名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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クラリティスカイのイメージビジュアル
クラリティスカイClarity Sky
Clarity Sky

クラリティスカイ

通算成績27戦3勝

獲得賞金2982万円

生年月日 2012.03.07(平成24年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
クラリティスカイの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
10 OPBSN賞 新潟 ダ1800 12人気 木幡巧也 1:54.5 上り38.9
13 GIIIダービー卿チャレンジトロフィー 中山 芝1600 16人気 木幡巧也 1:33.6 上り36.0映像
12 GIII小倉大賞典 小倉 芝1800 14人気 木幡巧也 1:47.2 上り35.2映像
14 OPポルックスS 中山 ダ1800 10人気 田辺裕信 1:54.7 上り40.7
11 OPオクトーバーS 東京 芝2000 8人気 柴山雄一 2:02.6 上り36.8
16 GIII関屋記念 新潟 芝1600 12人気 横山典弘 1:33.7 上り34.2映像
15 GIIIエプソムカップ 東京 芝1800 4人気 田辺裕信 1:47.2 上り34.9映像
3 OPメイS 東京 芝1800 5人気 田辺裕信 1:46.3 上り33.8
3 GIII小倉大賞典 小倉 芝1800 5人気 田辺裕信 1:46.2 上り36.3映像
10 GIIアメリカジョッキークラブカップ 中山 芝2200 8人気 柴田善臣 2:13.7 上り37.5映像
2 GIII中山金杯 中山 芝2000 6人気 田辺裕信 2:00.7 上り36.6映像
5 OPディセンバーS 中山 芝2000 4人気 田辺裕信 2:01.2 上り35.7
3 OPアイルランドT 東京 芝2000 4人気 田辺裕信 2:00.4 上り35.6
4 GIII京成杯オータムH 中山 芝1600 9人気 田辺裕信 1:33.5 上り34.9
8 GIII関屋記念 新潟 芝1600 8人気 田辺裕信 1:32.3 上り33.2映像
13 GIIIプロキオンS 中京 ダ1400 4人気 C.ルメール 1:23.8 上り37.8映像
13 GII京王杯スプリングカップ 東京 芝1400 10人気 三浦皇成 1:20.7 上り34.2映像
12 GIマイルチャンピオンS 京都 芝1600 14人気 横山典弘 1:33.6 上り34.5映像
15 GIII富士S 東京 芝1600 6人気 横山典弘 1:33.7 上り34.5
1 GINHKマイルカップ 東京 芝1600 3人気 横山典弘 1:33.5 上り33.9映像
5 GI皐月賞 中山 芝2000 10人気 横山典弘 1:58.9 上り35.4映像
6 GII報知杯弥生賞 中山 芝2000 5人気 横山典弘 2:02.6 上り36.8映像
3 GI朝日杯フューチュリティステークス 阪神 芝1600 3人気 岩田康誠 1:36.1 上り35.9映像
1 いちょうS 東京 芝1600 4人気 横山典弘 1:33.5 上り34.0
1 2歳未勝利 阪神 芝1800 2人気 岩田康誠 1:46.8 上り34.0
2 2歳未勝利 中京 芝1600 3人気 戸崎圭太 1:38.9 上り35.0
4 2歳新馬 中京 芝1400 4人気 川須栄彦 1:23.6 上り36.1

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
クラリティスカイの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
クロフネKurofuneフレンチデピュティFrench DeputyDeputy Minister
Mitterand
ブルーアヴェニューBlue AvenueClassic Go Go
Eliza Blue
タイキクラリティスペシャルウィークSpecial WeekサンデーサイレンスSunday Silence
キャンペンガール
タイキダイヤオジジアンOgygian
パテントリークリアPatently Clear
STORY

旅程 — この馬の物語

2012年生まれの鹿毛の牡馬。父クロフネ、母タイキクラリティ。主な勝ち鞍はNHKマイルC。

澄んだ空 ― 名前と血

2012年3月7日、北海道新冠町のパカパカファームに、鹿毛の牡馬が生まれた。父はクロフネ、母はタイキクラリティ。馬主は杉山忠国。名は、母タイキクラリティの「クラリティ」に「スカイ」を重ねたものだ。 母タイキクラリティは、2005年暮れの中山で新馬戦を1番人気に応えて勝ち上がった。その後は十七戦を戦い、二勝目には届かなかった。オープンの菜の花賞で三着に入ったのが、いちばん高いところだった。 血の縁は、母よりも祖母の側にあった。祖母タイキダイヤはアメリカで生まれ、大樹ファームがアメリカに設けたタイキファームの生産馬として日本へ渡り、1999年のクリスタルカップを勝っている。そのタイキダイヤの半兄が、タイキフォーチュンだった。1996年、外国産の三歳馬が春から出走できる中央競馬で初めてのGIとして創設された、NHKマイルカップの初代王者である。タイキフォーチュンの半弟タイキリオンもまた日本に渡り、2002年のニュージーランドトロフィーを勝った。三歳の春、マイルの前後で結果を出す一族だった。 その一族の名が、十九年後の五月、もう一度だけ府中のゴール板の上に呼ばれることになる。

新設重賞の一分三十三秒五 ― 二歳の秋

デビューは2014年7月5日、中京の芝1400m。川須栄彦を背に4番人気で4着だった。翌週の未勝利戦は戸崎圭太で2着。三戦目、九月の阪神芝1800mを岩田康誠で勝ち上がり、ようやく一つ目の白星を手にする。 十月十一日、東京の芝1600m。この年から重賞に格上げされた「いちょうステークス」の、その第一回だった。手綱を取ったのは横山典弘。4番人気のクラリティスカイは1分33秒5のレコードで走り抜け、新設重賞の初代優勝馬になった。 十二月、阪神の朝日杯フューチュリティステークスは3番人気で三着。勝ったダノンプラチナとは0.2秒の差だった。2014年の二歳のランキングでこの馬に与えられた数字は111。世代の四番手という評価である。器の大きさは、この時点ですでに認められていた。

十番人気の逃げ ― 皐月賞

明けて2015年、始動戦の弥生賞は5番人気で六着。勝ったサトノクラウンとは0.8秒の差がついた。 四月十九日、皐月賞。単勝52.1倍、十五頭立ての十番人気。上位人気には推されなかったこの馬に、横山典弘は攻めの騎乗を選ぶ。道中から先頭を奪い、そのまま中山の坂へ向かって逃げたのだ。押し切ることはできなかったが、突き放されもしなかった。0.7秒差の五着。勝ったのはドゥラメンテだった。 ダービーは相手関係を見て見送った。陣営が選んだ次の舞台は、五月十日、東京の芝1600m。クラシック戦線で揉まれてきた地力が、そこで生きることになる。

第二十回 ― 血が呼んだ五月

抜けた主役のいない一戦だった。1番人気が4.3倍、5番人気でも7.2倍。倍率が横並びに潰れたその中で、クラリティスカイは6.4倍の3番人気に推され、十八頭立ての四枠七番からゲートを出た。 レンイングランドが一馬身のリードを取り、マイペースで引っ張る。前半800m通過は47秒2、緩い流れ。クラリティスカイは先行集団の内側で、行きたがる気持ちを抑えながら我慢していた。 直線、レンイングランドを交わして牝馬のアルビアーノが先頭に立ち、突き放しにかかる。単独二番手に上がったクラリティスカイが、残り200mから追いはじめた。じわり、じわりと差が縮む。残り50m、ついに前へ出た。外からミュゼスルタンが猛然と伸びてきたが、二番手のアルビアーノにクビ差まで迫るのが精一杯で、三着に終わった。 勝ち時計は1分33秒5。七か月前、同じ府中の同じ距離でレコードを刻んだ数字と、ぴたり同じだった。 皐月賞を走った馬がこの競走を勝つのは、二十回目の開催にして初めてのことである。父クロフネは2001年の勝ち馬だから、父子二代の制覇でもあった。そして第一回を勝ったタイキフォーチュンは、この馬の祖母の半兄にあたる。十九年前、初代王者が引いたのも十八頭立ての四枠七番だった。血が、同じ場所へ戻ってきていた。 鞍上は、道中で掛かってしまい苦労した、それでも最後はよく頑張ってくれた、と振り返っている。横山典弘にとっては1999年のシンボリインディ以来となるこの競走二勝目で、前週の天皇賞・春に続く二週連続のGI制覇だった。友道康夫はこの競走初勝利。なお、十九年前にタイキフォーチュンの手綱を取っていた柴田善臣は、この日、ミュゼスルタンでその三着にいた。

秋の府中、風向きが変わる ― 転厩

次にゲートへ入ったのは、およそ五か月後の秋だった。十月の富士ステークスは6番人気で十五着。十一月のマイルチャンピオンシップは十二着で、勝ったのはこの年のマイル王モーリスである。三歳の五月に掴んだ景色に、そこから先はなかなか手が届かなくなった。 2016年、五月の京王杯スプリングカップは三浦皇成で十三着。七月にはダートのプロキオンステークスをルメールで試したが、これも十三着に終わる。芝でもダートでも、勝ち味に遠い。 そしてこの七月、陣営は大きな決断をする。栗東の友道康夫厩舎から、美浦の斎藤誠厩舎へ。GI馬が関西から関東へ住まいを移した。移籍後の初戦が八月十四日の関屋記念で、鞍上には田辺裕信が座った。以後、この馬は九つのレースで田辺の手綱を受けることになる。 新しい厩舎で、走りは少しずつ形を取り戻していく。九月の京成杯オータムハンデキャップで四着。十月、東京のアイルランドトロフィーで三着。暮れのディセンバーステークスは五着。掲示板の内側に、名前が戻ってきた。

あと一完歩 ― そして最後の新潟

2017年1月5日、中山金杯。6番人気のクラリティスカイは、ツクバアズマオーの0.1秒後ろまで詰め寄って二着に入った。あと一完歩。翌月の小倉大賞典は三着、五月のメイステークスでは上がり33秒8を繰り出して、また三着。届きそうで、届かない位置に、この馬はずっといた。 八月十三日、新潟の関屋記念。2015年暮れのマイルチャンピオンシップ以来、一年九か月ぶりに横山典弘が跨った。いちょうステークスから弥生賞、皐月賞、そしてNHKマイルカップまで、この馬のいちばん高いところを見てきた男である。結果は十六着。それが、二人で走った最後の一戦になった。 2018年は四戦。ダートのポルックスステークス、小倉大賞典、ダービー卿チャレンジトロフィーと走り、八月二十五日、新潟のBSN賞で十着。この一戦を最後に、八月三十一日、競走馬登録が抹消された。二十七戦三勝、獲得賞金は二億九百八十二万三千円。三つの勝ち星のうちの一つが、GIだった。

土佐清水の空の下で

引退したクラリティスカイは、乗馬になった。福島の乗馬クラブで人を背に乗せる日々が始まる。だが2020年、そのクラブが閉じた。GIを勝った馬にも、行き先を探さなければならない日は来る。 同じ年の十二月、受け入れたのは高知県土佐清水市のあしずりダディー牧場だった。四国の南西の端、太平洋へ突き出した足摺岬を抱く町である。2022年からは引退名馬繋養展示事業の対象馬となり、2024年からは引退馬協会のフォスターホースとして、支援を受けながら暮らしている。放牧地には仲間がいる。 2012年3月生まれの鹿毛は、この春で十四歳になった。 府中の五月の一日は、一分三十三秒五で終わった。その数分に競馬のすべてが詰まっていたことは間違いない。けれど、そのあとに続いている時間のほうが、ずっと長い。澄んだ空、という名を与えられた馬は、いま、その名のとおりの空の下にいる。

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