名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

この世代(生まれ年)

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アランバローズのイメージビジュアル
アランバローズAlain Barows
Alain Barows

アランバローズ

通算成績34戦13勝

獲得賞金23,575万円

生年月日 2018.02.08(平成30年)毛色 鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
アランバローズの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
11 準重賞スパーキングサマーCh 川崎 ダ1600 1人気 笹川翼 1:43.9 上り41.2
1 準重賞短夜賞 船橋 ダ1700 1人気 笹川翼 1:47.1 上り39.1
1 SIII川崎マイラーズ 川崎 ダ1600 1人気 本田正重 1:40.6 上り37.5
1 準重賞スパーキングマイラーズCh 川崎 ダ1600 1人気 笹川翼 1:41.3 上り39.7
14 SIIマイルGP 大井 ダ1600 3人気 笹川翼 1:41.2 上り41.0
2 OP千葉ダートマイル 船橋 ダ1600 1人気 笹川翼 1:39.2 上り38.1
3 SIIスパーキングサマーC 川崎 ダ1600 2人気 笹川翼 1:43.3 上り40.2
1 OP多摩川OP 川崎 ダ1600 1人気 笹川翼 1:41.8 上り38.1
7 SIII川崎マイラーズ 川崎 ダ1600 1人気 笹川翼 1:44.3 上り42.4
1 準重賞スパーキングマイラーズCh 川崎 ダ1600 1人気 笹川翼 1:41.2 上り39.4
3 SIIマイルGP 大井 ダ1600 5人気 笹川翼 1:41.2 上り39.5
2 SIIスパーキングサマーC 川崎 ダ1600 4人気 笹川翼 1:42.2 上り40.5
12 JpnⅠさきたま杯 浦和 ダ1400 8人気 御神本訓史 1:31.2 上り44.0映像
3 SIIIプラチナC 浦和 ダ1400 2人気 笹川翼 1:28.5 上り40.0
3 SII京成盃グランドマイラーズ 船橋 ダ1600 4人気 笹川翼 1:40.2 上り39.6
1 OP多摩川OP 川崎 ダ1600 1人気 笹川翼 1:43.1 上り40.1
4 SIII川崎マイラーズ 川崎 ダ1600 11人気 笹川翼 1:42.5 上り41.3
7 SIIマイルグランプリ 大井 ダ1600 5人気 笹川翼 1:44.6 上り41.4
10 SIII川崎マイラーズ 川崎 ダ1600 4人気 笹川翼 1:49.5 上り47.0
11 SII勝島王冠 大井 ダ1800 2人気 笹川翼 1:53.6 上り40.1
2 SIIIサンタアニタT 大井 ダ1600 6人気 笹川翼 1:38.0 上り37.5
1 OP千葉ダートマイル 船橋 ダ1600 3人気 左海誠二 1:39.6 上り39.9
12 SIIIスパーキングサマーC 川崎 ダ1600 6人気 左海誠二 1:43.8 上り41.2
12 SIゴールドカップ 浦和 ダ1400 3人気 左海誠二 1:30.8 上り42.5
10 JpnⅠJBCスプリント 金沢 ダ1400 7人気 左海誠二 1:28.2 上り38.6映像
3 JpnⅢテレ玉杯オーバルスプリント 浦和 ダ1400 3人気 左海誠二 1:26.0 上り38.8
1 SI東京ダービー 大井 ダ2000 1人気 左海誠二 2:06.6 上り39.7
2 SI羽田盃 大井 ダ1800 2人気 左海誠二 1:51.7 上り38.4
9 SII京浜盃 大井 ダ1700 1人気 左海誠二 1:49.3 上り40.3
1 JpnⅠ全日本2歳優駿 川崎 ダ1600 3人気 左海誠二 1:40.7 上り39.4
1 SIハイセイコー記念 大井 ダ1600 3人気 左海誠二 1:40.8 上り38.3
1 SIIIゴールドジュニア 大井 ダ1400 2人気 左海誠二 1:27.0 上り38.9
1 2歳月下香特別 船橋 ダ1200 1人気 左海誠二 1:13.4 上り37.7
1 2歳新馬アスズランデビュー 船橋 ダ1000 1人気 左海誠二 1:00.9 上り37.3

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
アランバローズの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ヘニーヒューズHenny HughesヘネシーStorm Cat
Island Kitty
Meadow FlyerMeadowlake
Shortley
カサロサーダステイゴールドStay Goldサンデーサイレンス
ゴールデンサッシュ
センブラフェManipulator
Siembra Pasion
STORY

旅程 — この馬の物語

2018年生まれの鹿毛の牡馬。父ヘニーヒューズ、母カサロサーダ。主な勝ち鞍は全日本2歳優駿。

「バローズ」の一頭 ― 名と血

馬主は猪熊広次。所有馬には「バローズ」の冠名がそろい、2019年の日本ダービーは、その勝負服のロジャーバローズが制している。アランバローズ――「バローズ」は、その一族の印である。 血は、南関東の王道ではない。父ヘニーヒューズはアメリカの快速ダート血統、母カサロサーダの名は「バラ色の家」――ブエノスアイレスの大統領府を指すスペイン語で、牝系はアルゼンチンにさかのぼる。母の父はステイゴールド。2018年2月8日、北海道新冠町の大狩部牧場に生まれた鹿毛の牡馬は、半弟に後のフジノウェーブ記念馬ナンセイホワイトを持つ一族から、船橋の林正人厩舎へ入った。 手綱を託されたのは左海誠二。1993年のデビュー以来、地方競馬ひとすじで二千を超える勝ち星を積みながら、中央では九勝どまり、交流GIとは縁の薄いベテランだった。この鹿毛が、その騎手の景色を変えることになる。

無敗の五連勝 ― ダートの頂へ

2020年5月8日、船橋のスズランデビュー。好スタートから先手を奪うと、そのまま三馬身の差をつけて逃げ切った。逃げて、後続を置き去りにする――この馬の型は、最初の一戦でもう出来上がっていた。 月下香特別、ゴールドジュニア、ハイセイコー記念。無敗のまま四つを連ね、暮れの全日本2歳優駿へ駒を進める。川崎のダート1600メートル、全国の2歳ダート王を決める交流JpnI。3番人気のアランバローズは、いつものように先手を取ると、3コーナーから4コーナーで一気に後続を突き放し、2着ランリョウオーに五馬身をつけて圧勝した。デビューから無敗の五連勝で、2歳のダート王座に就く。 デビュー二十七年目の左海にとって、これが初めての交流GI制覇だった。地方一筋のベテランが、逃げる鹿毛の背で、ようやく最も高い場所に立った。

京浜盃の落とし穴

無敗の王者に、初めての黒星が待っていた。2021年3月、南関東クラシックへの前哨戦・京浜盃。1番人気に推されながら、アランバローズは9着に沈む。逃げ切りの型が、通じない日もある。 だが、崩れはしなかった。続く羽田盃では2着に立て直し、態勢を整える。二歳暮れの絶対的な強さから、勝ったり負けたりの現実へ――三歳のクラシック戦線は、王者にも容赦がなかった。それでも、本番の大井はまだ先にある。

東京ダービー ― 八年ぶりの盾

2021年6月9日、大井のダート2000メートル。南関東の三歳が頂点を争う東京ダービーで、アランバローズは1番人気に応えた。 逃げて、向正面ではハロン13秒台までペースを緩め、後続を引きつける。そして直線、再び後ろを突き放しにかかった。最後は脚が上がりかけたが、追いすがるギャルダルを四分の三馬身だけ抑え込む。先手必勝の型を、最も大きな舞台で貫き通した勝利だった。 鞍上の左海にとって、東京ダービーは二度目である。一度目は2013年、インサイドザパーク。あれから八年、四十六歳のベテランは、もう一度この盾を掲げた。地方の帝王を決めるレースを、逃げ馬で二度――逃げて勝つ男が、逃げて勝つ馬を得た、その到達点だった。

心臓 ― 別れの年

頂に立った馬は、やがて距離を短くしていく。秋はテレ玉杯オーバルスプリントで3着、交流JpnIのJBCスプリントは金沢で10着、暮れのゴールドカップは12着。1400メートルの一線級は、逃げ馬に楽をさせてくれなかった。 そして主戦も、この鹿毛のもとを離れる。2021年を最後に左海は手綱を笹川翼へ譲り、2022年11月に騎手を引退、調教師へと転じた。だが、その新たな道はあまりに短かった。2023年8月、左海誠二は急性心筋梗塞のため急逝する。四十八歳だった。デビュー二十七年目に初の交流GIを、そして八年ぶりの東京ダービーを、この馬とともに掴んだ人は、もういない。 奇しくも同じ2023年、アランバローズ自身も心臓に変調をきたす。心房細動――走る馬の鼓動を乱すその不整脈を抱えながら、それでも鹿毛は、走ることをやめなかった。

八歳、なお先頭で

心臓を抱えた馬の戦い方は、少しだけ変わった。ダート1600メートルを主戦場に、川崎と船橋の準重賞・重賞で、アランバローズは勝ち星を拾い続ける。2024年の多摩川オープン、スパーキングマイラーズチャンピオンシップ。2025年の多摩川オープン。交流JpnIのさきたま杯では12着と大敗を喫しても、南関のマイル戦に戻れば、また先頭にいた。 2026年、八歳。正月の川崎マイラーズを勝ち、初夏の短夜賞を勝つ。デビューから六年、通算34戦13勝。齢を重ねてなお、この鹿毛はしばしば1番人気に推される。かつて左海誠二が信じ、大井の直線で解き放った逃げ脚は、いまも川崎の砂の上にある。 二歳で全国のダート王となり、三歳で地方の頂を極めた馬は、王座から遠ざかった後の長い時間を、ただ逃げて、走り続けている。その一完歩ごとに、最初にこの背を託した人のことが、静かに宿っている。旅は、まだ終わらない。

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