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ココナッツブラウン
通算成績16戦5勝
獲得賞金1億8,764万円
生年月日 2020.04.28(令和2年)毛色 鹿毛性 牝
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | GIIIクイーンS | 札幌 芝1800 | 1人気 | 北村友一 | 1:46.1 | 上り34.1 | 映像 | |
| 5 | GIヴィクトリアM | 東京 芝1600 | 7人気 | 北村友一 | 1:31.4 | 上り32.9 | 映像 | |
| 3 | GIII小倉牝馬S | 小倉 芝2000 | 2人気 | 北村友一 | 1:58.2 | 上り34.1 | 映像 | |
| 5 | GIエリザベス女王杯 | 京都 芝2200 | 3人気 | 北村友一 | 2:11.5 | 上り34.6 | 映像 | |
| 2 | GII札幌記念 | 札幌 芝2000 | 2人気 | 北村友一 | 2:01.7 | 上り35.5 | 映像 | |
| 2 | GIIIクイーンS | 札幌 芝1800 | 2人気 | 北村友一 | 1:46.0 | 上り34.0 | 映像 | |
| 1 | 錦S | 京都 芝1600 | 2人気 | 岩田望来 | 1:33.1 | 上り32.8 | — | |
| 10 | 斑鳩S | 京都 芝1600 | 2人気 | 幸英明 | 1:35.9 | 上り35.3 | — | |
| 3 | 嵯峨野S | 京都 芝1800 | 4人気 | 幸英明 | 1:46.1 | 上り33.3 | — | |
| 3 | 大原S | 京都 芝1800 | 4人気 | 岩田望来 | 1:44.2 | 上り33.9 | — | |
| 1 | 春日特別 | 京都 芝1800 | 2人気 | 横山和生 | 1:47.8 | 上り33.1 | — | |
| 5 | GIIローズS | 阪神 芝1800 | 8人気 | 横山武史 | 1:43.7 | 上り34.0 | 映像 | |
| 1 | 3歳以上1勝クラス | 札幌 芝1800 | 1人気 | 横山武史 | 1:47.6 | 上り34.2 | — | |
| 2 | 3歳以上1勝クラス | 函館 芝1800 | 2人気 | 横山武史 | 1:49.5 | 上り34.6 | — | |
| 1 | 3歳未勝利 | 函館 芝1800 | 2人気 | 横山武史 | 1:48.0 | 上り36.8 | — | |
| 2 | 3歳新馬 | 中京 芝1600 | 2人気 | 古川吉洋 | 1:36.9 | 上り33.8 | — |
血統
金色の名は掲載馬 — その馬のページへ/点線の名は押すと一言解説| 父キタサンブラックKitasan Black | ||
| サクラバクシンオーSakura Bakushin O | ||
| キングカメハメハKing Kamehameha | ||
| フィラストリート | ||
| Phydilla |
旅程 — この馬の物語
2020年生まれの鹿毛の牝馬。父キタサンブラック、母ルアーズストリート。主な勝ち鞍はクイーンS。
ストリートの一族 ― 名と血
2020年4月28日、北海道日高町の下河辺牧場に生まれた鹿毛の牝馬。父はキタサンブラック。母ルアーズストリートはキングカメハメハの娘で、二代母フィラストリートは米国から入った牝馬である。 この一族は、馬名に「ストリート」を受け継いできた。母の姉ブロードストリートは2009年のローズステークスをコースレコードで勝ち、秋華賞で2着に食い込んだ牝馬だ。さらに遡れば、三代母Phydillaの娘Mysteriesからは、スプリンターズステークスを勝ったヒシアケボノと、アベイ・ド・ロンシャン賞、ジュライカップを勝ったアグネスワールドの兄弟が出ている。速さで名を残してきた一族である。 名は色の名から取られた。ココナッツブラウン——椰子の実のような茶色をいう。この牝馬に、褐色の名。馬主は下河辺隆行。生産も所有も、下河辺の名のもとにある。 預けられたのは栗東の上村洋行。騎手時代にはサイレンススズカのデビュー戦を勝たせ、2019年に厩舎を開いた調教師である。ココナッツブラウンは、この厩舎で三歳の冬を迎えた。
クビ差から始まる ― 遠回りの二年
2023年2月5日、中京の芝1600メートルで新馬戦を迎えた。鞍上は古川吉洋。2番人気に推されたが、タイキバルドルとの競り合いをクビ差で落として2着に終わる。 初勝利は6月10日、函館の未勝利戦だった。横山武史を背に、ゴール前の追撃をクビ差で振り切る。7月30日には札幌の1勝クラスを1番人気で勝った。函館でクビ差、札幌でひとつ。北の洋芝で、この馬は勝ち方を覚えた。 秋は阪神へ。9月17日のローズステークス(GII)は、伯母ブロードストリートが勝った舞台である。8番人気。好位で直線に向いたが、後ろから来たマスクトディーヴァらに交わされ、レコード決着の5着に終わった。 四歳の2024年は三戦だけだった。2月の春日特別(2勝クラス)を横山和生でクビ差で勝ったあと、次走は10月までずれ込む。大原ステークス3着、嵯峨野ステークス3着。3勝クラスの壁は厚く、明けて2025年2月の斑鳩ステークスでは初めて掲示板を外す10着に沈んだ。 壁が破れたのは5月18日、京都の錦ステークス。岩田望来を背に、上がり3ハロン(最後の600メートル)32秒8で突き抜け、二馬身以上の差をつけた。五歳の春、ようやくオープンの馬になった。デビューから2年3か月が経っていた。
アタマ差 ― 二〇二五年、札幌の夏
オープン入りして最初の一戦に選んだのは、8月3日、札幌のクイーンステークス(GIII)。鞍上に北村友一を迎えた。初めてこの馬に乗る日である。馬体重は前走から20キロ増えていた。 コンクシェルが逃げ、前半の800メートルは47秒6。ココナッツブラウンは12番手あたりで脚をため、直線で追い込んだ。上がり34秒0は、この日の出走馬でいちばん速い。だが中団で待っていたアルジーヌが、ひと足先に抜け出していた。ゴールはアタマ差。同じ1分46秒0の時計で、届かなかった。 北村は返し馬から良さを感じていたと語り、追い出すタイミングひとつだったと悔やんだ。「滞在は合っていますし、条件もベストだったのに、2着という結果を申し訳なく思います」[^1]。 二週間後、中1週で札幌記念(GII)へ向かう。牡馬相手、稍重。11番手から外を回して伸びたが、内を割って抜け出したトップナイフに1馬身及ばず、また2着だった。北村は、外を回りながら脚を使って力は見せた、勝ち馬の立ち回りの巧さに尽きる、と振り返った。夏の札幌で二つの2着。スポーツ紙が「夏女」と見出しに書くほど、北の夏はこの馬の季節になった。 秋、初めてのGI。上村洋行はこの馬の末脚を現役屈指の破壊力だと語っていた。エリザベス女王杯は3番人気に支持され、京都の芝2200メートルを12番手から追って、レガレイラから0秒5差の5着。掲示板は守った。しかし、あと一歩で届かない型は、ここでも同じだった。
出典:中日スポーツ「【クイーンS】追い上げ及ばず2着のココナッツブラウン 北村友は「申し訳なく思う」と勝利を手にできず唇をかむ」2025年8月3日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/1110139、閲覧日:2026年9月5日。
八人目の隣で ― 冬から春
2026年1月24日、小倉牝馬ステークス(GIII)。前めの6番手で運び、直線で抜け出しかけたが、後ろから来たジョスランとボンドガールに交わされて3着。 この日、勝ったジョスランの鞍上クリストフ・ルメールは、JRA全10場での重賞制覇を達成した。史上8人目、外国人騎手では初めての記録である。ココナッツブラウンは、その記録の1馬身あまり後ろでゴールしていた。 5月17日、ヴィクトリアマイル(GI)。7番人気。東京のマイルを中団の後ろから進め、上がり32秒9は勝ったエンブロイダリーより速かった。それでも5着。4着エリカエクスプレスとはアタマ差だった。速い脚はある。足りないのは、それを使う場所と一呼吸——一年前の札幌で北村が口にした課題が、まだ残っていた。
一呼吸 ― 二〇二六年八月二日
一年が巡り、同じ札幌、同じクイーンステークス。上村洋行にとっては、負けられない一戦だった。GIを戦ってきた馬が、GIIIに戻ってきたのだから。 晴れた午後の良馬場。エリカエクスプレスが武豊とともにハナへ行き、ヴーレヴーが二番手につけた。前半は前年より速く流れた。 ココナッツブラウンは動かない。1コーナーで前に十頭。2コーナーでも十頭。中盤で流れがひと息つき、隊列が落ち着いても、北村はまだ動かなかった。3コーナー、まだ十番手。ここで外に持ち出した。 レースのラップがわずかに速まる、その区間である。3コーナーから4コーナーにかけて、外を回りながら六頭を追い抜き、4コーナーでは先頭集団のすぐ後ろ、四番手まで押し上げていた。前年は、この地点で十一番手だった。 直線に向く。前にはエリカエクスプレスとヴーレヴー。ココナッツブラウンは外から並び、交わした。後ろからは、九番手にいたコガネノソラが追ってくる。抑えた。3/4馬身。上がりは、この日もいちばん速かった。 北村は、特にイメージを作らずにありのままの競馬をした、と語った。この馬はその場の雰囲気がとても大切だから、と。いつでも動ける態勢で、前の馬を見ながら自分で動いていった——一年前に足りなかった一呼吸を、今度は自分で決めた。
十番目の競馬場
北村友一にとって札幌は、JRAの十場のうち、重賞をまだ勝っていない最後の一場だった。この勝利で全10場重賞制覇。史上9人目である。半年前、小倉で8人目になったルメールのすぐ後ろを走った馬が、今度は9人目を自分の背に乗せて連れていった。 2009年7月、北村はこの札幌で落馬し、左の上腕を折った。2021年5月には阪神で落馬し、椎体と右の肩甲骨を折る大怪我で一年あまりをレースから失う。戻ってきて、2025年にはデビュー20年目でダービーを勝った。その相棒クロワデュノールは、ココナッツブラウンと同じキタサンブラックの仔である。 一年前、北村は「2着という結果を申し訳なく思います」と言った。だが一年後に同じ舞台で示したのは、詫びの言葉ではなく、動き出す一呼吸だった。足りなかったのは脚ではない。上がりの速さは、負けたレースでも示してきた。足りなかったのは、それを使う場所を人と馬で決める呼吸で、それを手に入れるのに一年かかった。 ココナッツブラウンは現役である。札幌の洋芝で四度走って、一着が二つ、二着が二つ。十七年前に北村が腕を折った競馬場は、十番目の競馬場になった。そこへ連れていったのは、椰子の実の色の名を持つ六歳の牝馬だった。その脚は、まだ使い切っていない。
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