名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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アポロケンタッキーのイメージビジュアル
アポロケンタッキーApollo Kentucky
Apollo Kentucky

アポロケンタッキー

通算成績37戦9勝

獲得賞金35,733万円

生年月日 2012.02.02(平成24年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
アポロケンタッキーの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
8 JpnⅡ日本テレビ盃 船橋 ダ1800 3人気 戸崎圭太 2:05.9 上り50.0
13 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 7人気 戸崎圭太 2:08.5 上り40.8
3 JpnⅠかしわ記念 船橋 ダ1600 7人気 戸崎圭太 1:40.8 上り37.6
2 JpnⅡダイオライト記念 船橋 ダ2400 5人気 戸崎圭太 2:38.1 上り38.5
4 JpnⅠ川崎記念 川崎 ダ2100 4人気 戸崎圭太 2:15.8 上り39.9
10 GI東京大賞典 大井 ダ2000 8人気 O.マーフィー 2:08.4 上り42.0
14 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 13人気 小牧太 1:51.8 上り36.7映像
4 JpnⅡ浦和記念 浦和 ダ2000 2人気 J.モレイラ 2:07.1 上り38.6
13 GIJBCクラシック 京都 ダ1900 4人気 M.デムーロ 1:58.5 上り38.1
2 JpnⅡ日本テレビ盃 船橋 ダ1800 2人気 J.モレイラ 1:52.9 上り36.6
11 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 5人気 内田博幸 2:06.5 上り39.1
2 JpnⅡダイオライト記念 船橋 ダ2400 2人気 内田博幸 2:35.1 上り40.6
2 JpnⅠ川崎記念 川崎 ダ2100 4人気 内田博幸 2:15.1 上り37.1
4 GI東京大賞典 大井 ダ2000 6人気 内田博幸 2:05.5 上り37.0
GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 内田博幸 映像
8 JpnⅠJBCクラシック 大井 ダ2000 2人気 内田博幸 2:06.7 上り39.4映像
1 JpnⅡ日本テレビ盃 船橋 ダ1800 4人気 内田博幸 1:52.9 上り37.1
5 JpnⅠ帝王賞 大井 ダ2000 2人気 内田博幸 2:05.8 上り38.8
9 GIドバイワールドカップ メイダン ダ2000 5人気 C.ルメール 映像
1 GI東京大賞典 大井 ダ2000 5人気 内田博幸 2:05.8 上り36.1
5 GIチャンピオンズカップ 中京 ダ1800 7人気 松若風馬 1:50.5 上り36.9映像
1 GIIIみやこS 京都 ダ1800 4人気 松若風馬 1:50.1 上り36.2
8 OPブラジルカップ 東京 ダ2100 1人気 戸崎圭太 2:10.3 上り37.9
3 GIIIシリウスS 阪神 ダ2000 4人気 和田竜二 2:01.7 上り36.1
1 OPブリリアントS 東京 ダ2100 1人気 戸崎圭太 2:10.4 上り38.3
1 OP仁川S 阪神 ダ2000 1人気 小牧太 2:04.3 上り36.2
1 金蹄S 東京 ダ2100 1人気 田辺裕信 2:10.4 上り36.7
2 晩秋S 東京 ダ2100 3人気 浜中俊 2:10.2 上り36.8
1 3歳以上1000万下 東京 ダ2100 2人気 戸崎圭太 2:12.1 上り37.2
10 鳴滝特別 京都 芝2200 8人気 和田竜二 2:13.1 上り35.4
9 OP青竜S 東京 ダ1600 7人気 和田竜二 1:37.9 上り36.5
1 3歳500万下 中山 ダ1800 1人気 和田竜二 1:53.7 上り38.9
4 3歳500万下 阪神 ダ1800 2人気 和田竜二 1:51.5 上り35.6
1 2歳未勝利 阪神 ダ1800 3人気 和田竜二 1:52.3 上り37.0
2 2歳未勝利 京都 ダ1800 3人気 和田竜二 1:55.0 上り38.0
5 2歳未勝利 京都 芝1400 2人気 松山弘平 1:22.6 上り35.1
3 2歳未勝利 京都 芝1600 2人気 和田竜二 1:35.0 上り34.0
2 2歳新馬 京都 芝1400 2人気 和田竜二 1:21.4 上り34.8

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
アポロケンタッキーの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
LangfuhrDanzigNorthern Dancer
Pas de Nom
Sweet Briar TooBriartic
Prima Babu Gum
Dixiana DelightGone WestMr. Prospector
Secrettame
Lake LadySalt Lake
Slinkylady

引退後・牧場での映像

ゴール板の先の時間
STORY

旅程 — この馬の物語

2012年生まれの鹿毛の牡馬。父Langfuhr、母Dixiana Delight。主な勝ち鞍は東京大賞典競走・みやこS。

アメリカの州の名を借りて

2012年2月2日、アメリカで生まれた。生産者はDoug Branham。父Langfuhrはカナダ・オンタリオ産で、1996年のヴォスバーグステークス、翌97年のメトロポリタンハンデキャップとカーターハンデキャップを勝った快速のダンチヒ系である。母Dixiana Delightは2005年生まれ、その父はGone West。米国の砂ではさして珍しくもない配合で、母の他の産駒に日本の競馬場を走った馬はいない。 海を渡り、アポロサラブレッドクラブの勝負服――黒に赤袖、黄の鋸歯形――を着ることになった。冠名の「アポロ」に足されたのは、アメリカの州の名がひとつ。ケンタッキー。血にも名にも、特別な物語は用意されていなかった。 栗東・山内研二厩舎に入り、2014年10月11日、京都の芝1400メートルの新馬戦でデビューする。和田竜二を背に2番人気で2着。続く2戦も芝を使われたが、勝ち上がることはできなかった。

砂と、三十キロの筋肉

初めてのダートは11月22日、京都の1800メートル。クルーガーの2着に敗れたが、走りは明らかに違っていた。次のダート戦、12月21日の阪神は不良馬場。ここで初勝利を挙げる。 担当が富岡潤調教助手に移ったのは、デビューから2、3戦したころだった。背丈だけはあるのに幅がなく、当時の馬体重は520キロから530キロ。そこから馬は勝手に育っていった。特別なことをしたわけでもないのに、走るたび、休むたびに体が増える。やがて競馬で560キロを超えるようになる。30キロ近くが筋肉に変わった計算になった。 もっとも、中身は体つきに似合わなかった。「ビビリで気がちっちゃいんです」[^1]と富岡は言う。夜、運動をしているとバイクのライトを異常に怖がった。何が怖いのか、人間にはついに分からなかった。 3歳の2015年は、中山の500万下を勝ち、オープンの青竜ステークスで9着。秋にもう一度だけ芝を試して鳴滝特別10着。東京のダート2100メートルに戻って1000万下を勝ち、昇級初戦の晩秋ステークスはモズライジンにハナ差の2着だった。

出典:競馬ラボ「【アポロケンタッキーの富岡潤調教助手】アポロケンタッキー2つ目のビッグタイトルから再びドバイへ!(後編)」2017年10月29日配信、https://www.keibalab.jp/column/interview/1686/、閲覧日:2026年7月27日。

三連勝 ― 押し切るという才能

4歳になった2016年、東京の金蹄ステークスで1番人気に応え、センチュリオンを4馬身突き放した。3月の仁川ステークス、5月のブリリアントステークスもいずれも1番人気。三連勝で、オープンの階段を一気に上がっていった。 富岡がこの馬の最良の一戦として繰り返し挙げるのは、その中の仁川ステークスである。相撲でいえば横綱の押し切りで、スピードでもパワーでも相手を圧倒していた、と。成長に体が追いつかず、歩様に硬さが出ていた時期でもあった。それでも押し切ってしまう馬だった。 夏を休み、秋の初重賞シリウスステークスはマスクゾロとタイム差なしの3着。1番人気に推されたブラジルカップは8着に沈む。休み明け2走目の緩みだったと、陣営はのちに振り返っている。

みやこステークス ― 京都の直線で

11月6日、京都のみやこステークス。4番人気だった。中団で脚を溜め、直線を向くと一気に先頭へ。外から迫った1番人気グレンツェントをクビ差でしのぎ、重賞に初めて名を刻んだ。鞍上は松若風馬。 続くチャンピオンズカップが、GIの初挑戦だった。7番人気。中京の速い時計はこの巨体には向かないと、陣営自身が疑っていた。それでも後方から脚を伸ばし、勝ったサウンドトゥルーから0秒4差の5着。あそこまで来られるのは力がある証拠だと富岡は受け止めた。自分たちが思っている以上に、馬は力をつけていた。

返し馬の一言

暮れの大井、東京大賞典。誰を乗せるかで陣営は迷った。別の騎手に任せる話もあったが、山内研二が内田博幸を推し、鞍が替わった。大井でデビューし、中央へ移るまでの19年をあの砂の上で過ごした男である。馬場の質を、誰よりも知っていた。 内田はこの馬に一度も跨ったことがなかった。追い切りにも乗っていない。ぶっつけの初騎乗である。 返し馬から戻ってきた馬の口を、富岡が取ろうとしたときだった。鞍上が言った。「この馬勝てるかもしれないよ」[^1] 富岡は内心、何を言っているのだこの人は、と思ったという。相手は14頭。アウォーディーコパノリッキーサウンドトゥルーノンコノユメ――大レースを勝ってきた馬が並んでいた。

出典:競馬ラボ「【アポロケンタッキーの富岡潤調教助手】アポロケンタッキー2つ目のビッグタイトルから再びドバイへ!(前編)」2017年10月29日配信、https://www.keibalab.jp/column/interview/1685/、閲覧日:2026年7月27日。

戻ってきた大井

2016年12月29日、大井2000メートル、重馬場。5番人気。 コパノリッキーがハナを切り、アウォーディーが2番手につけた。アポロケンタッキーは外目の4番手。前半5ハロン64秒8という、GIとしては異例の緩さでレースは流れる。3コーナーを過ぎてペースが上がると、サウンドトゥルーとともに早めに動いた。直線、内から抜け出しにかかったアウォーディーの脇を突いて半ばで先頭に立ち、残り100メートルで完全に突き放す。1馬身半差。2着アウォーディー、3着サウンドトゥルー。 馬体重565キロ。JRAのGI優勝馬の最高馬体重として知られるヒシアケボノの560キロを上回る数字だった。西日が向正面を刺す夕方で、騎手が前が見えないとこぼすほどの光だったという。その光の中を、巨漢は押し切った。 山内研二にとっては2004年のダービーグランプリ以来、12年ぶりのGI制覇。そして内田博幸にとっては、2004年と2005年のアジュディミツオー、2009年のサクセスブロッケンに続く、4度目の東京大賞典だった。 「今は中央で乗せていただいていますが、この大井競馬場からデビューして19年、この地があったから今の自分がいるのだと思います」[^1]

出典:競馬ラボ「【東京大賞典】新星誕生!アポロケンタッキーが直線抜け出しG1初制覇!」2016年12月29日配信、https://www.keibalab.jp/topics/32222/、閲覧日:2026年7月27日。

メイダンの砂と、船橋の四頭

2017年3月25日、初めての海外遠征。ドバイワールドカップ、メイダンのダート2000メートル。ルメールを背に9着。勝ったのはアロゲートだった。思うような状態で送り出せなかったと、陣営は悔いを残した。 帰国後の帝王賞は2番人気で5着。夏の大井は蒸し暑く、引き手の人間まで具合が悪くなるほどの湿気だったという。 9月27日、船橋の日本テレビ盃。久々の1800メートルは忙しいのではないかと陣営は心配していたが、外の11番枠を引いたのが良かった。モーニンケイティブレイブが早めに抜け出したところへ、外からアポロケンタッキーとサウンドトゥルーが並びかける。4頭が横一線になり、最後に一歩だけ前へ出たのがこの馬だった。重賞3勝目。京都の良、大井の重、船橋の稍重――勝った条件は、三つとも違っていた。 11月のJBCクラシックは2番人気で8着。12月のチャンピオンズカップは当日に右前肢の跛行が出て出走を取り消した。連覇を狙った東京大賞典は4着。頂の景色は、一度きりで遠のいていく。

ケイティブレイブの背中

2018年は、ケイティブレイブの背中を見続ける年になった。1月の川崎記念2着、3月のダイオライト記念2着、10月の日本テレビ盃2着。三度とも、前にいたのは同じ馬だった。 秋以降は着順が伸びなくなる。JBCクラシック13着、チャンピオンズカップ14着、東京大賞典10着。570キロを超えるまでになった馬体は、もう若くはなかった。 2019年、川崎記念4着、ダイオライト記念2着。5月のかしわ記念では7番人気で3着に食い込み、勝ったゴールドドリームから0秒6差まで迫った。これが最後の好走になる。 9月23日、船橋の日本テレビ盃。8頭立ての最下位で、勝ったクリソベリルから13秒8離されてゴールした。7歳。4日後の9月27日付で競走馬登録が抹消される。37戦9勝、獲得賞金3億5733万円。条件戦から統一GIまで駆け上がり、そして静かに降りた。

新ひだかの丘で

引退後は新ひだか町のレックススタッドで種牡馬になった。展示会の映像のなかに、あの巨体が並んでいる。 2022年6月20日、盲腸破裂のため死亡。10歳だった。 翌2023年11月21日、金沢ヤングチャンピオンを、初年度産駒のリメンバーアポロが勝った。父はもういなかった。 アメリカの州の名をひとつ借りただけの馬が、日本の砂に残したものは、暮れの大井の1馬身半と、その血を継いだ仔の勝利である。血に飾りはいらなかった。走って、増えて、押し切る。この馬には、それで足りた。

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