名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

名馬録
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ビッグウルフのイメージビジュアル
ビッグウルフBig Wolf
Big Wolf

ビッグウルフ

通算成績29戦7勝

獲得賞金23,689万円

生年月日 2000.05.12(平成12年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ビッグウルフの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
園田金盃 園田 ダ2400 2人気 木村健
5 加古川くつした特別 園田 ダ1700 1人気 大山真吾 1:52.2
2 さぎ草特別 園田 ダ1870 1人気 大山真吾 2:02.2
11 OPサウジアラビアC 東京 ダ1600 10人気 安藤勝己 1:37.0 上り36.4
14 GIIIアンタレスS 京都 ダ1800 16人気 石橋守 1:51.3 上り37.3
6 GIIIマーチS 中山 ダ1800 14人気 木幡初広 1:53.1 上り38.7
9 OP仁川S 阪神 ダ1800 9人気 石橋守 1:52.3 上り37.5
9 GIII平安S 京都 ダ1800 14人気 石橋守 1:51.4 上り37.0
15 GIII中山金杯 中山 芝2000 15人気 岡部幸雄 2:01.0 上り37.6
7 OPベテルギウスS 阪神 ダ1800 6人気 安藤勝己 1:52.8 上り37.6
JBCクラシック 大井 ダ2000 蛯名正義 映像
3 GIマイルチャンピオンシップ 盛岡 ダ1600 5人気 板垣吉則 1:36.5
4 OPペルセウスS 中山 ダ1800 3人気 蛯名正義 1:53.8 上り38.4
6 OPKBC杯 小倉 ダ1700 2人気 福永祐一 1:48.6 上り40.5
3 GI帝王賞 大井 ダ2000 7人気 蛯名正義 2:04.8 上り37.0
3 OPブリリアントS 東京 ダ2100 4人気 蛯名正義 2:09.4 上り36.4
6 GI東京大賞典 大井 ダ2000 8人気 蛯名正義 2:05.7 上り40.4
16 GIII鳴尾記念 阪神 芝2000 13人気 武幸四郎 2:03.5 上り37.8
13 GIジャパンカップダート 東京 ダ2100 4人気 蛯名正義 2:12.4 上り40.5映像
2 GIダービーグランプリ 盛岡 ダ2000 2人気 武豊 2:08.3
1 GIジャパンダートダービー 大井 ダ2000 2人気 武豊 2:04.9 上り37.6
1 GIII名古屋優駿 名古屋 ダ1900 1人気 武豊 1:58.6
6 GIIIユニコーンS 東京 ダ1600 2人気 M.デムーロ 1:37.4 上り37.0
1 GIII兵庫チャンピオンシップ 園田 ダ1870 1人気 武豊 1:58.9
1 OP伏竜S 中山 ダ1800 1人気 M.デムーロ 1:54.1 上り40.6
1 OPヒヤシンスS 中山 ダ1800 2人気 M.デムーロ 1:53.0 上り37.7
6 GIIIきさらぎ賞 京都 芝1800 6人気 D.ボニヤ 1:50.4 上り36.0映像
1 飛梅賞 京都 ダ1800 2人気 武幸四郎 1:53.1 上り37.4
2 2歳500万下 阪神 ダ1400 3人気 武幸四郎 1:26.1 上り37.7
1 2歳新馬 阪神 ダ1400 3人気 蛯名正義 1:26.1 上り36.8

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ビッグウルフの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
アフリートAfleetMr. ProspectorRaise a Native
Gold Digger
Polite LadyVenetian Jester
Friendly Ways
ビッグモンロートニービンTony BinカンパラKampala
Severn Bridge
モルゲンロートマルゼンスキーMaruzensky
サンライトリバー
STORY

旅程 — この馬の物語

2000年生まれの黒鹿毛の牡馬。父アフリート、母ビッグモンロー。

母の勝負服

2000年5月12日、北海道新冠町の田渕牧場で黒鹿毛の牡馬が生まれた。父はアフリート。母はビッグモンローで、その父はトニービンである。 母から書いておきたい。ビッグモンローが走ったのは芝だった。栗東の中尾正厩舎に入り、有限会社ビッグの勝負服で、東京の芝1800メートルのカーネーションカップを勝っている。スイートピーステークスでは三着。二十一戦して四勝の、しっかり走る牝馬だった。 血をさかのぼると、話が急に古くなる。五代母は1962年の桜花賞を勝ったケンホウ。さらに上には帝室御賞典の勝ち馬が二頭並び、一族の出発点をたどると小岩井農場に輸入された牝馬フロリースカツプに行き着く。日本の競馬のいちばん深い層から、そのまま続いている牝系だった。 馬主は有限会社ビッグ。冠名を外せば、名に残るのは狼の一語だけになる。 息子は母と同じ厩舎へ預けられた。中尾正は1979年に栗東で厩舎を構えた調教師である。 2002年11月30日、阪神競馬場のダート1400メートル。蛯名正義が乗って三番人気だった。馬体重は430キロ。牡馬としては小さい。その小さな体が、二着に0秒6をつけて決勝線を過ぎた。デビュー戦の勝利である。

砂で三つ

二週間後の500万下は、サカラートに0秒1差の二着。年が明けた2003年1月11日、京都のダート1800メートル、飛梅賞を1秒2差で勝った。 一度だけ芝を試している。2月16日のきさらぎ賞、重馬場の京都で六着。勝ったのはネオユニヴァースで、この馬はその年の皐月賞と日本ダービーを勝つことになる。芝の一線級とは、そこで一度すれ違っただけだった。 翌週から砂に戻る。2月23日、中山のヒヤシンスステークス。一番人気はスシトレインに譲ったが、二着に九馬身をつけて勝った。4月6日の伏竜ステークスも、単勝1.5倍に応えている。 4月30日、園田競馬場。兵庫チャンピオンシップは中央と地方の三歳馬が争う交流重賞で、前日までの雨で馬場は不良になっていた。鞍上は武豊。この馬に乗るのは初めてだった。 道中の位置取りは、絶望的と書かれるほど後ろだった。そこから差し切って一着。園田の砂で、この馬は初めて重賞を手にした。

三強

6月7日、東京のユニコーンステークス。ダート1600メートルの重賞に二番人気で出て、六着に敗れた。勝ち馬から1秒6も離されている。その勝ち馬がユートピアだった。前年の全日本2歳優駿を勝った馬で、顔を合わせたのはこの日が初めてである。 十一日後、名古屋競馬場へ移った。名古屋優駿、ダート1900メートル、不良馬場。武豊が乗って一番人気に推され、1分58秒6で走った。コースレコードだった。 マイルで六着に沈んだ馬が、十一日後に1900メートルでレコードを出す。距離が延びるほど、この馬は良くなった。 この夏、三歳のダートには三頭の名が並んでいた。ユートピア。南関東の二冠馬ナイキアディライト。そして、四百四十キロに届かない小柄なアフリート産駒。三強と呼ばれた。

七月八日、大井

前日の雨が残っていた。大井のダート2000メートル、馬場は重。ジャパンダートダービーは、三歳の砂の頂点を決める一戦である。十三頭が枠に入った。 一番人気はユートピア。ひと月前、東京のマイルで完敗した相手である。ビッグウルフは二番人気だった。 ゲートが開く。ナイキアディライトが先手を取った。ユートピアは出際に躓き、立て直して二番手につける。武豊は動かない。五番手のまま、脚を溜めていた。 三コーナー。ユートピアが早めに動いた。逃げるナイキアディライトは譲らない。二頭は追い比べに入り、そのまま四コーナーを回っていく。前の二頭が削り合っている時間だけ、後ろの一頭は温存できる。 直線。残り二百メートルで、ユートピアナイキアディライトを競り落とした。抜け出しかける。決まったように見えた。その外から、黒鹿毛が来た。 そこからゴール板までは、ほとんど何も起こらない。並んだ。抜くでも抜かれるでもなく、二頭のまま最後の二百メートルが過ぎていった。 決勝線。ハナ差だった。 先に鼻先を出したのは、ビッグウルフである。中尾正は、距離が延びてこの馬の良さが出てきた、と話した。 その春、同じ勝負服はもう一つの頂点を取っている。4月19日の中山グランドジャンプを、同じ中尾厩舎のビッグテーストが勝っていた。一つの厩舎が、春に障害の頂点を、夏に砂の頂点を取った年だった。

勝てないまま

9月23日、盛岡のダービーグランプリ。三歳ダートのもう一つの頂点である。二番人気で臨み、今度はユートピアに0秒7の差をつけられて二着だった。大井で奪ったものを、盛岡で返した。 武豊がこの馬に乗ったのは、この四回きりである。兵庫チャンピオンシップ、名古屋優駿、ジャパンダートダービー、ダービーグランプリ。重賞の三勝と、頂点争いの二着が一つ。この馬の名を決めたのは、その四日だった。 秋から先は崩れた。11月29日、不良馬場の東京、ジャパンカップダートで十三着。12月14日、芝に戻した阪神の鳴尾記念は十六着。暮れの東京大賞典はスターキングマンの六着だった。 四歳の初戦は、6月まで来なかった。12日のブリリアントステークスで三着、月末の帝王賞はアドマイヤドンの三着。10月11日、盛岡のマイルチャンピオンシップ南部杯も三着で、勝ったのはまたユートピアである。三着が三つ。届きそうで、届かない。11月3日のJBCクラシックは出走を取り消した。 五歳の中央には、数字だけが残っている。1月5日の中山金杯は芝2000メートルで十五番人気十五着。鞍上の岡部幸雄は、この一か月半後に最後の騎乗を迎える人だった。1月の平安ステークスは単勝二百三十倍で九着、4月のアンタレスステークスは二百七倍で十四着、5月8日のサウジアラビアロイヤルカップは十一着。 この年、中央で六度走って、賞金は一円も持ち帰っていない。

園田へ帰る

2005年9月、園田競馬へ移籍した。馬主は竹本弘に替わり、管理は兵庫の渡邊幸生に移る。母子二代で通った栗東の厩舎を、そこで離れた。 10月13日、さぎ草特別。園田のダート1870メートルは、二年半前に兵庫チャンピオンシップを勝ったのと同じ距離である。一番人気に推され、ロードバクシンに0秒1届かず二着だった。11月10日の加古川くつした特別も一番人気で、五着。 12月1日、園田金盃。ダート2400メートル、十二頭立て、二番人気。鞍上は兵庫の木村健だった。 レースの途中で故障が出た。競走中止。左前脚の開放骨折で、予後不良と診断された。五歳だった。 二年七か月前、この馬はこの直線を、絶望的と書かれた位置から差し切って出ている。同じ砂の上で、今度は最後まで走り切れなかった。 中尾正は2009年2月、七十歳の定年で厩舎を閉じた。通算五百二十五勝。母を預かり、その息子で統一GIを勝った厩舎に、最後の一年だけ、この馬はいなかった。 四月の園田で、絶望的な位置から差し切った馬がいる。十二月の園田で、走り終えることのできなかった馬がいる。同じ一頭だ。そのあいだに挟まった七月の大井で、決まったはずの直線を外から破って出たのも、やはり同じ一頭だった。

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