名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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ベラジオオペラのイメージビジュアル
ベラジオオペラBellagio Opera
Bellagio Opera

ベラジオオペラ

通算成績14戦6勝

獲得賞金111,457万円

生年月日 2020.04.07(令和2年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
ベラジオオペラの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
2 GI香港カップ シャティン 芝2000 2人気 横山和生 映像
2 GI宝塚記念 阪神 芝2200 1人気 横山和生 2:11.6 上り36.4映像
1 GI大阪杯 阪神 芝2000 2人気 横山和生 1:56.2 上り34.1映像
4 GI有馬記念 中山 芝2500 3人気 横山和生 2:32.1 上り35.5映像
6 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 4人気 横山和生 1:57.7 上り33.7映像
3 GI宝塚記念 京都 芝2200 5人気 横山和生 2:12.4 上り34.8映像
1 GI大阪杯 阪神 芝2000 2人気 横山和生 1:58.2 上り34.9映像
2 GII京都記念 京都 芝2200 1人気 横山和生 2:12.2 上り34.6映像
1 GIIIチャレンジカップ 阪神 芝2000 3人気 横山和生 1:58.8 上り34.7映像
4 GI東京優駿 東京 芝2400 9人気 横山和生 2:25.2 上り33.0映像
10 GI皐月賞 中山 芝2000 3人気 田辺裕信 2:02.4 上り38.7映像
1 GIIフジTVスプリングS 中山 芝1800 2人気 横山武史 1:48.9 上り35.7映像
1 セントポーリア賞 東京 芝1800 1人気 横山武史 1:48.0 上り33.9
1 2歳新馬 阪神 芝1800 3人気 D.レーン 1:48.0 上り33.6

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
ベラジオオペラの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ロードカナロアLord KanaloaキングカメハメハKing KamehamehaKingmambo
マンファスManfath
レディブラッサムStorm Cat
サラトガデューSaratoga Dew
エアルーティーンハービンジャーHarbingerDansili
Penang Pearl
エアマグダラサンデーサイレンスSunday Silence
エアデジャヴー
STORY

旅程 — この馬の物語

2020年生まれの鹿毛の牡馬。父ロードカナロア、母エアルーティーン。主な勝ち鞍は大阪杯・フジTVスプリングS・チャレンジC。

歌劇の名 ― 短距離の父と欧州の母

ベラジオオペラ。冠名「ベラジオ」に、歌劇(オペラ)を重ねた名だ。馬主ベラジオレーシングの冠の下に並ぶ一頭として、この鹿毛はその名を与えられた。 2020年4月7日生まれ。父はスプリント王ロードカナロア――香港のスプリントGIを連覇し、芝1200mの世界を制した快速馬で、同じ父からは芝GIを九つ勝つ牝馬アーモンドアイも出ている。母はエアルーティーン。その父は、キングジョージを11馬身差で制した欧州の盾ハービンジャーだ。短距離の電光と、欧州の重厚なスタミナ。配合だけを見れば、どの距離で最も強くなるのか、判じがたい血だった。 母の一族には底力が眠っていた。2代母エアマグダラの全姉は2005年の秋華賞を制したエアメサイア、全兄はアメリカジョッキークラブカップを勝ったエアシェイディ。GIの女王を出した牝系である。 預けられたのは栗東・上村洋行厩舎。570勝を挙げて鞍を降りた元騎手が2019年に開いた、まだ重賞もGIも持たない若い厩舎だった。歌劇の幕は、無名のステージから上がろうとしていた。

兄弟の分かれ道 ― 三歳の春

2022年11月、阪神の新馬戦をダミアン・レーンで勝ち上がる。明けて3歳、セントポーリア賞、フジテレビ賞スプリングステークスと、横山武史を背に連勝した。スプリングステークスは、上村厩舎にとって開業以来初めての重賞タイトルである。順調そのものだった。 だが、クラシックで道が分かれる。武史が選んだ相棒は、同じ世代のソールオリエンス――のちに皐月賞を制する怪物だった。ベラジオオペラの皐月賞の手綱は、田辺裕信に託される。好スタートから2番手で運んだものの、勝負どころで余力を失い、10着に沈んだ。デビューから3連勝で来た馬の、これが初めての黒星だった。 続く日本ダービー。鞍上は、武史の兄・横山和生に替わる。9番人気の低評価だった。だが中団から伸びた末脚はメンバー最速。タスティエーラソールオリエンスが先頭で叩き合う、その後ろから猛然と差し込み、4着まで押し上げた。府中で横山家の兄弟がそれぞれの一頭を駆った日――弟の馬が2着、兄の馬が4着。勝ち負けには届かなくとも、和生はこの手応えを手放さなかった。ここから先、この馬の背には、ずっと長兄が座り続ける。

重賞からGIへ ― 大阪杯制覇

ダービーのあと長い休みを取り、暮れのチャレンジカップ(GIII)で復帰すると、和生を背にきっちり勝ち切った。重賞初制覇。短距離の父と欧州の母を継いだ脚は、阪神の2000mで最も冴えた。年が明けて京都記念は1番人気で2着に惜敗したが、力はもう重賞の上位で安定していた。 2024年3月31日、大阪杯。逃げるスタニングローズを見て、和生はベラジオオペラを押して2番手に取りつけた。馬場を読み、前めの位置を取りにいく積極策である。直線、外からローシャムパークが並びかける。合わせてベラジオオペラもピッチを上げ、内のルージュエヴァイユ、外のステラヴェローチェも伸びてくる大接戦を、クビ差で抑え込んだ。GI初制覇。570勝の騎手から調教師に転じた上村洋行が、初めて手にした大レースだった。 無名の厩舎の馬が、阪神の2000mに、自分の城を築いた一日だった。

春の王、夏の影 ― 届かなかった頂

城を得た馬の前に、しかし、ほかのGIは高い壁として立ち続けた。 2024年の夏、宝塚記念は3着。秋の天皇賞(秋)は6着、暮れの有馬記念は4着。いずれも掲示板を外さず上位に食い込みながら、あと半歩が出ない。のちに上村洋行は、この馬の体質をこう明かしている。「暑さに弱く、そこだけ仕上げが難しかったですけど、それ以外は確実に走ってくれました」[^1]。夏に行われる宝塚記念は、春に最も輝く馬には分の悪い舞台だった。 弱いのではない。どのGIでも崩れず、確実に賞金を持ち帰る。ただ、大阪杯のほかでは、栄冠のすぐ手前で足踏みが続いた。その足踏みが、かえってこの馬の輪郭を際立たせていく――一つの城だけは、決して譲らない馬だ、と。

出典:デイリースポーツ 2025年12月17日配信、閲覧日:2026年6月25日。

連覇 ― レコードの春

そして春が、また巡ってくる。 2025年4月6日、大阪杯。好位の内で折り合うと、直線で堂々と抜け出し、2着ロードデルレイに1馬身差をつけて押し切った。勝ち時計1分56秒2は、コースレコードを1秒も塗り替える数字。大阪杯の、史上初の連覇だった。 横山和生は振り返る。「今日は着差以上の完勝というか、すごく強い内容で走りきってくれたので、馬には頭が下がる思いです」[^1][^2]。馬に語りかけ、流れを読み、ためらわずに勝ちに行く――その口調を、周囲は父・横山典弘に重ねた。長兄は、父の競馬に手が届きつつあった。一頭の堅実な鹿毛が、その背を押していた。

出典:ORICON NEWS「大阪杯 横山和生騎手『着差以上の完勝』ベラジオオペラがコースレコードでV」2025年4月6日配信、閲覧日:2026年6月25日。/Number「大阪杯連覇を導いた口調と上村厩舎の積極采配」2025年配信、閲覧日:2026年6月25日。

追いつきそうで、追いつかなかった ― 二つの二着

連覇の勢いのまま、初夏の宝塚記念へ。1番人気に推された。だが、武豊の駆るメイショウタバルが逃げ、直線で後続を突き放す。ベラジオオペラは懸命に追ったが、前との差は詰まるどころか開き、3馬身差の2着。春の王にとって、初夏の宝塚は二年続けて分の悪い舞台だった。 秋を休養に充て、陣営が選んだ最後の舞台は、12月の香港・シャティンだった。香港カップ。立ちはだかったのは、この地の英雄ロマンチックウォリアー――前人未到の大会4連覇を狙う、現役最強の一頭である。ベラジオオペラは最後まで食らいついたが、1馬身3/4だけ届かない。2着。 「追いつきそうで、追いつかなかった」[^1]。横山和生の言葉が、この馬の戦いぶりをそのまま言い表していた。世界の頂のすぐ隣で、最後まで堅実に、誇り高く走り切った、ラストランだった。

出典:サンケイスポーツ 2025年12月14日配信、閲覧日:2026年6月25日。

立役者 ― 牧場へ

2025年12月24日、ベラジオオペラは競走馬登録を抹消された。14戦6勝、獲得賞金は11億円を超えた。向かった先は、北の安平町、社台スタリオンステーション。父ロードカナロアや、かつてこの地で生きた名馬たちの隣で、種牡馬としての第二の生を始める。 引退に際し、上村洋行はこう語っている。「うちの厩舎をここまでしてくれた立役者です」[^1]。重賞もGIも持たなかった若い厩舎は、この一頭とともに、大阪杯を二度勝つ厩舎になった。立役者――舞台の中心を担う、主役を指す言葉である。歌劇の名を負った馬は、その名の通り、一つの厩舎の物語の主役を務め上げた。 華やかなGIを次々に攫う馬ではなかった。大阪杯という一つの城を二度まで守り、ほかの大舞台では栄冠のすぐ手前で何度も足を止めた。それでも崩れずに走り続けたその堅実さこそが、長兄・横山和生の競馬を映し、無名だった厩舎を押し上げたのだ。 幕が下りる。だが歌劇は、血の中で次の幕を待っている。社台の牧場で草を食む鹿毛が、いつか自分を超える歌い手を送り出す日を――旅は、まだ途中だ。

出典:デイリースポーツ 2025年12月17日配信、閲覧日:2026年6月25日。

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