名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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ビッグシーザーのイメージビジュアル
ビッグシーザーBig Caesar
Big Caesar

ビッグシーザー

通算成績23戦7勝

獲得賞金2596万円

生年月日 2020.03.10(令和2年)毛色 芦毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ビッグシーザーの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
4 GIIIアイビスSD 新潟 芝1000 4人気 荻野極 0:54.2 上り32.0映像
11 GI高松宮記念 中京 芝1200 10人気 西村淳也 1:07.4 上り33.7映像
9 GIIIオーシャンS 中山 芝1200 8人気 北村友一 1:07.4 上り34.0映像
12 GIIIシルクロードS 京都 芝1200 7人気 北村友一 1:08.6 上り32.9映像
9 GI高松宮記念 中京 芝1200 7人気 北村友一 1:08.9 上り35.1映像
1 GIII京阪杯 京都 芝1200 1人気 北村友一 1:07.7 上り33.7映像
1 LオパールS 京都 芝1200 6人気 田口貫太 1:07.4 上り33.9
6 GIIIキーンランドカップ 札幌 芝1200 5人気 坂井瑠星 1:08.3 上り34.5映像
6 OP青函S 函館 芝1200 1人気 鮫島克駿 1:09.2 上り34.3
3 GIII函館スプリントS 函館 芝1200 3人気 坂井瑠星 1:08.6 上り34.7映像
7 GI高松宮記念 中京 芝1200 9人気 吉田隼人 1:09.8 上り34.4映像
2 GIIIオーシャンS 中山 芝1200 2人気 坂井瑠星 1:08.2 上り34.2映像
1 L淀短距離S 京都 芝1200 1人気 坂井瑠星 1:08.6 上り34.3
5 GIII京阪杯 京都 芝1200 3人気 坂井瑠星 1:07.9 上り34.2映像
12 LオパールS 京都 芝1200 1人気 幸英明 1:09.1 上り35.2
10 GIIセントウルS 阪神 芝1200 1人気 幸英明 1:07.9 上り33.8映像
3 GIII葵S 京都 芝1200 1人気 幸英明 1:07.2 上り33.0映像
1 LマーガレットS 阪神 芝1200 1人気 幸英明 1:08.6 上り34.5
1 OP中京2歳S 中京 芝1200 1人気 幸英明 1:08.0 上り33.3
1 OP福島2歳S 福島 芝1200 1人気 酒井学 1:10.0 上り34.7
1 2歳未勝利 中京 芝1200 1人気 幸英明 1:07.9 上り34.4
2 2歳未勝利 小倉 芝1200 1人気 松山弘平 1:08.4 上り35.0
3 2歳新馬 小倉 芝1200 1人気 幸英明 1:08.7 上り35.2

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ビッグシーザーの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ビッグアーサー 鹿毛サクラバクシンオー 鹿毛サクラユタカオー
サクラハゴロモ
シヤボナ 鹿毛Kingmambo
Relish
アンナペレンナTale of EkatiTale of the Cat
Silence Beauty
Maria's StormMaria's Mon
バイユーストームBayou Storm
STORY

旅程 — この馬の物語

2020年生まれの芦毛の牡馬。父ビッグアーサー 鹿毛、母アンナペレンナ。主な勝ち鞍は京阪杯。

小倉の芦毛 ― レコードの初勝利

2022年8月21日、夏の小倉。芝1200mの新馬戦に、一頭の芦毛の牡馬が現れた。ビッグシーザー。父ビッグアーサー、母アンナペレンナ。手綱を取ったのは、ターフを三十年近く駆けてきたベテラン幸英明である。1番人気に推されたこの日は前を捉えきれず3着。だが、素質は隠しようがなかった。 続く9月4日の小倉・未勝利戦は松山弘平を背に2着。そして9月18日、中京の2歳未勝利戦を、今度は再び幸英明で――芦毛はコースレコードで走り抜けた。三戦目での初勝利。時計が、この馬の速さを黙って証明していた。

四連勝 ― アーサーの子、シーザーと名づけられて

勢いは止まらなかった。11月の福島2歳ステークスを酒井学で、12月の中京2歳ステークスを再び幸英明で、年明け2023年2月のマーガレットステークスも幸英明で――未勝利勝ちから数えて、破竹の四連勝。短距離のどの舞台に置かれても、ビッグシーザーは1番人気を背負い、そして応え続けた。 この快速は、血の約束でもあった。父ビッグアーサーは、2016年の高松宮記念をコースレコードで制した名スプリンター。その父は、日本の短距離史に君臨した快速の始祖サクラバクシンオーである。芦毛は父ではなく、母アンナペレンナ譲りの淡い色だった。母アンナペレンナの一族からは、祖母の半弟に佐賀記念を制したメテオロロジストが出ている。 名にも物語が畳み込まれていた。父の名は英国伝説の王アーサー。子は「ビッグ」の冠を継ぎ、ローマの英雄カエサル――シーザーの名を与えられた。馬名の意味は、ずばり『偉大なシーザー。英雄。』。母の名アンナペレンナもまた、古代ローマの女神の名である。王の子は、英雄と名づけられて走り出した。父が頂点に立った高松宮記念という山は、まだ地平の遠くにあった。

葵の綻び ― 止まった連勝

2023年5月27日、京都・葵ステークス。単勝1.7倍。四連勝の快速には、当然のような支持が集まった。だが、レースは思うにまかせない。ロケットスタートから逃げ込んだモズメイメイを、直線でついに捉えきれず3着。連勝は、ここで途切れた。 綻びは、秋にさらに広がる。9月のセントウルステークス、10月のオパールステークス。いずれも1番人気に推されながら、二桁着順の惨敗を喫した。かつてレコードを刻んだ脚が、掲示板にすら届かない。デビューから寄り添った幸英明との日々も、この不振の季節に一区切りを迎える。栄光の四連勝と、答えの出ない二桁着順が、同じ一頭の中で背中合わせになっていた。

乗り替わり ― 淀の復調と、父の山

手綱は坂井瑠星に託された。2023年11月の京阪杯は5着に終わったが、年明け2024年1月の淀短距離ステークスを危なげなく勝ち、3月のオーシャンステークスでは2着に好走する。芦毛は、確かに戻りつつあった。 そして2024年3月24日、初めてのGI・高松宮記念。舞台は中京・芝1200m――八年前、父ビッグアーサーがコースレコードで頂点に立った、まさにその場所だった。鞍上は吉田隼人。だが結果は7着。父が駆け上がった同じ坂を、息子はまだ登りきれない。血が指し示す山は、近くて遠かった。

帰還者の手綱 ― 京阪杯、重賞へ

2024年秋、ビッグシーザーは一つの手綱と出会う。北村友一。三年前、落馬で背骨や肩甲骨を折る大怪我を負い、一年以上をターフの外で過ごした帰還者だった。長い療養を経てレースに戻り、勝ち鞍を一つずつ積み直してきた男である。 10月、田口貫太を背にオパールステークスを6番人気で制して勢いをつけると、11月24日の京阪杯、鞍上に北村を迎えた。1番人気。逃げるウインカーネリアンを、ゴール前できっちりクビ差だけ差し切る。待望の、そして初めての重賞タイトルだった。デビューから二年以上、四連勝の栄光も二桁着順の屈辱もくぐり抜けた芦毛が、ようやく重賞の名を手にした瞬間だった。頂に手が届かなかった馬と、一度は競馬から遠ざけられた騎手が、同じ一つの勝利で報われた。

父の頂、三たび

残された目標は、はっきりしていた。父の頂――高松宮記念。 ビッグシーザーは、中京・芝1200mのその大舞台に、三度立った。2024年は7着、北村友一を背にした2025年は9着、そして西村淳也に手綱が替わった2026年は11着。父ビッグアーサーがコースレコードで駆け抜けた同じ直線を、息子は三度叩き、そのたび頂は遠ざかるように見えた。 だが、忘れてはならない。サクラバクシンオーから父ビッグアーサーへ、そして母アンナペレンナの淡い芦毛を纏ったこの馬へ――短距離の血は、日本一のスプリント王座を決める舞台に、三年続けて立ち続けた。届かなかったのではない。同じ山を、諦めずに登り続けたのだ。 そして2026年の夏、六歳の芦毛は、それまで一度も走ったことのない距離へ向かった。8月2日、新潟のアイビスサマーダッシュ。芝1000メートル、まっすぐな一本道である。デビューからの二十二戦は、新馬戦から高松宮記念まで、すべてが1200メートルだった。もっとも、血のほうはこの舞台をよく知っている。祖父サクラバクシンオーの産駒は、カノヤザクラが2008・09年、ベルカントが15・16年と、ここで連覇を重ねてきた一族である。 杉山晴厩舎へ移って二戦目、鞍上は荻野極。引いたのは大外枠だった。勝ったピューロマジックがJRAレコードを塗り替えた決着のなか、0秒7差の4着。シルクロードステークス12着、オーシャンステークス9着、高松宮記念11着と二桁が続いた年に、ようやく掲示板の内側へ戻ってきた。荻野極は、大外枠は良かった、スタートもきちんと出てくれた、ただ他馬とは初速が違った、と振り返り、スムーズならもっと差を詰められたはずだと言い添えた。 23戦7勝。京阪杯という重賞の一勝を核に、四連勝の輝きも、二桁着順の翳りも、六歳で挑んだ初めての一本道も、すべてを抱えた戦績である。父が駆け上がった中京の坂の頂には、まだ届いていない。それでもこの芦毛は、走る距離を二百メートル削ってまで、まだ登り口を探している。英雄の名を負った馬の夏は、終わっていない。

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