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シュヴァルグラン
通算成績33戦7勝
獲得賞金11億3,497万円
生年月日 2012.03.14(平成24年)毛色 栗毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 6 | GI有馬記念 | 中山 芝2500 | 14人気 | 福永祐一 | 2:31.9 | 上り35.8 | 映像 | |
| 9 | GIジャパンカップ | 東京 芝2400 | 8人気 | C.スミヨン | 2:27.1 | 上り37.6 | 映像 | |
| 8 | GI英インターナショナル | ヨーク 芝2050 | 4人気 | O.マーフィー | — | — | ||
| 6 | GIKGVI&QES | アスコット 芝2390 | 4人気 | O.マーフィー | — | — | ||
| 2 | GIドバイシーマクラシック | メイダン 芝2410 | 4人気 | H.ボウマン | — | 映像 | ||
| 3 | GI有馬記念 | 中山 芝2500 | 9人気 | H.ボウマン | 2:32.4 | 上り35.5 | 映像 | |
| 4 | GIジャパンカップ | 東京 芝2400 | 5人気 | C.デムーロ | 2:21.5 | 上り34.5 | 映像 | |
| 4 | GII京都大賞典 | 京都 芝2400 | 1人気 | 福永祐一 | 2:26.0 | 上り34.9 | 映像 | |
| 2 | GI天皇賞(春) | 京都 芝3200 | 1人気 | H.ボウマン | 3:16.2 | 上り35.8 | 映像 | |
| 13 | GI大阪杯 | 阪神 芝2000 | 4人気 | 三浦皇成 | 1:59.7 | 上り35.2 | 映像 | |
| 3 | GI有馬記念 | 中山 芝2500 | 3人気 | H.ボウマン | 2:33.8 | 上り34.8 | 映像 | |
| 1 | GIジャパンカップ | 東京 芝2400 | 5人気 | H.ボウマン | 2:23.7 | 上り34.7 | 映像 | |
| 3 | GII京都大賞典 | 京都 芝2400 | 1人気 | M.デムーロ | 2:23.1 | 上り34.0 | 映像 | |
| 8 | GI宝塚記念 | 阪神 芝2200 | 6人気 | 福永祐一 | 2:12.6 | 上り36.9 | 映像 | |
| 2 | GI天皇賞(春) | 京都 芝3200 | 4人気 | 福永祐一 | 3:12.7 | 上り35.2 | 映像 | |
| 2 | GII阪神大賞典 | 阪神 芝3000 | 2人気 | 福永祐一 | 3:02.8 | 上り35.9 | 映像 | |
| 6 | GI有馬記念 | 中山 芝2500 | 5人気 | 福永祐一 | 2:33.1 | 上り35.7 | 映像 | |
| 3 | GIジャパンカップ | 東京 芝2400 | 6人気 | 福永祐一 | 2:26.3 | 上り34.4 | 映像 | |
| 1 | GIIアルゼンチン共和国杯 | 東京 芝2500 | 2人気 | 福永祐一 | 2:33.4 | 上り33.7 | — | |
| 9 | GI宝塚記念 | 阪神 芝2200 | 5人気 | 福永祐一 | 2:14.2 | 上り37.6 | 映像 | |
| 3 | GI天皇賞(春) | 京都 芝3200 | 3人気 | 福永祐一 | 3:15.5 | 上り34.5 | 映像 | |
| 1 | GII阪神大賞典 | 阪神 芝3000 | 1人気 | 福永祐一 | 3:05.8 | 上り34.9 | 映像 | |
| 2 | GII日経新春杯 | 京都 芝2400 | 1人気 | C.ルメール | 2:26.2 | 上り34.0 | 映像 | |
| 1 | オリオンS | 阪神 芝2400 | 1人気 | C.ルメール | 2:28.1 | 上り34.6 | — | |
| 1 | 3歳以上1000万下 | 京都 芝2400 | 1人気 | 福永祐一 | 2:24.8 | 上り33.9 | — | |
| 1 | 3歳以上500万下 | 阪神 芝2400 | 1人気 | 福永祐一 | 2:28.3 | 上り33.5 | — | |
| 2 | 3歳以上500万下 | 札幌 芝2000 | 1人気 | 福永祐一 | 2:00.1 | 上り34.4 | — | |
| 8 | GII京都新聞杯 | 京都 芝2200 | 7人気 | 内田博幸 | 2:11.9 | 上り34.8 | 映像 | |
| 5 | GIII毎日杯 | 阪神 芝1800 | 8人気 | 内田博幸 | 1:47.5 | 上り34.1 | 映像 | |
| 取 | OP若駒S | 京都 芝2000 | 内田博幸 | — | — | |||
| 3 | エリカ賞 | 阪神 芝2000 | 1人気 | 内田博幸 | 2:02.7 | 上り35.0 | — | |
| 3 | GIIIラジオN杯京都2歳S | 京都 芝2000 | 5人気 | 内田博幸 | 2:04.9 | 上り34.3 | — | |
| 1 | 2歳未勝利 | 京都 芝2000 | 1人気 | 福永祐一 | 2:00.8 | 上り35.8 | — | |
| 2 | 2歳新馬 | 阪神 芝2000 | 3人気 | 福永祐一 | 2:04.0 | 上り34.7 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父ハーツクライHeart's Cry | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| アイリッシュダンス | トニービンTony Bin | |
| ビューパーダンスBuper Dance | ||
| 母ハルーワスウィート | Machiavellian | Mr. Prospector |
| Coup de Folie | ||
| ハルーワソングHalwa Song | Nureyev | |
| Morn of Song |
引退後・牧場での映像
ゴール板の先の時間旅程 — この馬の物語
2012年生まれの栗毛の牡馬。父ハーツクライ、母ハルーワスウィート。主な勝ち鞍はジャパンC・阪神大賞典・アルゼンチン共和国杯。
尻尾のない母 ― 大魔神が惚れた一頭
はじめに惚れられたのは、この馬ではなく母だった。 ハルーワスウィートは2001年、北海道安平町のノーザンファームに生まれた栗毛の牝馬である。アメリカで宿されて海を渡ってきた持込馬で、母系はエクリプス賞に輝いた名牝グローリアスソングに遡る。ただ、彼女には生まれつき尾骨がなかった。尻尾が、無い。競走馬は尻尾でバランスを取りながらコーナーを回るとされる。その機能を欠いたまま、彼女は2003年から2007年まで走り、5勝を挙げて準オープンまで昇っている。 そのころ友道康夫は、調教師免許を取ったばかりで、まだ自分の厩舎を持たない技術調教師だった。開業に備えて幼駒を探していた友道は、吉田勝己の推薦で、生まれて間もないこの当歳馬を見初める。血統だけを見れば、厩舎も持たない新米に回ってくるような馬ではなかった。それでも預けてもらえたのは尻尾がなかったからだろう、と友道はのちに振り返っている。 もう一人、この牝馬に惚れ込んだ男がいた。横浜の抑え投手として日本球界で252セーブを積み、海を渡ってシアトルでさらに129セーブを重ねた「大魔神」――佐々木主浩である。「尻尾がないのが珍しくて、現役時代から好きな馬でした」[^1]。馬主となった佐々木は、彼女の初仔をセレクトセールで3885万円で競り落とした。以後、ハルーワスウィートの仔たちはセールに上場されないまま佐々木のものになる。この牝馬の八頭の産駒はすべて佐々木の勝負服を着て、すべて友道厩舎の馬房に入った。 それまで「マジン」の冠名を使っていた佐々木は、妻の助言で冠名をやめ、代わりに名前へ「ヴ」の一字を入れるようになっていた。2012年3月14日、ハルーワスウィートの四番仔として、父ハーツクライの栗毛が安平に生まれる。フランス語で「偉大な馬」を意味する名が、その一字とともに与えられた。シュヴァルグラン。
出典:中日スポーツ「「生まれた瞬間につばをつけて」3頭のG1馬を所有…大魔神・佐々木主浩さん「ハルちゃん」最後の産駒エヴァンスウィートに期待大【熱中オーナーズサロン】」2023年7月22日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/733447、閲覧日:2026年7月27日。
二着から始まる ― クラシックに乗れなかった二年
2014年9月21日、阪神の芝2000メートル。デビュー戦の鞍上は福永祐一だった。3番人気。中団の前めから直線で伸びたが、1番人気ドラゴンヴァースをクビ差だけ捉えきれずに2着に終わる。 翌月、京都の未勝利戦を1馬身半差で勝ち上がった。このとき2着に退けたアルバートドックは、のちに小倉大賞典と七夕賞を勝つ馬になる。新設されたばかりの京都2歳ステークスはクビ、クビ差の3着。暮れのエリカ賞も1番人気で3着。勝ちきれない二歳だった。 もっとも、勝ちきれないのは一族の見慣れた風景でもあった。三歳上の半姉ヴィルシーナは、2012年の桜花賞・オークス・秋華賞――牝馬三冠のすべてで2着に敗れている。頂に手が届きかけては、そのたびに半馬身が足りない。姉がヴィクトリアマイルでようやくGIを掴んだのは、翌2013年の春だった。 弟の三歳もまた、思うようには進まない。年明けの若駒ステークスはレース前日に右肩を跛行して出走取消。日本ダービーを目指した毎日杯は5着、京都新聞杯は8着で、クラシックの舞台には届かなかった。三か月半の休養を挟んで8月末の札幌に戻っても、一つ年上のアルバートに2馬身半突き放されて2着。 ここで陣営が舵を切る。距離を2400メートルへ。阪神の500万下を上がり33秒5、京都の1000万下を33秒9、そして師走のオリオンステークスを1番人気で快勝し、秋から冬にかけての三連勝でオープン入りを果たした。長い距離でこそ、この馬の末脚は伸びる。居場所が、ようやく決まった。
はじめての重賞 ― 三千メートルの四歳
年明けの日経新春杯は1番人気に推されたが、レーヴミストラルに2馬身差の2着。ルメールを背にしても、また二着だった。 三月、阪神大賞典。3000メートルという未知の長丁場で、2着に2馬身半差をつけて完勝する。デビューから12戦目にして、重賞初制覇。距離が延びるほど強くなる馬であることを、着差が証明した。 勢いのまま向かった天皇賞(春)は3着。前を行ったのはキタサンブラックだった。梅雨の宝塚記念は勝ち馬から1秒4離された9着。秋は東京の芝2500メートル、アルゼンチン共和国杯で上がり33秒7の脚を繰り出し、かつて札幌で完敗したアルバートを今度は退けて重賞2勝目を挙げる。 続くジャパンカップは3着。暮れの有馬記念は6着。四歳の一年で重賞を二つ勝ったが、GIの一番高い場所には手が届かない。――ただ、この秋の府中の映像が、一年後に一人の名手を動かすことになる。
意表の逃げ ― まだ何も持たない五歳
五歳の春も、形は同じだった。阪神大賞典は中団から一度は先頭に立ちながら、サトノダイヤモンドにかわされて1馬身半差の2着。天皇賞(春)は好位から脚を伸ばし、前にはまたキタサンブラックがいた。二年続けて、淀の3200メートルで同じ背中を見送ったことになる。 だから宝塚記念は、意表を突いた。阪神の2200メートルで、道中ハナに立ったのである。差して届かないのなら、前で受けて立つ。しかし直線で失速して8着に沈んだ。 五歳の半ばを過ぎて、シュヴァルグランはまだGIをひとつも持っていない。二着は五度あった。
府中の直線 ― 二〇一七年十一月二十六日
秋、手綱が動いた。京都大賞典はミルコ・デムーロとの新コンビ。1番人気に応えられず、スタートの後手が響いて3着に終わる。そしてジャパンカップ。デムーロの騎乗が実現せず、陣営は短期免許で来日したばかりのオーストラリア人に手綱を託した。ヒュー・ボウマン。母国で連勝を重ねていたウインクスの主戦であり、この年、世界の名だたるGIを勝ち歩いていた男である。 ボウマンが受けた理由は、一年前の映像にあった。「去年のジャパンカップの映像を見て、すごい馬だと分かった」[^1]。3着に敗れたレースの走りが、一人の名手をこの馬のもとへ呼び寄せたことになる。 2017年11月26日、東京競馬場。1枠1番、5番人気。逃げるキタサンブラックをぴたりとマークして進み、直線、馬場の真ん中から鮮やかに抜け出す。外から追い込むレイデオロを振り切り、2分23秒7でゴール板を駆け抜けた。22戦目にして、初めてのGI。 尻尾のない牝馬の四番仔が、府中の2400メートルで一番になった。ボウマンはこの年、ロンジン世界最優秀騎手に選ばれている。
出典:スポーツナビ「キタサン落鉄に泣く…武豊「これも競馬」 同世代シュヴァルグラン遅咲きのJC制覇」2017年11月26日配信、https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201711260003-spnavi、閲覧日:2026年7月27日。
クビ差の盾 ― 噛み合わなかった六歳
暮れの有馬記念は3着。勝ったのは、その日を最後にターフを去るキタサンブラックだった。ひと月前の府中では前に出た相手に、最後の舞台では先を譲る形になった。 六歳は、噛み合わない一年だった。年明けにいきなり選んだ大阪杯は、出遅れに加えて三歳時以来の2000メートルが忙しく、13着に大敗。立て直して臨んだ天皇賞(春)は1番人気に支持され、直線で先頭に立ちながら、ゴール前でレインボーラインにクビだけ差された。淀の盾は、三年続けて指の間をすり抜けていく。 秋、京都大賞典で福永祐一が約一年ぶりに鞍上へ戻って4着。ジャパンカップはボウマンが騎乗停止で来日できず、クリスチャン・デムーロに乗り替わって4着――前を行ったアーモンドアイが2分20秒6の世界レコードを刻んだ日である。暮れの有馬記念は9番人気ながら3着に食い込んだ。 六歳での引退が一度は決まりかけていた。それを撤回して、陣営は海を選ぶ。
海へ ― 七歳のドバイ、アスコット、ヨーク
七歳の始動はメイダンだった。ドバイシーマクラシックで五番手につけ、直線で力強く伸びたが、粘るオールドペルシアンに1馬身半及ばず2着。同じ日、同じ競馬場のドバイターフでは、半妹ヴィブロスがアーモンドアイの2着に入っている。ハルーワスウィートの四番仔と五番仔が、砂漠の一日に揃って二着で走った。 夏はイギリスへ渡った。アスコットのキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス。前日の雨で稍重となった芝は合わず、凱旋門賞を二連覇したエネイブルが勝ったレースで6着に終わる。続くヨークのインターナショナルステークスには、2005年のゼンノロブロイ以来、史上二頭目の日本馬として出走した。好スタートから五、六番手を進んだが、スローペースからの瞬発力勝負では伸びきれず8着に終わる。 海外の三戦で勝ち星は増えなかった。それでも七歳のこの馬は、世界の大レースのゲートに三度立っている。
大外十六番 ― 最後の一戦
秋、クリストフ・スミヨンとの初コンビで臨んだジャパンカップは、重い馬場で見せ場をつくれず9着。11月28日、友道康夫が発表する。有馬記念を最後に現役を退き、翌年から種牡馬になる、と。 公開枠順抽選会で佐々木主浩が引き当てたのは、大外16番だった。狙って引いたのだ、と佐々木は言った。鞍上は五年前の新馬戦で最初に跨った男――福永祐一に戻った。単勝135.4倍、16頭中14番人気。 2019年12月22日、中山。速い流れのなかを後ろで待機し、最後の直線で追い込んだ。9着に終わったアーモンドアイらに先着し、6着でゴール板を通過する。33戦目のゴールだった。 福永は最後までファイトしてくれたと愛馬を労い、友道は無事に走り切ってくれたことを喜んだ。三日後、競走馬登録が抹消される。33戦7勝、獲得賞金11億3497万円。そのうちの一勝が、府中の2400メートルだった。
跳ぶ ― 血と、二度目の馬生
新しい住まいは、北海道日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーション。初年度の種付料は受胎条件80万円・出生条件120万円に設定され、129頭の繁殖牝馬が集まった。狙いは芝の中長距離。種付けは前向きで上手だったという。 血の側から見れば、あのジャパンカップは一族にとって二度目の府中制覇でもあった。四代母グローリアスソングは、1996年のジャパンカップを勝ったシングスピールを産んでいる。二十一年を隔てて、同じ芝2400メートルを同じ牝系の馬が制したことになる。半姉ヴィルシーナは繁殖に上がり、新潟記念のブラヴァスと府中牝馬ステークスのディヴィーナを送り出した。そして母ハルーワスウィートの名は、国際競馬統括機関連盟の国際保護馬名に登録されている――尻尾のない牝馬の名は、もう世界のどのサラブレッドにも付けられない。 2025年をもって種牡馬を退くと、シュヴァルグランはノーザンホースパークへ移り、功労馬として草を食む日々に入った。それで終わりではなかった。2026年4月30日、滋賀県で開かれた「サラブレッドホースショー ザ・セカンドキャリア」で、障害馬術の競技馬としてデビューしたのである。 競馬場の直線では、いつも誰かの背中を追っていた。今度は、目の前の障害だけを見て跳ぶ。栗毛の四番仔は、走り終えたあとの時間を、まだ自分の脚で歩いている。
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