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ビッグアーサー
通算成績15戦8勝
獲得賞金2億9,981万円
生年月日 2011.03.18(平成23年)毛色 鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 6 | GIスプリンターズS | 中山 芝1200 | 8人気 | 福永祐一 | 1:07.8 | 上り33.6 | 映像 | |
| 10 | GI香港スプリント | シャティン 芝1200 | 1人気 | R.ムーア | 1:09.4 | — | 映像 | |
| 12 | GIスプリンターズS | 中山 芝1200 | 1人気 | 福永祐一 | 1:08.0 | 上り34.2 | 映像 | |
| 1 | GIIセントウルS | 阪神 芝1200 | 1人気 | 福永祐一 | 1:07.6 | 上り34.5 | — | |
| 1 | GI高松宮記念 | 中京 芝1200 | 1人気 | 福永祐一 | 1:06.7 | 上り33.4 | 映像 | |
| 5 | GIIIシルクロードS | 京都 芝1200 | 1人気 | M.デムーロ | 1:08.5 | 上り33.4 | 映像 | |
| 3 | GII阪神カップ | 阪神 芝1400 | 1人気 | 藤岡康太 | 1:21.6 | 上り34.6 | — | |
| 2 | GIII京阪杯 | 京都 芝1200 | 1人気 | 藤岡康太 | 1:07.4 | 上り32.8 | — | |
| 1 | OP夕刊フジ杯オパールS | 京都 芝1200 | 1人気 | 藤岡康太 | 1:06.7 | 上り33.2 | — | |
| 2 | GIIITV西日本北九州記念 | 小倉 芝1200 | 1人気 | 藤岡康太 | 1:07.5 | 上り33.4 | 映像 | |
| 1 | 水無月S | 阪神 芝1200 | 1人気 | 藤岡康太 | 1:08.1 | 上り33.4 | — | |
| 1 | 淀屋橋S | 阪神 芝1200 | 1人気 | 浜中俊 | 1:09.3 | 上り34.7 | — | |
| 1 | 岡崎特別 | 中京 芝1200 | 1人気 | 藤岡康太 | 1:08.6 | 上り33.9 | — | |
| 1 | 八代特別 | 小倉 芝1200 | 1人気 | 藤岡康太 | 1:07.9 | 上り34.3 | — | |
| 1 | 3歳未勝利 | 福島 芝1200 | 4人気 | 藤岡康太 | 1:09.5 | 上り35.3 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父サクラバクシンオーSakura Bakushin O | サクラユタカオー | テスコボーイTesco Boy |
| アンジェリカ | ||
| サクラハゴロモ | ノーザンテーストNorthern Taste | |
| クリアアンバーClear Amber | ||
| 母シヤボナSiyabona | Kingmambo | Mr. Prospector |
| Miesque | ||
| Relish | Sadler's Wells | |
| Reloy |
引退後・牧場での映像
ゴール板の先の時間旅程 — この馬の物語
2011年生まれの鹿毛の牡馬。父サクラバクシンオー、母シヤボナ。主な勝ち鞍は高松宮記念・セントウルS。
浦河の、痩せた土
2011年3月18日、北海道浦河町のバンブー牧場に、鹿毛の牡馬が生まれた。 牧場を興したのは、建設会社を営んでいた竹田辰一である。馬を買うだけでなく生産も手がけてみたい——その思いから1965年に浦河の牧場を買い、その管理を息子の春夫に託した。ミュージカルの演出家を志していた春夫が、翌年、五頭の繁殖牝馬から始めた牧場だった。土は痩せて酸化しやすく、雨が降ればぬかるみ、降らなければ乾く。馬産には最も不向きと言われたその土に手を入れ続けて、この牧場は1982年のダービー馬バンブーアトラス、1989年の菊花賞馬バンブービギン、安田記念とスプリンターズステークスを制したバンブーメモリーを送り出してきた。1994年に辰一が世を去ったあと、イギリス留学から戻った春夫の末子・辰紀が二代目に就き、2000年には秋華賞馬ティコティコタックが出ている。 父はサクラバクシンオー。21戦11勝、うち1400メートル以下では12戦11勝という極端な短距離馬で、スプリンターズステークスを連覇した。母シヤボナはアメリカで生まれ、イギリスで5戦して勝てないまま海を渡り、この牧場の繁殖牝馬になった牝馬である。母の父はKingmambo、母の母レリッシュはサドラーズウェルズの娘である。 父は、この仔が生まれてひと月半のち、2011年4月30日に死んだ。仔は翌2012年の北海道セレクションセールで1102万5000円の値がつき、白地に青の星を散らした中辻明の勝負服を着ることになる。登録された馬名の意味は、素っ気ない。「大きな+人名より」。冠名の「ビッグ」に、どの人物を指すのかは記されない名がひとつ。ビッグアーサー。
福島の未勝利戦と、消えた一年
2014年4月13日、福島の芝1200メートル、三歳未勝利戦。新馬戦の季節はすでに終わり、相手はレースを使われた馬ばかりだった。4番人気。鞍上は藤岡康太。二馬身半をつけて、初めての一戦を勝った。 管理する藤岡健一は、康太の父である。1979年、十八歳で栗東の宇田明彦厩舎に厩務員として入り、その年のうちに調教助手となった。宇田の死後は伊藤雄二、南井克巳の厩舎で助手を務め、調教師免許を取ったのは2001年、厩舎を開いたのは2002年11月。二十年を超える助手暮らしの果ての開業だった。手綱を取った康太は1988年12月生まれの次男で、兄の佑介も騎手だった。 だが、勝ったあとが長かった。輸送中に負った怪我は、競走生命に関わるほどのものだったという。次にゲートへ入るまで、十か月。この馬の三歳の一年は、そのまま空白になった。
五連勝
2015年2月28日、小倉の八代特別。十か月ぶりの二戦目を、1番人気に応えて二馬身半で勝つ。一か月後、中京の岡崎特別は稍重の馬場を中団から進み、上がり最速の脚で三連勝。四月の淀屋橋ステークスは単勝1.4倍、レースの途中で落鉄しながらクビ差で差し切った。六月の水無月ステークスは1.3倍、重賞勝ち馬二頭を相手に押し切って、五連勝。 すべて芝1200メートル、すべて1番人気。淀屋橋ステークスの浜中俊をのぞけば、鞍上はすべて康太だった。二歳戦を一度も走らないまま、四歳の二月から六月までの四か月で、この馬は条件戦を駆け上がった。
あと、半馬身
八月、小倉の北九州記念。初めての重賞を1番人気で迎え、中団から脚を伸ばしたが、前を行くベルカントを交わせずに二着。六戦目にして最初の黒星だった。 秋のスプリンターズステークスへ向かうはずが、出走が叶わない。賞金の順位は十六番目。優先出走権を持つ馬に枠を譲る形で、除外になった。仕切り直しの十月、京都のオパールステークスを三馬身差で圧勝する。十一月の京阪杯は1.5倍の支持を集めながら、前を行くサトノルパンをアタマ差捉えきれずに二着。暮れの阪神カップは、生涯でただ一度の1400メートルだった。ロサギガンティアとダンスディレクターの争いから一馬身半遅れて三着。初めて連対を外した。 この一戦が、康太を背に走った最後のレースになる。
中京、一分六秒七
五歳初戦のシルクロードステークスで、主戦の康太が降板した。手綱はミルコ・デムーロへ。中団から前に迫ったものの、前が止まらずに五着。三連敗である。賞金の額では次の高松宮記念に出走できるかどうかも分からず、出られなければ休養という話も出ていた。出走は叶い、鞍上は福永祐一に替わった。 福永は前年十月のスワンステークスで落馬して負傷し、この年の二月に復帰したばかりだった。高松宮記念は、彼にとって復帰後最初のGI騎乗である。 2016年3月27日、中京の芝1200メートル。ローレルベローチェがハナを奪い、外からハクサンムーン、内からミッキーアイルがその後ろに収まる。ビッグアーサーは少し離れた四番手を進んだ。直線、内を避けて外へ持ち出したローレルベローチェにハクサンムーンが迫り、その外からミッキーアイルが一気に抜け出す。さらにその外から伸びてきたのが、ビッグアーサーだった。二頭の叩き合いを四分の三馬身制して、先頭でゴール板を過ぎる。1分6秒7、コースレコード。 重賞をひとつも勝たないまま、いきなりGIを勝った馬だった。そして藤岡健一にとっては、厩舎を開いて十四年目で初めてのJRA・GI制覇だった。怪我で一年を失った馬と、怪我から戻ったばかりの騎手が、同じ日に頂へ立った。
一枠一番
半年の休養を挟んだ九月、阪神のセントウルステークス。58キロを背負って先手を取り、そのまま逃げ切って重賞二勝目を挙げた。短距離GIの春秋制覇が、現実の射程に入る。 10月2日、中山のスプリンターズステークス。単勝1.8倍。枠は前走と同じ一枠一番だった。ミッキーアイルらに前を譲って好位につけ、四コーナーから外へ持ち出そうとしたが、行き場を失う。前の馬に脚を引っ掛けてつまずき、見せ場のないまま馬群に沈んだ。十二着。デビュー以来、初めて掲示板を外した。 「最低の騎乗」[^1]。福永は自らの手綱をそう切り捨てた。父サクラバクシンオーが連覇した舞台での父子制覇は、この日に潰えた。 十二月、香港スプリント。福永が三日の阪神で落馬して右鎖骨を折り、手綱はライアン・ムーアに渡る。十三頭立ての十着。初めて海を渡った遠征が、そのまま最後の遠征になった。
出典:競馬ラボ「1番人気ビッグアーサーまさかの12着 福永「最低の騎乗…」」2016年10月2日配信、https://www.keibalab.jp/topics/31435、閲覧日:2026年7月28日。
二〇一七年十月一日
六歳の始動戦は、連覇のかかる高松宮記念のはずだった。左前脚の筋挫傷で回避する。夏を休養に充て、セントウルステークスでの復帰へ態勢を整えたが、今度は左前脚の蹄球部に痛みが出て、出走を見送った。 十か月ぶりの実戦は、ぶっつけで臨む中山のスプリンターズステークスになる。二戦目から国内では十二戦続けて一番人気を譲らなかった馬が、この日は8番人気だった。二、三番手から運び、直線で伸び切れずに六着。1分7秒8、上がり33秒6。勝ったのは前年と同じレッドファルクスだった。 五日後の10月6日付で、競走馬登録が抹消された。15戦8勝。獲得賞金2億9981万1000円。
新ひだかの丘へ
2018年、新ひだか町のアロースタッドで種牡馬になった。初年度の産駒は126頭が登録される。2021年7月17日、福島の6レースでウインモナークが勝ち、産駒の初勝利が記録された。 「うちにいてG1も勝ってくれた馬だから、思い入れは強いよ」[^1]。産駒がデビューを迎えた夏、藤岡健一はそう話している。ほかの厩舎の産駒を見てもよく似ている、筋肉がしっかりして早い時期から走れそうだ、とも。 見立てのとおりだった。種付料は100万円から始まり、2023年に150万円、2024年には300万円まで上がる。2026年は150万円。丘の上で、父の速さを配り続けている。
出典:中日スポーツ・東京中日スポーツ「ビッグアーサー、藤岡厩舎期待の新種牡馬 2016年の高松宮記念V、負傷で逃した連覇…その思いは産駒に」2021年6月15日配信、https://www.chunichi.co.jp/article/272548、閲覧日:2026年7月28日。
アーサーの一族
トウシンマカオ。2019年に生まれたこの栗毛は、2022年と2023年の京阪杯、2024年のオーシャンステークス、そして同じ年のセントウルステークスを勝った。父が逃げ切ったのと同じ重賞である。その秋のスプリンターズステークスでは二着に入り、翌2025年の高松宮記念は四着、五月の京王杯スプリングカップを制して重賞五勝目を挙げた。2025年11月に登録を抹消され、2026年から父と同じアロースタッドに立っている。 ほかにブトンドールが2022年の函館2歳ステークス、ビッグシーザーが2024年の京阪杯、カンチェンジュンガが2025年の阪急杯とセントウルステークスを勝った。ビッグシーザーを生産したのは、父と同じ浦河のバンブー牧場である。 母シヤボナは、その後も仔を産み続けた。半弟のセキフウは2021年の兵庫ジュニアグランプリと2023年のエルムステークスを勝ち、2024年のフェブラリーステークスで三着に入って、いまは同じアロースタッドで種牡馬になっている。妹の一頭には、アーサーズシスターという名がついた。どの人物を指すとも記されなかった名は、一族の名になった。 2024年4月10日、藤岡康太が亡くなった。六日、阪神競馬の第7競走でのレース中の落馬による事故だった。三十五歳。デビューから続いた五連勝を、淀屋橋ステークスの一戦を除いて背で支えた手綱であり、父の厩舎に初めてのGIをもたらした馬の、最初の相棒だった。 ビッグアーサーは十五歳になった。新ひだかの丘には、この馬と、半弟と、息子が繋養されている。浦河の痩せた土から出た鹿毛が走ったのは十五戦、うち十四戦が芝1200メートルだった。中京の直線で示した一分六秒七が、いまも毎年、丘から送り出されていく。
産駒 — 旅を継ぐ馬
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