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ブルーメンブラット
通算成績24戦8勝
獲得賞金3億4,953万円
生年月日 2003.02.20(平成15年)毛色 黒鹿毛性 牝
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | GIマイルチャンピオンS | 京都 芝1600 | 4人気 | 吉田豊 | 1:32.6 | 上り33.9 | 映像 | |
| 1 | GIII府中牝馬S | 東京 芝1800 | 4人気 | 吉田豊 | 1:45.5 | 上り33.2 | — | |
| 3 | GIヴィクトリアマイル | 東京 芝1600 | 4人気 | 後藤浩輝 | 1:33.8 | 上り33.6 | 映像 | |
| 2 | GIIサンスポ杯阪神牝馬S | 阪神 芝1400 | 1人気 | 後藤浩輝 | 1:21.4 | 上り33.5 | — | |
| 4 | GIII京都牝馬S | 京都 芝1600 | 1人気 | C.ルメール | 1:36.6 | 上り34.8 | — | |
| 3 | GII阪神カップ | 阪神 芝1400 | 5人気 | C.ルメール | 1:20.7 | 上り34.0 | — | |
| 1 | OPオーロカップ | 東京 芝1400 | 1人気 | 後藤浩輝 | 1:21.7 | 上り34.2 | — | |
| 1 | 白秋S | 東京 芝1400 | 2人気 | 吉田豊 | 1:20.8 | 上り34.3 | — | |
| 取 | ストークS | 阪神 芝1400 | 和田竜二 | — | — | |||
| 8 | GIヴィクトリアマイル | 東京 芝1600 | 15人気 | 川島信二 | 1:33.1 | 上り34.3 | 映像 | |
| 5 | GIIサンスポ杯阪神牝馬S | 阪神 芝1400 | 4人気 | 川島信二 | 1:21.3 | 上り35.2 | — | |
| 1 | 斑鳩S | 京都 芝1400 | 1人気 | 川島信二 | 1:23.4 | 上り35.5 | — | |
| 4 | 石清水S | 京都 芝1600 | 1人気 | 川島信二 | 1:35.2 | 上り34.6 | — | |
| 2 | ゴールデンホイップトロフィー | 阪神 芝1600 | 1人気 | 岩田康誠 | 1:34.1 | 上り34.1 | — | |
| 3 | ユートピアS | 東京 芝1600 | 1人気 | 川島信二 | 1:35.2 | 上り34.0 | — | |
| 8 | GI秋華賞 | 京都 芝2000 | 6人気 | 川島信二 | 1:59.0 | 上り35.0 | 映像 | |
| 1 | 大倉山特別 | 札幌 芝1500 | 1人気 | 川島信二 | 1:27.8 | 上り34.5 | — | |
| 6 | GIIIクイーンS | 札幌 芝1800 | 4人気 | 川島信二 | 1:47.5 | 上り36.2 | — | |
| 9 | GI優駿牝馬 | 東京 芝2400 | 8人気 | 川島信二 | 2:27.1 | 上り35.3 | 映像 | |
| 1 | 矢車賞 | 京都 芝1800 | 1人気 | 川島信二 | 1:49.7 | 上り36.3 | — | |
| 2 | OP忘れな草賞 | 阪神 芝2000 | 1人気 | 川島信二 | 2:05.2 | 上り35.4 | — | |
| 3 | GIIIフラワーカップ | 中山 芝1800 | 8人気 | 川島信二 | 1:49.2 | 上り35.7 | — | |
| 2 | 3歳500万下 | 京都 ダ1400 | 1人気 | 川島信二 | 1:25.7 | 上り38.2 | — | |
| 1 | 3歳未勝利 | 京都 ダ1800 | 1人気 | 安藤勝己 | 1:55.3 | 上り37.3 | — | |
| 2 | 3歳新馬 | 京都 芝1600 | 2人気 | 小牧太 | 1:38.1 | 上り35.8 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父アドマイヤベガAdmire Vega | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| ベガ | トニービンTony Bin | |
| アンティックヴァリューAntique Value | ||
| 母マイワイルドフラワーMy Wild Flower | Topsider | Northern Dancer |
| Drumtop | ||
| Wildwook | Sir Gaylord | |
| Blue Canoe |
旅程 — この馬の物語
2003年生まれの黒鹿毛の牝馬。父アドマイヤベガ、母マイワイルドフラワー。主な勝ち鞍はマイルチャンピオンS・府中牝馬S。
輸入から十二年
1991年、一頭の繁殖牝馬がアメリカから運ばれてきた。マイワイルドフラワー、1986年生まれの鹿毛。父はトップサイダー、母はワイルドウック。米国とアイルランドで15戦2勝、走ったほうの経歴は地味である。ただ、母ワイルドウックが1971年に産んだ半姉ライドザトレイルズの仔が、1985年のブリーダーズカップマイルを勝ち、のちに北米のリーディングサイアーにまでなったコジーンだった。見どころは血統表のほうにあった。 繋養先は北海道早来町の社台ファーム、1994年の再編後はノーザンファーム。1992年の初仔から、産駒はなかなか大きな競走馬にならなかった。故障や不受胎で間の空く年もあった。半兄のジョイフルハート(父サクラバクシンオー)が新馬戦から11戦続けて連対して気を吐いた、その程度である。 2003年2月20日、9番仔が生まれた。父は種牡馬生活2年目のアドマイヤベガ。黒鹿毛の牝馬だった。輸入から12年目の仔である。 名は「ブルーメンブラット」。ドイツ語で花びらを指す言葉で、母マイワイルドフラワーの「フラワー」から連想したものだった。出資者を募るときのクラブの説明には、これは人気のあるイングリッシュ系スプレー薔薇の品種名でもあり、GIの舞台で大輪を咲かせてほしい、と書かれている。1口4万5000円、400口、総額1800万円。有限会社キャロットファームの持ち馬として、栗東の安藤正敏厩舎に入った。 2006年1月15日、京都の芝1600メートル、新馬戦。小牧太を背に2番人気で2着。13日後、同じ京都のダート1800メートルの未勝利戦を安藤勝己で勝ち上がった。
一番人気の一年
2月19日、京都のダート1400メートル。1番人気で出て、タイム差なしの2着。この日から手綱を取ったのが川島信二である。1982年生まれの23歳、2001年3月から安藤正敏厩舎に所属していた騎手だった。 以後、川島が乗り続ける。中山のフラワーカップは8番人気で3着。勝ったのはキストゥヘヴンで、2着がフサイチパンドラだった。桜花賞当日の忘れな草賞は1番人気で2着。5月7日の矢車賞は2着に1秒0——6馬身の差をつけて勝った。 5月21日、優駿牝馬。18頭立ての1枠1番、8番人気。三コーナーで一頭が競走を止めた。コイウタである。最内にいたブルーメンブラットは思うように進められず、9着に終わった。勝ったのはカワカミプリンセスだった。 夏の札幌はクイーンステークス6着。9月3日の大倉山特別は、芝1500メートルをレコードタイムで駆け抜けて1番人気に応えた。だが10月の秋華賞は8着。前を行っていたのは、またカワカミプリンセスである。秋の東京と阪神では条件戦で1番人気に推され、3着と2着。着差はどちらも0秒0だった。 勝ち切れない、という言い方をされる場所に、この馬はいた。
厩舎が消えた五月
2007年。京都の石清水ステークスは1番人気で4着、2月の斑鳩ステークスは重馬場を勝った。4月の阪神牝馬ステークスは5着。5月13日のヴィクトリアマイルは15番人気で8着。川島がこの馬に乗った13度目のレースであり、最後のレースになった。 その4日前、5月9日に安藤正敏が勇退届を出していた。1937年生まれ、1959年騎手デビュー、1979年開業。7月20日をもって調教師をやめるという届けである。管理馬は5月のうちに散り、ブルーメンブラットは同じ栗東の石坂正厩舎へ移った。川島信二の所属も5月31日で切れて、この騎手はフリーになる。13回乗って、重賞は一つも勝てなかった。 受け取った石坂正は1950年、佐賀の生まれ。大学を出て北海道の牧場に勤め、続かずに辞め、1978年にテンポイントの死を知って無性に牧場で働きたくなり、28歳で募集広告に応募し直した男である。厩務員、調教助手を経て、調教師免許は12回目の受験で取った。開業3年目の2000年、橋口弘次郎厩舎から開業祝いに転厩してきた準オープンのダイタクヤマトが、16頭立て16番人気でスプリンターズステークスを勝つ。重賞初勝利がGIだった。前年はヴァーミリアンとアストンマーチャンで五つのGI級を勝っている。 転厩してきた馬でGIを勝ったことのある調教師のもとへ、また一頭、転厩馬が来た。石坂は初対面の直感でこの馬はもっと走ると見て、だから急がなかった。7月7日、阪神のストークステークスは左下眼瞼部を裂傷して出走取消。ここで次を求めず、放牧に出す。夏を丸ごと使った。
東のユタカが乗る
10月21日、東京の白秋ステークス。5月のヴィクトリアマイル以来、5か月ぶりの実戦である。鞍上は吉田豊だった。 1975年、茨城県の生まれ。1994年に美浦の大久保洋吉厩舎からデビューし、3年目の暮れ、メジロドーベルで阪神3歳牝馬ステークスを勝った。重賞初勝利がGIである。翌年その馬でオークスと秋華賞、次の年にエリザベス女王杯。関西に武豊がいたころ、東のユタカと呼ばれた騎手だった。1998年のスプリンターズステークスでは、単勝1.1倍のタイキシャトルをマイネルラヴで負かしている。関東の騎手が、関西の厩舎の牝馬に呼ばれる。縁はこの日に始まった。 中団から追い出して2馬身半。5勝目でオープンに戻る。11月11日のオーロカップは後藤浩輝で1番人気に応え、追い込むシンボリグランを半馬身抑えた。12月16日の阪神カップは5番人気、クリストフ・ルメール。道中は外を回り、直線でしっかり伸びたが、スズカフェニックスに半馬身ほど、ジョリーダンスにクビ届かず3着。 乗り替わりが続き、届かないのも続いた。
クビとハナ
2008年2月3日、京都牝馬ステークス。ルメールで1番人気。外枠から控えて直線は外へ持ち出したが、好位で立ち回った馬たちに届かず4着だった。4月12日の阪神牝馬ステークスは後藤が戻ってきて、また1番人気。逃げるエイジアンウインズを外から追い詰めたが、クビ差だけ足りない。3着以下は3馬身離していた。 5月18日、東京、ヴィクトリアマイル。晴、芝は良。ウオッカ、ニシノマナムスメ、ベッラレイアに次ぐ4番人気。好スタートから好位につけ、直線半ばで内から抜け出して先頭に立った。だが観衆の視線はその後ろへ移る。中団で溜めていたウオッカが、坂上から外に持ち出してきたからだ。そしてウオッカの内から、もう一頭が伸びていた。エイジアンウインズである。 1着エイジアンウインズ、2着ウオッカ、3着ブルーメンブラット。ウオッカとはハナ差、その前のエイジアンウインズとは、さらに4分の3馬身あった。先に抜け出して、二頭に差された。 外を回れば届かない。内から抜け出しても差される。石坂はこの春の負け方を憶えていた。
出遅れが教えたこと
夏の間に一つ知らせが入っている。6月、旭川の北海道スプリントカップを、2歳上の半兄ジョイフルハートが武豊を背に勝った。7歳での重賞初制覇だった。 秋は10月19日、府中牝馬ステークスから始まる。桜花賞馬キストゥヘヴンと二冠牝馬カワカミプリンセスが1、2番人気を占め、ブルーメンブラットは4番人気。吉田豊が戻ってきた。 8枠16番。ゲートを出遅れた。後方に置かれた吉田は、しかし外へ回さなかった。内へ入れ、馬群の中の9番手で四コーナーを通過する。直線、逃げるアサヒライジングと、2番手から抜け出したカワカミプリンセスを目標に、馬と馬の間を割って伸びた。一頭だけ先に抜け出していたカワカミプリンセスを、ゴール前で捕まえる。半馬身。 重賞は11度目の挑戦だった。5歳の秋になって、初めて勝った。吉田にとっては、1998年にメジロドーベルで勝って以来の府中牝馬ステークスである。 石坂はこの一戦を、出遅れが偶然もたらした答えとして読んだ。外を回して届かなかった馬が、内を通ったら勝ったのだ。次はエリザベス女王杯かマイルチャンピオンシップか。距離を考えて京都の1600メートルを選び、吉田に、内を突けと伝えた。出走する18頭のうち15頭は、牡馬と騸馬だった。
最内、一頭ぶん
2008年11月23日、京都競馬場、発走15時40分。晴、芝は良。 パドックを回る馬体は、春の東京で走ったときより20キロ重かった。1番人気は、前走の毎日王冠でウオッカを差し切ったスーパーホーネット。ブルーメンブラットは4番人気である。 「末脚だけならヒケは取らない。その良さを生かすために、道中では折り合いに気をつけよう」[^1]——吉田はそう考えていた。 ゲートが開く。マイネルレーニアが飛ばして先頭に立ち、サイレントプライドが続いた。二ハロン目が10秒6。速い。吉田は行かない。馬群の中の、いちばん内へ入れる。三コーナー、前に十一頭。四コーナーもラチの内側を回った。前は壁である。 直線。先に抜け出したのはローレルゲレイロだった。外からはスーパーホーネットが伸びてきて、馬群を割ったファイングレイン、大外を追い込んだカンパニーを抑え、いったんは先頭に立ったかに見えた。京都の直線で人が見ていたのは、外の争いである。 内では、粘るローレルゲレイロと、下がってきたマイネルレーニアの間に、一頭ぶんの隙間が空いていた。吉田はそこへ入れた。 直線の半ばを過ぎる。ラチ沿いを走る馬の脚色だけが、変わらない。二頭の間を抜け、外の三頭がまとめて後ろになり、前に何もいなくなった。4分の3馬身だった。
出典:日本中央競馬会「第25回 マイルチャンピオンシップ(GI)レース結果」2008年11月23日、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/mile/result/mile2008.html 、閲覧日:2026年8月2日。
勝ったから、終わった
牝馬がマイルチャンピオンシップを勝つのは、1994年のノースフライト以来14年ぶりだった。時計は1分32秒6。吉田豊には2004年の阪神ジュベナイルフィリーズ以来4年ぶりのJRA・GIで、石坂正にはこの年2月のフェブラリーステークス以来のJRAのGIだった。 陣営は、負けた場合の予定を立ててあった。暮れの阪神カップを使い、翌春の高松宮記念を最後の一戦にする。だが勝ってしまった。GIを勝った馬をもう一度GIIに戻すのはどうかと思う、高松宮記念の1200メートルもこの馬のベストではない——石坂はそう言って引退を早めた。12月3日、競走馬登録が抹消される。24戦8勝。勝ったことが、この馬の競走生活を終わらせた。 翌年からノーザンファームで繁殖牝馬になり、12頭を産んだ。名にはドイツ語の花と葉が続く。クリーブラット、ブルーメンクローネ、ヴィルデローゼ、リンゲルブルーメ、フォラブリューテ。2021年に生まれたモーリス産駒には、花束を意味するシュトラウスという名がついた。この牡馬が2023年11月、東京スポーツ杯2歳ステークスを勝つ。産駒として初めての重賞だった。母のほうは、その年の8月末で繁殖を退いている。 吉田豊はそれからも乗り続けた。2017年12月、中山で落馬して頸椎を折り、1年3か月休んだ。復帰は43歳の春である。そして2022年3月にパンサラッサでドバイターフを勝ち、翌年2月にはサウジカップを勝った。46歳と47歳の海外GIだった。 京都の直線、内ラチ沿いに一頭ぶんだけ空いていた隙間を、あの日、4番人気の牝馬が通った。通り抜けた先には、もう走るレースが残っていなかった。
産駒 — 旅を継ぐ馬
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