名馬の記憶を、
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年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
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名馬録

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アゴルディーノAgordino
Agordino

アゴルディーノ

通算成績3戦2勝

獲得賞金5,104万円

生年月日 2024.03.13(令和6年)毛色 黒鹿毛性 牡

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
アゴルディーノの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
1 GIIIサウジアラビアロイヤルカップ 東京 芝1600 3人気 横山和生 1:34.4 上り33.4
2 OPコスモス賞 札幌 芝1800 1人気 横山和生 1:48.7 上り35.0
1 2歳新馬 函館 芝1200 2人気 横山和生 1:09.8 上り34.8

血統

金色の名は掲載馬 — その馬のページへ/点線の名は押すと一言解説
アゴルディーノの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
父エフフォーリアEfforiaエピファネイアEpiphaneiaシンボリクリスエスSymboli Kris S
シーザリオCesario
ハーツクライHeart's Cry
ディープインパクトDeep ImpactサンデーサイレンスSunday Silence
レンドフェリーチェ
レンII
STORY

旅程 — この馬の物語

2024年生まれの黒鹿毛の牡馬。父エフフォーリア、母モルトフェリーチェ。主な勝ち鞍はサウジアラビアロイヤルカップ。

山あいの名、函館の白星

アゴルディーノは、イタリア北東部の地名である。ベッルーノ県の山あい、コルデヴォーレ川の上流から中流にかけて広がる一帯を指し、中心の町はアーゴルドという。JRAに届けられた馬名の意味は「観光地域名」とされている。 2024年3月13日、北海道新ひだか町の中田英樹のもとに生まれた黒鹿毛の牡馬。父エフフォーリアは2021年に皐月賞、天皇賞(秋)、有馬記念を勝ち、その年の年度代表馬に選ばれた。この世代が、種牡馬としての最初の産駒になる。 母モルトフェリーチェは6戦して、勝ち星に手が届かなかった。その母レンドフェリーチェは紫苑ステークスを含む5勝を挙げている。母の仔には、2022年の東京ジャンプステークスを勝った半兄ケイティクレバーもいる。 1歳の秋、北海道セプテンバーセールでディアレストクラブに落札され、美浦の田村康仁厩舎に入った。毎日の調教で背に乗ったのは、横山和生だった。 2026年6月27日、函館の芝1200メートル。芝は稍重で、8頭立ての新馬戦だった。横山はこの距離が合う馬ではないと見ていた。それでも先を見据えて、ここから始めた。スタートはひと息。中団で脚をため、三コーナー5番手から四コーナー4番手へ。直線で馬群を割って伸び、1番人気のステラトップガンを半馬身抑えた。 毎日乗って信頼関係ができていたから、いろいろな競馬ができると思っていた。横山はレース後、そう振り返っている。

師との別れ、札幌の半馬身

二日後の6月29日、田村康仁が病気のため亡くなった。63歳だった。1997年に調教師免許を取り、メジャーエンブレムで阪神ジュベナイルフィリーズとNHKマイルカップを、アスクビクターモアで菊花賞を勝った人である。最後の重賞勝ちは、前の年のサウジアラビアロイヤルカップ。エコロアルバで手にしたものだった。 アゴルディーノの新馬勝ちが、田村厩舎の最後の勝利になった。 管理馬63頭は翌30日付で、同じ美浦の中舘英二厩舎へ移る。馬房を臨時に貸し付ける形で中舘厩舎が引き継ぎ、田村のもとで働いていたスタッフは“チーム田村”として馬を見続けた。 8月15日、札幌のコスモス賞。芝1800メートルのオープン特別で、アゴルディーノは1番人気に推された。道中は3番手。四コーナーまで、その位置を崩さなかった。 ラップは後半に入って、1ハロン(約200メートル)ごとに速くなっていく。最後の200メートルは、11秒3まで速まった。逃げたコスモハナミズキは捉えた。だが外から、もう一頭来ていた。 三コーナー過ぎから進出したデアグランツが、大外を伸びて半馬身前でゴールした。3着はそこから6馬身後ろ。二頭だけの勝負に敗れた。デアグランツを管理するのは鹿戸雄一。父エフフォーリアを育てた調教師だった。

府中、残り二百メートル ― 二〇二六年十月十日

秋の東京は晴れて、芝は良だった。サウジアラビアロイヤルカップ。11頭のなかで、アゴルディーノは3番人気だった。 ゲートの出は、よくなかった。本当はもう少し出てほしかった、と横山はあとで本音を漏らしている。それでも慌てなかった。この馬とはいい信頼関係を結べている。そう信じて、後ろから運ぶことにした。前を行くクリストフ・ルメールの1番人気フィリオソラーレを、見ながら進んだ。 先頭はグルーヴェンス。二つ目のハロンで流れが速まり、中盤で一度ゆるむ。三コーナーで9番手。四コーナーでも9番手。前にはまだ8頭がいた。 府中の直線は長い。最後の600メートルに入ると、時計が上がり始める。最内から抜け出したのは、サトノハクマイだった。 横山は外へ持ち出した。残り200メートルのあたりで、進路が開く。 そこからが速かった。大外を一頭だけ違う脚で伸び、前の馬たちをまとめてのみ込んでいく。最後に残ったのは、内で粘るサトノハクマイ一頭。並びかけ、ゴールでクビだけ前に出た。 上がり3ハロン(最後の600メートル)は33秒4。出走馬で最も速い脚だった。1200メートルで勝ち、1800メートルで2着に入り、マイルで重賞を手にした。条件を変えても結果を出す相棒を、横山はこう称えている。「この馬のセンスには本当に頭が下がります」[^1]

出典:デイリースポーツ「【サウジアラビアRC】3番人気アゴルディーノ重賞初制覇で横山和ガッツポーズ「田村先生にお世話になっていたので、スタッフと馬と一緒に勝てたのがうれしくて」 天国の指揮官に白星届けた」2026年10月10日配信、https://www.daily.co.jp/umaya/news/2026/10/10/0020914096.shtml、閲覧日:2026年10月19日。

俺がいる時に

ゴールの瞬間、横山は右手で天を指した。田村先生にお世話になっていた。そのスタッフと、この馬と勝てたのがうれしくて、自然に出たのだという。 田村厩舎にとっては、前の年のエコロアルバに続く同じレースの勝利だった。実質の連覇、と報じられた。父エフフォーリアにとっては、産駒で初めての重賞勝ちになる。 担当の寺河助手は、普通なら届かない、ジョッキーも覚悟を決めて乗ってくれたと目を潤ませた。ふだんはピリピリしやすい馬が、この日はなぜか落ち着いていたともいう。臨時の形で続いてきた“チーム田村”は、翌週で解散することが決まっていた。 寺河は冗談まじりに、亡き師の口ぶりを借りた。「先生がいたら『俺がいる時に勝てよ』と言っていたと思います」[^1] けれど、この馬はちゃんと勝っている。6月27日の函館で、田村康仁がまだいたときに。あの新馬戦の白星は、田村厩舎の最後の勝利として記録に残った。言いつけは、最初の一戦でもう守られていた。 府中の重賞は、その先を預かった人たちが、同じ鞍上と掴んだ続きである。函館で一つ、府中で一つ。山あいの名を持つ黒鹿毛は、師の名で記録された最後の白星と、師のいない最初の重賞を、一本の手綱でつないでみせた。

出典:デイリースポーツ「【サウジアラビアRC】アゴルディーノ 天国の田村師に捧ぐ重賞初制覇 横山和が感服「この馬のセンスには頭が下がる」種牡馬エフフォーリアも初重賞タイトル」2026年10月11日配信、https://www.daily.co.jp/umaya/news/2026/10/11/0020915391.shtml、閲覧日:2026年10月19日。

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