名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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アスクビクターモアのイメージビジュアル
アスクビクターモアAsk Victor More
Ask Victor More

アスクビクターモア

通算成績12戦4勝

獲得賞金34,527万円

生年月日 2019.04.01(令和元年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
アスクビクターモアの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
11 GI宝塚記念 阪神 芝2200 4人気 横山武史 2:12.3 上り36.5映像
11 GI天皇賞(春) 京都 芝3200 4人気 横山武史 3:18.0 上り36.7映像
9 GII日経賞 中山 芝2500 1人気 田辺裕信 2:39.4 上り38.2映像
1 GI菊花賞 阪神 芝3000 2人気 田辺裕信 3:02.4 上り36.9映像
2 GII朝日セントライト記念 中山 芝2200 1人気 田辺裕信 2:11.8 上り35.0映像
3 GI東京優駿 東京 芝2400 7人気 田辺裕信 2:22.2 上り35.3映像
5 GI皐月賞 中山 芝2000 6人気 田辺裕信 2:00.1 上り35.3映像
1 GII報知弥生ディープ記念 中山 芝2000 3人気 田辺裕信 2:00.5 上り35.2映像
1 3歳1勝クラス 中山 芝2000 1人気 田辺裕信 2:01.9 上り34.1
3 LアイビーS 東京 芝1800 1人気 戸崎圭太 1:49.4 上り34.2
1 2歳未勝利 中山 芝1800 2人気 戸崎圭太 1:49.1 上り34.1
3 2歳新馬 東京 芝1800 1人気 戸崎圭太 1:48.5 上り33.8

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
アスクビクターモアの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday SilenceHalo
Wishing Well
ウインドインハーヘアWind in Her HairAlzao
Burghclere
カルティカKarticaRainbow QuestBlushing Groom
I Will Follow
Cayman SunsetNight Shift
Robinia
STORY

旅程 — この馬の物語

2019年生まれの鹿毛の牡馬。父ディープインパクト、母カルティカ。主な勝ち鞍は菊花賞・報知弥生ディープ記念。

より多くの勝利を ― 名と血

血は、確かなものだった。母カルティカはフランスで走った牝馬で、その一族から半姉ケマーが海を渡り、ロイヤルアスコットのコロネーションステークスとロートシルト賞、英仏のGIを二つ勝っている。父はディープインパクト。社台ファームに2019年4月1日、一頭の鹿毛が生まれた。廣崎利洋と吉田照哉が分け合って持ち、冠名「アスク」に「ビクターモア」を継いだ。勝者(Victor)に、もっと(More)を重ねた名――より多くの勝利を、という願いである。 2021年6月26日、東京の新馬戦。戸崎圭太を背に3着。9月の未勝利を勝ち上がり、10月のアイビーステークスは3着。素質を買われながら、まだタイトルとは縁のない一頭だった。

田辺裕信、主戦になる

年が明けて2022年1月5日、中山の3歳1勝クラス。鞍上が田辺裕信に替わった。福島県二本松市に生まれた田辺は、この年三十八歳。GIの勝ち鞍はあっても、クラシックの栄冠にはまだ手が届いていない。 その一戦を1番人気で危なげなく勝つと、3月の弥生賞ディープインパクト記念へ進む。3番人気、前々で運んで抜け出し、重賞を初めて手にした。ここから、田辺とアスクビクターモアの旅が本格的に動き出す。

春、世代の最上位と互角に

4月の皐月賞。6番人気の評価に対し、内から前に付けて粘り、5着に踏みとどまる。勝ったのはジオグリフ、2着に同世代の怪物イクイノックス。力の差というより、位置取りとひと押しの差だった。 5月29日の東京優駿。7番人気。前々で運んだアスクビクターモアは、直線でいったん先頭をうかがう。だが府中の長い直線で、外からドウデュースイクイノックスが伸びてきた。二頭に交わされて3着。ダービーレコードで走り抜けた勝ち馬から、わずかの差だった。人気を裏切って世代の最上位と互角に渡り合ったこの一戦が、秋への確かな布石になる。

菊、レコードの三千メートル

京都競馬場の改修で、その年の菊花賞は阪神の芝3000mに置かれた。9月のセントライト記念2着から駒を進めたアスクビクターモアは2番人気。 セイウンハーデスが刻んだ前半の流れは速く、田辺はその2番手を追走した。抑えるのではなく、自ら動く。3コーナーから4コーナーの中間で先頭に立つと、追いすがる7番人気ボルドグフーシュを、ハナ差だけ抑え込んだ。時計は3分02秒4、コースレコード。 GI初制覇。そして田辺裕信にとっては、初めてのクラシックの栄冠だった。福島県出身の騎手がクラシックを勝ったのは、これが初めてのことでもあった。レース後、田辺はこの馬を「一戦一戦パワーアップしているのを感じ取れる馬」と評している[^1]。新馬から菊まで、ほんとうに一段ずつ登ってきた馬だった。

出典:テレ東スポーツ「【菊花賞】アスクビクターモア「さあ、かかってこい!」こだわり抜いた先行策」2022年10月23日配信、https://www.tv-tokyo.co.jp/sports/articles/2022/10/026478.html、閲覧日:2026年7月18日。

古馬の壁、途切れた春

明けて4歳。2023年の始動戦、日経賞は1番人気に推されたが9着に沈む。3200mの天皇賞・春は横山武史に手綱が渡って11着、6月の宝塚記念も11着。菊のレコードを刻んだ脚は、この春、どうしても伸びてこなかった。立て直しのため、長い休養に入る。もう一度、前々で運ぶ姿が見られるはずだった。

八月の別れ

2023年8月、報せは突然だった。放牧先で熱中症による多臓器不全を発症し、アスクビクターモアは息を引き取った。まだ4歳。菊花賞のゴールから、わずか十か月後のことだった。 より多くの勝利を、と名づけられた馬が残したのは、12戦4勝。京都の代わりに阪神で刻んだ、一本のコースレコード。その一勝で、二本松の騎手に初めてのクラシックを贈った。 そして2026年6月29日、この馬を送り出した調教師・田村康仁が、63歳で世を去った。追い切りに一切の妥協を許さなかった厳しい人が、アスクビクターモアの急死のときには人目もはばからず涙していたと、担当記者は書き残している[^1]。育てた人も、走った馬も、いまはもういない。 残された数字と、あの日の映像だけが、秋の三千メートルを繰り返し語る。速い流れの2番手で、抑えずに、自ら動いていった一頭の鹿毛のことを。

出典:デイリースポーツ(刀根善郎)「記者が見た田村師とは アスクビクターモアの急死に涙、高かったスタッフへの要求水準」2026年6月30日配信、閲覧日:2026年7月18日。

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