名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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カジノフォンテンのイメージビジュアル
カジノフォンテンCasino Fountain
Casino Fountain

カジノフォンテン

通算成績45戦13勝

獲得賞金29,420万円

生年月日 2016.03.29(平成28年)毛色 栗毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
カジノフォンテンの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
5 船橋記念 船橋 ダ1000 3人気 張田昂 0:59.5 上り36.1
6 JpnⅠJBCスプリント 船橋 ダ1000 11人気 張田昂 0:59.4 上り35.1映像
2 柿生スプリント 川崎 ダ900 3人気 張田昂 0:53.8 上り36.8
2 DIRTISTCK. 大井 ダ1400 8人気 張田昂 1:26.1 上り37.4
11 兵庫ウインターC 姫路 ダ1400 5人気 張田昂 1:32.7 上り41.2
1 ゴールドスプリント 佐賀 ダ1300 3人気 張田昂 1:21.2 上り37.5
7 ゴールドカップ 浦和 ダ1400 7人気 張田昂 1:27.6 上り37.4
8 千葉ダートマイル 船橋 ダ1600 4人気 張田昂 1:44.4 上り42.4
5 短夜賞 船橋 ダ1700 4人気 石崎駿 1:48.8 上り39.2
6 プラチナC 浦和 ダ1400 10人気 石崎駿 1:29.5 上り39.2
9 JpnⅠかしわ記念 船橋 ダ1600 11人気 石崎駿 1:42.2 上り40.5映像
12 川崎マイラーズ 川崎 ダ1600 6人気 澤田龍哉 1:45.0 上り43.2
15 勝島王冠 大井 ダ1800 8人気 澤田龍哉 2:00.0 上り45.1
8 フリオーソレジェンド 船橋 ダ1800 3人気 澤田龍哉 1:54.9 上り41.1
2 大井記念 大井 ダ2000 9人気 澤田龍哉 2:05.6 上り39.7
9 JpnⅠかしわ記念 船橋 ダ1600 9人気 澤田龍哉 1:42.0 上り40.2映像
10 GI東京大賞典 大井 ダ2000 7人気 御神本訓史 2:07.1 上り39.9映像
3 勝島王冠 大井 ダ1800 1人気 御神本訓史 1:52.3 上り38.4
4 JpnⅠかしわ記念 船橋 ダ1600 4人気 本田正重 1:40.8 上り40.1映像
2 京成盃グランドマイラーズ 船橋 ダ1600 1人気 張田昂 1:40.6 上り38.4
5 JpnⅠ川崎記念 川崎 ダ2100 2人気 張田昂 2:16.2 上り40.1映像
10 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 7人気 M.デムーロ 1:51.7 上り37.8映像
6 JpnⅠJBCクラシック 金沢 ダ2100 5人気 張田昂 2:14.5 上り37.4映像
10 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 3人気 張田昂 2:05.2 上り39.8映像
1 JpnⅠかしわ記念 船橋 ダ1600 2人気 張田昂 1:39.3 上り38.9映像
1 京成盃グランドマイラーズ 船橋 ダ1600 1人気 張田昂 1:38.1 上り37.4
1 JpnⅠ川崎記念 川崎 ダ2100 4人気 張田昂 2:14.9 上り37.5
2 GI東京大賞典 大井 ダ2000 9人気 張田昂 2:06.9 上り36.5
1 勝島王冠 大井 ダ1800 4人気 張田昂 1:52.1 上り37.7
1 柿生OP 川崎 ダ2000 1人気 張田昂 2:09.1 上り38.7
7 マイルグランプリ 大井 ダ1600 3人気 張田昂 1:40.5 上り39.6
1 京成盃グランドマイラーズ 船橋 ダ1600 1人気 張田昂 1:39.2 上り38.1
5 川崎マイラーズ 川崎 ダ1600 1人気 張田昂 1:41.1 上り40.2
1 スパーキングナイトチ 川崎 ダ1600 1人気 張田昂 1:41.2 上り39.4
1 柊特別 船橋 ダ1700 1人気 張田昂 1:46.3 上り38.6
1 行っちゃう?愛川!記 川崎 ダ1600 1人気 張田昂 1:41.3 上り37.8
1 立冬特別 船橋 ダ1600 1人気 張田昂 1:39.8 上り38.6
6 東京ダービー 大井 ダ2000 5人気 本田正重 2:11.7 上り40.1
4 羽田盃 大井 ダ1800 6人気 本田正重 1:55.2 上り40.0
5 京浜盃 大井 ダ1700 5人気 本田正重 1:50.0 上り40.5
3 雲取賞 大井 ダ1800 13人気 本田正重 1:56.4 上り39.0
4 白鳥特別 大井 ダ1800 2人気 川島正太郎 1:58.6 上り39.6
1 ナイキアディライト・ 船橋 ダ1600 1人気 川島正太郎 1:44.4 上り38.3
7 平和賞 船橋 ダ1600 2人気 川島正太郎 1:45.4 上り42.6
1 紅葉葵デビュー 船橋 ダ1500 1人気 川島正太郎 1:36.7 上り39.4

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
カジノフォンテンの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
カジノドライヴCasino DriveMineshaftA.P. Indy
Prospector's Delite
Better Than HonourDeputy Minister
Blush With Pride
ジーナフォンテンベストタイアップアンバーシャダイ
ミスタイモアMiss Taymore
ジュピターガールパークリージェントPark Regent
ダイナショール

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2016年生まれの栗毛の牡馬。父カジノドライヴ、母ジーナフォンテン。

泉の名を継いで

2016年3月29日、北海道登別市の登別上水牧場に、栗毛の牡馬が生まれた。母ジーナフォンテンは、同じ牧場が送り出した女傑である。山形の上山競馬場でデビューして5連勝を飾り、船橋へ移ってスパーキングレディーカップとエンプレス杯を制した。通算38戦13勝。母がデビューした上山競馬場は、2003年11月に幕を閉じている。 父はアメリカ生まれのカジノドライヴ。半兄ジャジル、半姉ラグズトゥリッチズがそろってベルモントステークスを勝った一族の出で、その名は「一攫千金の旅」を意味した。父の「カジノ」と、母から続く「フォンテン」が、その名には並んでいる。叔父にあたるバローネフォンテンも東京オータムジャンプの勝ち馬で、泉の名は母方に連なるものだった。 この仔は、母にとって5番目の産駒である。

七馬身 ― 二〇一八年十月、船橋

2018年10月5日、船橋のダート1500m。船橋・山下貴之厩舎から、川島正太郎を背にデビューした。単勝1.7倍の支持に応え、2着に7馬身の差をつける。母の産駒としては初めての新馬勝ちだった。 だが競馬は、勝ちっぷりのぶんだけ期待を膨らませる。次の平和賞は2番人気で7着。明けて3歳、本田正重に手綱が移ると、雲取賞で13番人気ながら3着に食い込んだものの、京浜盃5着、羽田盃4着、そして大井の東京ダービーは6着に終わった。南関東クラシックの主役はヒカリオーソでありミューチャリーであり、この栗毛はその後ろにいた。 夏を休養に充て、10月に戻ってきたとき、鞍上に新しい名前が並んでいた。張田昂。

遅れてきた二人

張田昂は1987年、千葉県に生まれた。中学を出てJRA競馬学校の騎手課程に進みながら、卒業まで半年というところで退学している。牧場で一年学び、船橋で厩務員として働きながら騎手を目指し、筆記試験に何度も跳ね返された。免許を取ったのは2013年、デビューは25歳。父は船橋の名手・張田京――地方通算2600勝を挙げて、2015年に調教師へ転じた男である。 この馬を管理する山下貴之も、似た道を歩いてきた。騎手としての成績は671戦19勝。2015年に鞍を降り、同じ年に厩舎を開いた。 2019年秋、張田昂を背にした栗毛は、立冬特別、行っちゃう?愛川!記念、柊特別と、いずれも2秒以上の大差で3連勝する。明けて2020年4月、川崎の準重賞スパーキングナイトチャレンジも1.6秒差で圧勝し、連勝は4に伸びた。 躓きは5月の川崎マイラーズだった。古馬重賞初挑戦、単勝1.7倍の1番人気。結果は5着。この一戦を、張田は何年ものちまで手放さない。 6月17日、船橋の京成盃グランドマイラーズ。逃げるサルサディオーネをクビ差で捉えて、重賞初制覇。張田昂にとっても、山下貴之にとっても、初めての重賞タイトルだった。 秋は距離を延ばした。川崎の柿生オープン2000mを勝ち、12月の勝島王冠では3連覇のかかるモジアナフレイバーやノンコノユメを従えて逃げ切る。重賞2勝目。優先出走権を手に、大井の暮れへ向かった。

俺の根性が足りなかった

2020年12月29日、東京大賞典。GI初挑戦への評価は9番人気、単勝38.3倍だった。 外枠から押して2番手につけ、4コーナーを抜群の手応えで上がっていく。残り200mで先頭。そこへ外から並びかけてきたのが、このレースを二年続けて勝っていたオメガパフュームである。鼻面を併せた叩き合いはゴールまで続き、最後に前へ出たのは相手のほうだった。着差はクビ。上がり3ハロンは36秒5。 「俺の根性が足りなかった。あ~悔しい」[^1] 負けを馬のせいにしない言葉だった。この日の東京大賞典は、オメガパフュームが史上初の3連覇を果たしたレースとして記録に残る。首ひとつ後ろで、船橋の栗毛は、もう一度この相手と走る日を待つことになった。

出典:スポーツニッポン「【東京大賞典】2着カジノフォンテン 抜け出し完璧も張田「あ~悔しい」」2020年12月30日配信、https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2020/12/30/kiji/20201229s00004049397000c.html 、閲覧日:2026年7月25日。

二十一年後の一番枠

待つ時間は、一か月で足りた。2021年1月27日、川崎記念。4番人気。1番枠から迷いなくハナを主張し、最終コーナーも先頭で回る。追ってくるオメガパフュームを、今度は寄せつけなかった。3馬身差。地方競馬所属馬がこのレースを勝ったのは、2011年のフリオーソ以来10年ぶりだった。 その10年を、厩舎の中でつないでいた人がいる。カジノフォンテンの担当である波多野厩務員は、かつてフリオーソを手掛けた人だった。「カジノも心肺機能の良さはフリオーソに近いものがあるし、まだまだこれからの馬なので、フリオーソを目指して頑張っているところです」[^1]。担当馬でJpnIを勝った十年後、同じ栗毛の担当馬で、もう一度勝ったことになる。 もう一つ、川崎の砂には古い足跡が埋まっていた。2000年2月9日、この川崎記念をインテリパワーで勝ち、統一G1初制覇を果たしたのは張田京である。そして2003年1月、母ジーナフォンテンが6番人気でこのレースを走り、カネツフルーヴの3着に敗れたとき、その背にいたのも張田京だった。父が乗った牝馬の仔に息子が乗り、父が勝ったレースを、21年後に勝つ。山下貴之にとっても、これが初めてのJpnIだった。

出典:JBIS競馬女子部(高橋華代子)「カジノフォンテンが川崎記念を制覇。」2021年1月28日配信、https://girls.jbis.or.jp/2021/01/post-e8fa.html 、閲覧日:2026年7月25日。

地元の空に ― かしわ記念

4月8日、京成盃グランドマイラーズ。単勝1.4倍の圧倒的な支持を受け、終始ハナを切って、直線でタービランスとの叩き合いをクビ差しのいだ。連覇と同時に、優先出走権を手にする。 5月5日、船橋のかしわ記念。この年のフェブラリーステークスを勝ったばかりのカフェファラオに次ぐ2番人気。積極的に先行して4番手から3番手へ上がり、最終コーナーで逃げるサルサディオーネに並びかけると、直線では早々に先頭へ立った。ゴール前で外から迫ったのはソリストサンダー。並ばれ、しかしハナ差だけ、譲らなかった。 重賞3連勝、JpnIは2連勝。船橋の馬が、船橋の1600mで、中央の一線級を退けた。この年の暮れ、二つのJpnI制覇が評価され、NARグランプリのダートグレード競走特別賞が贈られている。

包囲網

頂は、そこまでだった。6月の帝王賞は3番人気。フリオーソ以来となる地方所属馬の制覇を期待されて先手を取ったが、道中ダノンファラオに徹底的に見張られてペースが上がり、直線で失速して10着に沈む。 秋は初めての長距離輸送で、金沢のJBCクラシックへ。今度は2番手に控え、4コーナーの立ち上がりで一度は先頭に立ったものの、後続に交わされてミューチャリーの6着。12月、生涯ただ一度のJRA遠征となったチャンピオンズカップは、鞍上をM.デムーロに替えて臨み、見せ場なく10着に終わった。45戦のうち、中央の競馬場で走ったのはこの一戦だけである。 2022年、連覇のかかる川崎記念は5着。掛かりすぎて1600mの手応えになってしまった、2000mの番手は難しい、と張田は振り返った。京成盃グランドマイラーズ2着、かしわ記念4着、暮れの東京大賞典10着。2023年は大井記念で2着に粘ったのが最上で、フリオーソの名を冠したレースでは8着だった。勝ち星のない時間が、季節をまたいで積み上がっていく。2024年1月を最後に、管理は山下貴之から、同じ船橋の玉井昇へ移った。

距離が短くなっていく

明けて9歳。2025年1月12日、久々の遠征で向かったのは佐賀のゴールドスプリント、ダート1300mだった。かつての主戦場より800m短い舞台で、好位から抜け出し、テイエムフェローの追撃を振り切る。2021年5月のかしわ記念以来、3年8か月ぶりの勝利だった。 そこから、この馬の走る距離はさらに短くなっていく。5月、大井の1400mで2着。10月、川崎の900mで2着。そして11月3日、地元船橋のJBCスプリント。11番人気で大きく出遅れながら、上がり3ハロン35秒1というメンバー最速の脚で追い込み、6着まで押し上げた。2100mでJpnIを勝った馬が、1000mの一線でまだ間に合っている。 12月10日、船橋記念。引退が発表されたうえでのラストランだった。好スタートを切りながら道中は中団まで下がり、直線で外から盛り返しても前の4頭には届かず5着。有終の美ではない。引き揚げてきた張田は、今の砂は痛くて馬がキックバックを嫌がったと敗因を説明したうえで、無事に引退させてやれたので、この先の馬生がいいものになるように願っている、と語った。

六番のゼッケン、そして新ひだかの朝

12月12日、船橋競馬場。引退式に用意されたのは、かしわ記念を勝った日と同じ6番のゼッケンだった。それを着けたカジノフォンテンは、張田昂を背にスタンド前を元気に駆けてみせた。玉井昇は、これだけの馬に携わることができて感謝の気持ちだけだ、と挨拶し、2024年1月まで管理していた山下貴之は、オーナーにかしわ記念をプレゼントできたのがよかった、と振り返った。 式のあと、取材に応じた張田は涙をこらえなかった。「もっと乗りたかったし、触っていたかった。どの馬も師匠だし友達だと思うけど、あいつだけは親友。川崎マイラーズで1番人気になって負けた(20年、5着)ときに自分も成長させてもらった」[^1] 二つのJpnIでも、7馬身の新馬勝ちでもなく、真っ先に挙げたのは負けた日だった。2020年5月、単勝1.7倍で5着に終わった川崎の1600m。あの一戦がなければ翌年の1月も5月もなかったと、この騎手は知っている。 通算45戦13勝、重賞6勝、獲得賞金2億9420万円。母ジーナフォンテンの38戦13勝と、勝ち星の数はぴたりと並んだ。 2026年、カジノフォンテンは北海道新ひだか町のレックススタッドにいる。父カジノドライヴの産駒としては、初めての種牡馬入りだった。同じスタッドの展示会には、大井の直線でクビだけ前にいたオメガパフュームも顔を並べている。 上山の競馬場は、もうない。そこでデビューした牝馬は船橋で女傑と呼ばれ、その5番仔が川崎とかしわで頂に立って、日高へ帰った。回り道をした騎手と、19勝で鞍を降りた調教師と、フリオーソを手掛けた厩務員が、一頭の栗毛を通って交わった十年でもある。泉の名は、次の世代を待っている。

出典:サンケイスポーツ「船橋競馬場でカジノフォンテンの引退式 主戦の張田昂騎手は涙」2025年12月12日配信、https://www.sanspo.com/race/article/general/20251212-HZLDPV4VHZMZFDWBVRS7JCO7WY/ 、閲覧日:2026年7月25日。

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