂点を見た厩舎が、およそ十年の後に、自分の厩舎の若い騎手と掴んだ一勝である。吉村には三つ目の重賞。清水には初めてのダート重賞。そしてコントレイルの仔にとっても、初めてのダート重賞だった。 吉村は正直だった。まだ馬は出来上がっていない。夏もそれほど得意ではない。競馬もだいぶ使ってきた。それでもこれだけ走れたのだから、今後が楽しみだ、と。清水も、この日の走りなら距離が延びても大丈夫だろう、と見ている。 天と風の間を駆ける者。芝の上では、その名の通りにはいかなかった。前を行く馬を見ながら我慢し、最後にアタマひとつを前に出す。それがいまのところ、この馬の走り方である。三歳の夏を越えたばかりで、名前が指しているものはまだ先にある。天と風の間の、どこまで高く駆けていくのか。それを見るのは、これからだ。

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