名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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ブラックステアマウンテンのイメージビジュアル
ブラックステアマウンテンBlackstairmountain
Blackstairmountain

ブラックステアマウンテン

通算成績7戦3勝

獲得賞金6,556万円

生年月日 2005.03.08(平成17年)毛色 鹿毛セン

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ブラックステアマウンテンの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 JGⅠ中山グランドジャンプ 中山 障4250 8人気 R.ウォルシュ 4:50.5 上り13.7映像
9 OPペガサスジャンプS 中山 障3350 3人気 R.ウォルシュ 3:46.5 上り13.5
2 一般障害戦 アイルランド 障3600 ウォルシ 4:32.0
1 一般障害戦 アイルランド 障3200 4:04.6
2 一般障害戦 アイルランド 障3200 4:00.6
5 フレンズオブティペラ アイルランド 障3200 ウォルシ 4:13.1
1 一般戦 アイルランド 芝2400 2:50.6

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ブラックステアマウンテンの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
Imperial BalletSadler's WellsNorthern Dancer
Fairy Bridge
AmarandaBold Lad
Favoletta
SixhillsSabrehillDiesis
Gypsy Talk
MoidartElectric
Marypark
STORY

旅程 — この馬の物語

2005年生まれの鹿毛のせん馬。父Imperial Ballet、母Sixhills。

黒い階段の山

2005年3月8日、アイルランド生まれ。額に星を置いた鹿毛のせん馬である。生産者名義は Mrs J M Mullins、競走馬としてはスザンナ・リッチ(Susannah Ricci)の所有で走り、管理はカーロウ州ミュイン・ベーグ(Muine Beag/バゲナルズタウン)に厩舎を構えるウィリー・マリンズだった。 馬名は、レンスター地方のブラックステアズ山(Blackstairs Mountain)から採られている。カーロウ州とウェックスフォード州の境を南北に走る山塊の一峰で、標高732メートル。アイルランド語では Na Staighrí Dubha と呼ばれる。英語名を字義どおりに読めば、黒い階段。厩舎を置くカーロウ州の境に、その稜線は横たわっている。 父インペリアルバレエ(Imperial Ballet)はサドラーズウェルズの産駒で、アスコットのロイヤルハントカップを勝った平地馬だった。その産駒からはアベイ賞(Prix de l'Abbaye)を制したスプリンター、インペリアルビューティー(Imperial Beauty)も出ている。血統表の上では、跳ぶ血よりも走る血のほうが濃い。 四歳になった2009年、ナショナルハントフラット――障害を跳ばずに走る、障害馬の登竜門となる競走――を二つ勝ち、ゴールウェイでは通常の平地競走も勝った。跳ぶ前に、まず走れる馬だった。

二つのG1、そして三十六馬身

2010年春、パンチェスタウンのチャンピオンノヴィスハードル(Evening Herald Champion Novice Hurdle、G1)。ハードル――低く柔らかい障害を跳ぶ競走――に転じて手にした、最初の大きな勲章だった。マリンズはレース後、速い馬場がこの馬にことのほか向いていたと説明している。 ところが2010/11シーズンは五度ハードルに出て、一度も勝てなかった。陣営は、より大きく固い障害を跳ぶスティープルチェイスへ舵を切る。答えは早かった。2011年12月26日、レパーズタウンのレーシングポストノヴィスチェイス(Racing Post Novice Chase、G1)を、大きな障害へ移ってわずか二戦目で勝ち取っている。 そして翌春、チェルトナムフェスティバルのアークルチャレンジトロフィー。六頭立ての五着、勝ち馬から三十六馬身。その勝ち馬の名をスプリンターサクレという。のちにクイーンマザーチャンピオンチェイスを二度制することになる一頭と同じゲートに立ち、届かないという事実だけを持ち帰った。障害での勝ち鞍は、ここからしばらく途絶える。

十年分の招待状

中山グランドジャンプは、世界でもっとも賞金の高い障害競走である。マリンズ厩舎にも、その招待は届いていた。かつての看板チェイサー、フロリダパールは毎年招かれていたのだと、のちに息子のパトリック・マリンズ(Patrick Mullins)は語っている。それでも厩舎は動かなかった。中山の馬場は速い。三マイルを走る大柄で重いチェイサーではなく、もっと小柄な型の馬でなければ通用しない、というのが見立てだった。 マリンズ自身は、この挑戦を十年来温めてきたこと、それに見合う馬を見つけるまでに数年を要したことを、勝ったあとで明かしている。招待状は毎年来ていた。足りなかったのは、馬のほうだった。 2012年の夏、ブラックステアマウンテンは平地に戻って勝ち、秋に障害へ帰り、2013年1月にはコークの障害戦を勝った。アイルランドでG1を二つ勝ち、その後は小さな勝ち鞍を拾ってきた八歳のせん馬。十年分の招待状に対するマリンズの答えが、この馬だった。 3月、日本へ渡る。前哨戦のペガサスジャンプステークスでは日本の障害の流れにまるで乗れず、勝ったリキアイクロフネから遠く離れた九着。三番人気という評価は、その日で跡形もなく消えた。

最終障害

2013年4月13日、中山、障害4250メートル。単勝2640円の八番人気。前走の九着が、そのまま値札になっていた。 逃げたのはシゲルジュウヤク。ブラックステアマウンテンは好位で流れに乗り、起伏を上下し、ダートコースを何度も横切る日本独特の障害コースを、跳んでは下り、跳んでは登った。じわりと押し上げ、最終障害を越えたところで三番人気のシゲルジュウヤクをかわして先頭に立つ。外から迫るのはリキアイクロフネ――三週間前、自分が九着に沈んだレースの勝ち馬だった。その追撃を、二分の一馬身だけ前で抑え切った。4分50秒5。 鞍上はルビー・ウォルシュ。この馬に乗るために9ストーン13ポンド(約63キロ)まで体重を絞って来日したのだと、のちにパトリック・マリンズは述べている。帯同したのはマリンズの甥エメット・マリンズ(Emmet Mullins)と、ダーミッド・キーリング(Diarmuid Keeling)。パトリックは遠征の功の多くをこの二人に帰し、費用のかさむ旅に踏み切った馬主サイドにも謝意を述べている。ウォルシュにとってもマリンズにとっても、これがJRA初勝利だった。 外国で調教された馬の優勝は、2002年のセントスティーヴン(ニュージーランド)、2005年から三連覇したカラジ(オーストラリア)に次いで三頭目。欧州調教馬としては、これが初めてである。 十二年後、パトリック・マリンズはこう振り返っている。「ウィリーはあれを、自分の最も見事な仕事のひとつに数えると思う」[^1]

出典:Racing Post「'I think Willie would put it as one of his finest achievements' - Nakayama Grand Jump winner Blackstairmountain dies aged 20」2025年12月9日配信、https://www.racingpost.com/news/ireland/i-think-willie-would-put-it-as-one-of-his-finest-achievements-nakayama-grand-jump-winner-blackstairmountain-dies-aged-20-aCCe18z4kHFq/、閲覧日:2026年8月1日。

アントリムの野原

中山グランドジャンプが、ブラックステアマウンテンの最後のレースになった。アイルランドでG1を二つ、そして世界でもっとも賞金の高い障害戦を一つ。八歳の春に、跳ぶ仕事を終えている。 鞍上のウォルシュはその後もチェルトナムフェスティバルで勝ち続け、通算59勝で同フェスティバルの最多勝騎手となり、2019年5月、パンチェスタウンゴールドカップを勝った直後に引退を表明した。マリンズはいまもカーロウに厩舎を構え、チェルトナムフェスティバル史上もっとも多くの勝ち馬を送り出した調教師であり続けている。 ブラックステアマウンテン自身は、アントリムのスウィートウォール(Sweet Wall)で余生を送った。世話をしたジョージア・スタビントン(Georgia Stubington)によれば、当初は総合馬術に出す構想もあったが背にわずかな不安があり、軽い馬場馬術などを少しやってみた程度だったという。「そのあとは静かに野原へ退いて、うちにいたもう一頭の牝馬と仲良しになった」[^1]。二頭はとても幸せに暮らしていた、と彼女は言い添えている。 2025年12月9日、二十歳で世を去ったことが現地で報じられた。 名は、カーロウとウェックスフォードの境に横たわる山のものだった。生まれた土地の稜線の名を背負って海を渡り、遠い国の最終障害を越えて先頭に立った馬が、同じ島へ戻って野に還った。

出典:Racing Post「'I think Willie would put it as one of his finest achievements' - Nakayama Grand Jump winner Blackstairmountain dies aged 20」2025年12月9日配信、https://www.racingpost.com/news/ireland/i-think-willie-would-put-it-as-one-of-his-finest-achievements-nakayama-grand-jump-winner-blackstairmountain-dies-aged-20-aCCe18z4kHFq/、閲覧日:2026年8月1日。

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