名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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サークルオブライフのイメージビジュアル
サークルオブライフCircle of Life
Circle of Life

サークルオブライフ

通算成績8戦3勝

獲得賞金14,132万円

生年月日 2019.03.24(令和元年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
サークルオブライフの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
4 GIII紫苑S 中山 芝2000 3人気 M.デムーロ 2:00.1 上り34.9
12 GI優駿牝馬 東京 芝2400 1人気 M.デムーロ 2:25.8 上り34.8映像
4 GI桜花賞 阪神 芝1600 2人気 M.デムーロ 1:33.0 上り33.3映像
3 GIIチューリップ賞 阪神 芝1600 2人気 M.デムーロ 1:33.4 上り34.5映像
1 GI阪神ジュベナイルフィリーズ 阪神 芝1600 3人気 M.デムーロ 1:33.8 上り33.9映像
1 GIIIアルテミスS 東京 芝1600 7人気 M.デムーロ 1:34.0 上り33.5映像
1 2歳未勝利 中山 芝1600 3人気 M.デムーロ 1:35.4 上り35.4
3 2歳新馬 新潟 芝1800 4人気 M.デムーロ 1:48.6 上り35.5

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
サークルオブライフの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
エピファネイアEpiphaneiaシンボリクリスエスSymboli Kris SKris S.
Tee Kay
シーザリオCesarioスペシャルウィークSpecial Week
キロフプリミエールKirov Premiere
シーブリーズライフアドマイヤジャパンサンデーサイレンスSunday Silence
ビワハイジ
プレシャスライフタイキシャトルTaiki Shuttle
スターマイライフ
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの鹿毛の牝馬。父エピファネイア、母シーブリーズライフ。主な勝ち鞍は阪神ジュベナイルF・アルテミスS。

命の輪 ― 名と血

2019年3月24日、北海道新ひだか町の千代田牧場に、鹿毛の牝馬が生まれた。母シーブリーズライフ、その母プレシャスライフ、さらにその母スターマイライフ――牝系をさかのぼると、名の末尾には「ライフ」が連なる。曾祖母スターマイライフは1995年、生産者・飯田正剛の父である飯田正がアメリカから輸入した一頭で、その半姉には1986年のエクリプス賞年度代表馬レディーズシークレット(父セクレタリアト)がいる。一族には2002年のスプリンターズステークスを制したビリーヴもいた。海を渡ってきた牝の血が、日高の牧場で三代、四代と受け継がれてきた。その環をそのまま名にして、仔は「命の輪」を意味するサークルオブライフと名づけられる。母と同じ飯田正剛の勝負服を着て、美浦・国枝栄厩舎へ。手綱を任されたのは、日本に根を下ろしたイタリアの名手ミルコ・デムーロだった。父は、前年に無敗の三冠牝馬デアリングタクトを送り出したばかりの新進種牡馬エピファネイア。2021年8月28日、新潟の新馬戦(芝1800m)でデビューする。4番人気で中団から追い上げたが、一頭だけ抜けた脚を使った馬に及ばず3着。その勝ち馬の名は、イクイノックス。この一敗が、長い時を経て思わぬ形で還ってくることを、まだ知る者はいない。

三連勝 ― 二歳の女王

9月20日、中山の未勝利戦。スタートで後手を踏んで最後方に置かれたが、向正面からじわりと押し上げ、直線で先頭に立つと二馬身半差をつけて初勝利を飾る。ここからが早かった。10月30日、東京のアルテミスステークス。7番人気という低評価をものともせず、中団のやや後ろで脚をため、直線は外から鋭く伸びて、先に抜け出したベルクレスタをクビ差で差し切った。重賞初制覇。この日、鞍上のデムーロはJRA通算重賞100勝の大台に到達している。名手が刻んだ節目の一勝に、この牝馬の名が並んだ。そして12月12日、阪神ジュベナイルフィリーズ。3番人気で臨んだ二歳女王決定戦を、直線で外から前をまとめて差し切り、内をしぶとく伸びた8番人気ラブリイユアアイズに半馬身差をつけて勝利。デビュー2戦目からの三連勝で、GIを掴んだ。オーナーブリーダーである千代田牧場にとっては、2002年のピースオブワールド以来19年ぶりの阪神ジュベナイルフィリーズ制覇だった。輸入された牝の血が、孫の代でまた頂に立つ。年末、サークルオブライフは2021年のJRA賞最優秀2歳牝馬に選ばれた。

春は、つれなかった

明けて三歳。陣営は桜花賞を目標に据え、その前哨戦としてチューリップ賞を選んだ。3月5日、好スタートから中団を進み、直線で懸命に追ったが、先に抜け出したナミュールと、内で粘る13番人気の伏兵ピンハイ(単勝229.8倍)を捉えきれず3着。馬連563倍という波乱の中で、女王は完調手前をのぞかせた。4月10日、桜花賞。引いた枠は外。外差しに賭けるしかない位置から脚を伸ばし、勝ったスターズオンアースとの差はわずか0.1秒――それでも前に三頭を行かせ、4着に終わる。デムーロは外枠の不利を悔しがった。5月22日、優駿牝馬(オークス)。「距離が延びてプラス」と見られ、初めて1番人気に推された。だが東京の2400mで、運命がいたずらを仕掛ける。ゲート入りの最中に隣のサウンドビバーチェが放馬し、捕まえるのを待つあいだに気持ちが高ぶってしまった。出遅れ、そのまま後方で見せ場なく、勝ったスターズオンアースから1.9秒差の12着。初めて二桁着順に沈んだ。国枝は静かに敗因を口にした。「競馬の前にピークアウトしちゃった」[^1]。ゲートの後ろで待たされた数十秒が、半年かけて積み上げた一頭のピークを、ゴール板の手前でこぼしていた。

出典:中日スポーツ「【オークス】サークルオブライフ、2歳女王の豪脚見せられず大敗 国枝師は「競馬の前にピークアウト」」2022年5月22日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/475100、閲覧日:2026年7月18日。

四百六十二キロ

秋、立て直しの一戦に選んだのは9月10日の紫苑ステークスだった。だがこの日の馬体重は462キロ。デビュー以来もっとも軽い数字だった。3番人気。スタートで出遅れてまた最後方に置かれ、向正面から外を回してまくり上げたが、伸びきれずに4着。勝ち切る脚は、戻ってこなかった。そのわずか5日後、右前脚に浅屈腱炎が見つかる。全治九か月以上。秋華賞は幻となり、長い休養に入った。浅屈腱炎は、競走馬の脚をもっとも深く蝕む故障の一つだ。それでも陣営は一年、復帰を待った。だが2023年10月12日、引退が発表され、同日付で競走馬登録は抹消される。飯田正剛は、脚元にもしものことがあってはならない、無理はさせられないと、引退を決めた理由を述べた。二歳の暮れに頂点で光った牝馬の現役は、三つの勝利を刻んで、静かに幕を下ろした。

命の輪、閉じる

生まれ故郷の千代田牧場へ戻り、繁殖牝馬となった。サンデーサイレンスのクロスを持つこの牝馬に、飯田正剛は母としての未来を大いに期待していた――本当に強い馬だった、と。そして繁殖初年度に選ばれた相手が、イクイノックスだった。あの日、新潟の新馬戦で、ただ一頭だけ届かなかった馬。デビュー戦で先着を許した相手の仔を、いま宿す。2025年2月10日、初仔となる牝馬が生まれた。父イクイノックス、母サークルオブライフ。輪が、閉じた。海を渡ってきたスターマイライフの血が、日高で三代を経てサークルオブライフに結ばれ、その仔がまた新しい牝系の一歩を刻む。勝った数は三つ、走った日は八日。派手な数字ではない。それでも「命の輪」という名は、成績表の外側で、いまも回り続けている。

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