名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

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アーモンドアイのイメージビジュアル
アーモンドアイAlmond Eye
Almond Eye

アーモンドアイ

通算成績15戦11勝

獲得賞金191,526万円

生年 2015(平成27年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
アーモンドアイの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム映像
1 GIジャパンカップ(ラストラン) 東京 芝2400 1人気 C.ルメール 2:23.0 映像
1 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 1人気 C.ルメール 1:57.8 映像
2 GI安田記念 東京 芝1600 1人気 C.ルメール 映像
1 GIヴィクトリアマイル 東京 芝1600 1人気 C.ルメール 1:30.6 映像
9 GI有馬記念 中山 芝2500 1人気 C.ルメール 映像
1 GI天皇賞(秋) 東京 芝2000 1人気 C.ルメール 1:56.2 映像
3 GI安田記念 東京 芝1600 1人気 C.ルメール 映像
1 GIドバイターフ メイダン 芝1800 1人気 C.ルメール 1:46.7 映像
1 GIジャパンカップ 東京 芝2400 1人気 C.ルメール 2:20.6WR 映像
1 GI秋華賞 京都 芝2000 1人気 C.ルメール 1:58.5 映像
1 GI優駿牝馬(オークス) 東京 芝2400 1人気 C.ルメール 2:23.8 映像
1 GI桜花賞 阪神 芝1600 2人気 C.ルメール 1:33.1 映像
1 GIIIシンザン記念 京都 芝1600 2人気 戸崎圭太 1:37.1 映像
1 3歳未勝利 東京 芝1600 1人気 C.ルメール 1:35.1
2 新馬 新潟 芝1400 1人気 C.ルメール 1:24.0

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
アーモンドアイの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ロードカナロアLord KanaloaキングカメハメハKing KamehamehaキングマンボKingmambo
マンファスManfath
レディブラッサムLady BlossomストームキャットStorm Cat
サラトガデューSaratoga Dew
フサイチパンドラFusaichi PandoraサンデーサイレンスSunday SilenceヘイローHalo
ウィッシングウェルWishing Well
ロッタレースLotta LaceヌレイエフNureyev
セックスアピールSex Appeal

引退後の暮らし

社台スタリオンステーション

引退後の映像は未登録です。社台スタリオンステーション(安平町)の様子は牧場地図で見る

STORY

旅程 — この馬の物語

牝馬三冠と芝GI九勝。世界レコードで駆け抜けたジャパンカップは、現代競馬の到達点のひとつ。

アーモンドの瞳 ― 名前と血

美しい牝馬の、その瞳の形を、そのまま名にした。アーモンドアイ。 2015年3月10日、ノーザンファーム生まれの鹿毛。父はスプリント王ロードカナロア、母はエリザベス女王杯を勝ったフサイチパンドラ。短距離血統の父に、底力の母。配合だけを見れば、のちに芝GIを九つも勝つ牝馬を約束する血ではなかった。 馬主はシルクレーシング、育てるのは美浦の名伯楽・国枝栄。そして手綱を託されたのが、日本に根を下ろした名手クリストフ・ルメール。この男がやがて、数えきれない名馬に跨りながら、たった一頭を生涯忘れられぬ存在と呼ぶことになる。瞳の名を持つ牝馬と、その瞳に惚れ込む騎手の物語が、ここから始まる。

始まりの黒星 ― 新馬戦の躓き

2017年8月、新潟。単勝1.3倍の圧倒的支持を受けながら、デビュー戦は逃げ粘るニシノウララをわずかに捉えきれず2着に終わる。最強牝馬の物語は、皮肉にも黒星から始まった。 だが、その悔しさはすぐに晴れる。続く未勝利戦を快勝すると、明けて2018年、シンザン記念を戸崎圭太とともに制してオープンの扉を開いた。この新馬戦を最後に、アーモンドアイは七連勝で翌春のドバイまで一気に駆け上がっていく。たった一度の取りこぼしを踏み台にして、女王の快進撃は始まった。

牝馬三冠 ― 二〇一八年の春と秋

桜の阪神、ルメールを背に桜花賞を抜け出す。府中のオークスは2400mの距離をものともせず1番人気に応え、京都の秋華賞も危なげなく差し切った。桜花賞・オークス・秋華賞――牝馬三冠。 2012年のジェンティルドンナ以来、史上5頭目の快挙だった。三歳牝馬の頂に、アーモンドアイはあっさりと立つ。だが、本当の衝撃はまだ先にある。同じ年の暮れ、古馬の牡馬たちがひしめく府中の2400mで、世界がこの馬の名を覚えることになる。

二分二十秒六 ― 世界を抜いた時計

2018年11月25日、ジャパンカップ。三歳牝馬の身で古馬の一線級に挑んだアーモンドアイは、直線で次元の違う脚を繰り出し、突き抜けた。電光掲示板の時計に、府中がどよめく。2分20秒6。 2005年にアルカセットが刻んだ芝2400mの世界レコードを、1秒5も塗り替える数字だった。世界レコード――その四文字が、一頭の三歳牝馬の名とともに競馬史に刻まれる。国枝栄はジャパンカップ初制覇。そしてルメールは、勝利の直後に彼女をこう評した。「特別な牝馬だと思う」。瞳の名を持つ牝馬は、もう日本だけのものではなかった。

奪われた一勝、欠けた一戦 ― 二〇一九年の影

2019年3月、ドバイ。メイダンの芝1800mを完勝し、海外GIまで手中にする。女王に死角はない――誰もがそう思った矢先、運命がいたずらを仕掛けた。 6月の安田記念。隣枠のロジクライが発走直後に内へ斜行し、アーモンドアイは五馬身ものロスを背負って最後方に置かれる。ルメールは「スタートでガチャガチャして位置取りが悪くなった。あれがすべて」と唇を噛んだ。それでもこの馬は、上がり32秒4という常識外れの末脚で大外をなだれ込み、3着まで突っ込んできた。負けてなお、強さだけが際立つレースだった。 秋の天皇賞は1分56秒2、3馬身差で貫禄を見せつける。だが暮れの有馬記念は、最初から歯車が狂っていた。本来は香港へ向かうはずが、熱発で回避。万全とは言えぬ体で、それでも1.5倍の支持を背負って中山に立った。道中でハミを噛んで力を使い果たし、結果は9着。リスグラシューが5馬身差で逃げ切ったその日、アーモンドアイは生涯ただ一度の大敗を喫した。最強の女王もまた、無敵ではなかった。

最速の女王 ― 涙の天皇賞

年が明けても、女王は色褪せなかった。2020年5月のヴィクトリアマイルを1分30秒6、4馬身差で蹂躙し、自らが最速であることを証明する。続く安田記念こそ快速グランアレグリアの前に2着に屈したが、秋の天皇賞ではフィエールマンらを完封してみせた。 これが芝GI8勝目。ジェンティルドンナの7勝を抜き、芝GI最多記録を更新する、前人未到の数字だった。だが勝利のあと、ルメールは人目をはばからず涙を流した。最強の馬に跨れる時間が、もう残りわずかであること――名手はそれを、誰よりも知っていたのかもしれない。残された舞台は、ただ一つだった。

世紀の一戦 ― 二〇二〇年十一月二十九日

枠順が発表されたとき、競馬ファンは息を呑んだ。無敗の三冠牡馬コントレイル。無敗の三冠牝馬デアリングタクト。そして牝馬三冠のアーモンドアイ。三頭の三冠馬が、ただ一つのゴールを目指す――競馬史に前例のない一戦だった。 引退レースと決めて臨んだその日、ルメールはいつも通りだった。「返し馬から発走前まで、普通のアーモンドアイでした」。直線で馬群を割って抜け出すと、もう後ろからは何の足音も聞こえてこない。2分23秒0。コントレイルが2着、デアリングタクトが3着。三冠馬のワン・ツー・スリーを、最年長の女王が制した。 芝GI9勝――歴代最多。総獲得賞金は19億1526万円に達し、前年にキタサンブラックが打ち立てたばかりのJRA記録を、わずか一年で塗り替える。会見場に現れたルメールは、妻が手作りした「9冠マスク」をつけていた。天皇賞のあとは泣いた名手が、この日は笑っていた。『no cry, no sad』。そして、こう言葉を継いだ。「彼女に騎乗できたことを光栄に思う。彼女は私たちの記憶に、永遠に残ります」。最高の舞台で、最強のまま、アーモンドアイはターフを去った。

物語は続く ― 瞳が遺したもの

2023年、アーモンドアイは史上35頭目の顕彰馬に選ばれた。芝GI9勝の金字塔は、いまも誰にも破られていない。 通算15戦11勝。喫した敗北はわずか四度――新馬戦の惜しい2着、不運に阻まれた安田記念、快速馬に屈したもう一度の安田、そして体調を欠いた有馬記念。その数えるほどの影さえ、女王の輝きを際立たせるための陰影でしかなかった。最速のレコード、最多のタイトル、世界を抜いた時計。現代日本競馬が辿り着いた一つの頂点が、瞳の名を持つ一頭の牝馬の蹄に集まっていた。 引退の日、別れを惜しむ問いに、ルメールはこう答えている。「物語は続く。いい子を産んだら、また乗れるから」。あの瞳に惚れ込んだ名手は、のちにイクイノックスという怪物に跨り、世界の頂に立ってもなお、言い切るのだ――「ずっと心に残っているのは、アーモンドアイ」。繁殖牝馬となった女王は、いま北の大地で母になっている。あの弾けるような末脚を継ぐ仔を、名手はきっと待っている。瞳の物語は、まだ途中だ。

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