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ブラウンラチェット
通算成績9戦2勝
獲得賞金3,659万円
生年月日 2022.04.08(令和4年)毛色 鹿毛性 牝
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 7 | GIII府中牝馬S | 東京 芝1800 | 15人気 | 丸山元気 | 1:46.7 | 上り35.5 | 映像 | |
| 11 | GIII福島牝馬S | 福島 芝1800 | 12人気 | 武藤雅 | 1:46.6 | 上り35.4 | 映像 | |
| 13 | GIII小倉牝馬S | 小倉 芝2000 | 13人気 | 武藤雅 | 1:58.6 | 上り35.0 | 映像 | |
| 18 | GI秋華賞 | 京都 芝2000 | 13人気 | 池添謙一 | 2:07.0 | 上り42.9 | 映像 | |
| 7 | GI優駿牝馬 | 東京 芝2400 | 6人気 | D.レーン | 2:26.6 | 上り34.6 | 映像 | |
| 9 | GI桜花賞 | 阪神 芝1600 | 8人気 | 横山武史 | 1:34.5 | 上り34.8 | 映像 | |
| 16 | GI阪神ジュベナイルフィリーズ | 京都 芝1600 | 1人気 | C.ルメール | 1:35.1 | 上り35.9 | 映像 | |
| 1 | GIIIアルテミスS | 東京 芝1600 | 3人気 | C.ルメール | 1:33.8 | 上り33.3 | 映像 | |
| 1 | 2歳新馬 | 中山 芝1800 | 1人気 | C.ルメール | 1:50.1 | 上り34.3 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父キズナKizuna | ディープインパクトDeep Impact | サンデーサイレンスSunday Silence |
| ウインドインハーヘアWind in Her Hair | ||
| キャットクイルCatequil | Storm Cat | |
| Pacific Princess | ||
| 母フォエヴァーダーリングForever Darling | Congrats | A.P. Indy |
| Praise | ||
| Darling My Darling | Deputy Minister | |
| ローミンレイチェルRoamin Rachel |
旅程 — この馬の物語
2022年生まれの鹿毛の牝馬。父キズナ、母フォエヴァーダーリング。主な勝ち鞍はアルテミスS。
思考実験の子 ― 名前と血
ブラウン・ラチェット。それは、ファインマンが熱力学第二法則を説明するために考案した思考実験上の装置の名だ。一方向にしか回らない歯車機構と、分子の乱雑な熱揺らぎを組み合わせれば、あたかも永久機関のように見える――しかし実際にはそうならない。見かけ上の秩序と、秘められた乱れ。その矛盾した美しさを、この馬の名に選んだ人間がいた。 2022年4月8日、北海道安平町・ノーザンファームに生まれた鹿毛の牝馬。父はキズナ。ディープインパクトの血を引く2013年日本ダービー馬で、今や日本トップクラスの種牡馬として定着した存在だ。母フォエヴァーダーリングはアメリカでG2サンタイネスステークスを勝った輸入繁殖牝馬で、その祖母の半弟にはゼンノロブロイ――2004年の天皇賞秋・ジャパンカップ・有馬記念、秋古馬三冠を達成した名馬の影が血脈の奥に宿る。 そしてなにより。この牝馬には半兄がいた。父リアルスティールを持つフォーエバーヤング。全日本2歳優駿に始まり、サウジカップ連覇、2025年にはブリーダーズカップ・クラシックを日本調教馬として初めて制し、年度代表馬の栄冠を手にした世界的なダート王だ。同じ母の腹から生まれた、芝とダートに分かれた兄妹。手塚貴久厩舎(美浦)に入厩したこの鹿毛の牝馬を前に、調教師は断言した。「めちゃくちゃ走ると思うよ」[^1]。
出典:東京スポーツ 2024年9月16日配信、閲覧日:2026年6月25日。
冷静という才能 ― デビューとアルテミスS
2024年9月16日、中山の芝1800m。ブラウンラチェットは1番人気に応え、好位の外から余裕を持って抜け出し初陣を飾った。タイム1分50秒1。すごく冷静で、だんだんと加速した――ルメールはそう言った。 ひと月後の10月26日、東京の秋開幕GⅢ・アルテミスステークス。デビュー2戦目、まだ馬体も完成されていない2歳の秋に、手塚師はこの舞台を選んだ。距離は1800mから1600mへの短縮。行き脚がついた鹿毛は自然と2番手の内へ収まり、前半は少し力んだが、鞍上がしっかり抑えて息を入れながら運んだ。直線、内でスペースが詰まる場面があったが、残り300mから追い出すと終い2ハロンを11秒1→11秒0と加速し続け、後続を1馬身1/4突き放してゴール。タイム1分33秒8。3番人気の評価を大きく超えた勝ち方だった。 競馬2戦目でずっと落ち着いていたから2番手で完璧に乗ることができた、まだ伸びしろもある――そう振り返ったルメールは、最後に言い切った。「今年は絶対トップレベルにいける」[^1]。手塚師も、精神面は大人びて完成されている、なかなか牝馬でここまで競走に向いている性格はいない、そこが大きなアドバンテージになると続けた。無敗の2連勝。2歳女王決定戦へ、名前だけではない期待が積み上がっていた。
出典:東京スポーツ 2024年10月26日配信、閲覧日:2026年6月25日。
馬群の壁 ― GⅠへの険しさ
2024年12月8日、京都の阪神ジュベナイルフィリーズ。無敗の重賞馬として1番人気に推されたブラウンラチェットは、16着で帰ってきた。ゲート入りを苦しがり、馬群に飲み込まれてエキサイト。ルメールは、狭くなってしまい、小さい馬なので自分のリズムで走れなかったと唇を噛んだ。手塚師は、ゲート入りを苦しがったうえに2回も狭くなってエキサイトし、リズムを崩したと振り返った。まだ2回しか走っていないし、大きな馬でもないのでそこでパニックになってしまった。こんなに負ける馬ではないので立て直したい――そう語った。 もまれ弱さ。それが冬越しの課題として浮かび上がった。 明けて3歳、桜花賞8番人気9着、オークス6番人気7着。重賞タイトルへの扉はなかなか開かなかった。秋の秋華賞は18着の大敗。1コーナーでめちゃくちゃゴチャついて向こう正面でハミを取ってくれず、フォームもバラバラになって、故障や心房細動を心配したくらいだった――池添謙一はそう振り返った。冷静という武器が、GⅠの激流の前に幾度も砕かれた。 4歳を迎えたブラウンラチェットは、小倉牝馬S、福島牝馬Sと牝馬限定の舞台を経由しながら、着実に自分のリズムを取り戻そうとしている。2026年6月の府中牝馬Sでは15番人気7着。思考実験の歯車は、まだ正しい向きに回ろうとしている。
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