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アドマイヤムーン
通算成績17戦10勝
獲得賞金11億8,772万円
生年月日 2003.02.23(平成15年)毛色 鹿毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | GIジャパンカップ | 東京 芝2400 | 5人気 | 岩田康誠 | 2:24.7 | 上り33.9 | 映像 | |
| 6 | GI天皇賞(秋) | 東京 芝2000 | 2人気 | 岩田康誠 | 1:59.1 | 上り35.0 | 映像 | |
| 1 | GI宝塚記念 | 阪神 芝2200 | 3人気 | 岩田康誠 | 2:12.4 | 上り36.2 | 映像 | |
| 3 | GIクイーンエリザベス2世カップ | 香港 芝2000 | 武豊 | 2:02.2 | — | — | ||
| 1 | GIドバイデューティーフリー | アラブ首長国連邦 芝1777 | 武豊 | — | 映像 | |||
| 1 | GII京都記念 | 京都 芝2200 | 2人気 | 武豊 | 2:17.2 | 上り35.1 | 映像 | |
| 2 | GI香港カップ | 香港 芝2000 | 武豊 | — | 映像 | |||
| 3 | GI天皇賞(秋) | 東京 芝2000 | 2人気 | 武豊 | 1:59.0 | 上り34.2 | 映像 | |
| 1 | GII札幌記念 | 札幌 芝2000 | 1人気 | 武豊 | 2:00.3 | 上り33.5 | 映像 | |
| 7 | GI東京優駿 | 東京 芝2400 | 3人気 | 武豊 | 2:28.8 | 上り35.4 | 映像 | |
| 4 | GI皐月賞 | 中山 芝2000 | 1人気 | 武豊 | 2:00.4 | 上り34.8 | 映像 | |
| 1 | GII報知杯弥生賞 | 中山 芝2000 | 1人気 | 武豊 | 2:01.5 | 上り34.7 | 映像 | |
| 1 | GIII共同通信杯 | 東京 芝1800 | 2人気 | 武豊 | 1:48.4 | 上り33.9 | 映像 | |
| 2 | GIIIラジオたんぱ杯2歳S | 阪神 芝2000 | 1人気 | 本田優 | 2:01.9 | 上り34.8 | — | |
| 1 | GIII札幌2歳S | 札幌 芝1800 | 1人気 | 本田優 | 1:50.4 | 上り35.5 | 映像 | |
| 1 | OPクローバー賞 | 札幌 芝1500 | 1人気 | 本田優 | 1:29.5 | 上り35.6 | — | |
| 1 | 2歳新馬 | 函館 芝1800 | 5人気 | 本田優 | 1:54.4 | 上り35.9 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父エンドスウィープEnd Sweep | フォーティナイナーForty Niner | Mr. Prospector |
| File | ||
| Broom Dance | Dance Spell | |
| Witching Hour | ||
| 母マイケイティーズ | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| ケイティーズファーストKaties First | Kris | |
| Katies |
引退後・牧場での映像
ゴール板の先の時間旅程 — この馬の物語
2003年生まれの鹿毛の牡馬。父エンドスウィープ、母マイケイティーズ。主な勝ち鞍はドバイデューティーF・宝塚記念・ジャパンC。
最後の世代
2002年、一頭の種牡馬が急死した。エンドスウィープ。アメリカとカナダで走り、1995年からアメリカで、2000年からは日本の社台スタリオンステーションで種牡馬をつとめた馬である。日本に残せた世代は、三つしかない。 その三つ目、最後の世代に、2003年2月23日、北海道早来のノーザンファームで鹿毛の牡馬が生まれた。 母はマイケイティーズ。父サンデーサイレンス、母ケイティーズファースト。一度も競走馬にならないまま繁殖に上がった牝馬である。ただし血の側は賑やかだった。祖母ケイティーズファーストの半妹に、エリザベス女王杯を勝ったヒシアマゾンと、ローズステークスを勝ったヒシピナクルがいる。アイルランド生まれの曾祖母ケイティーズから枝分かれした、日本にもよく知られた一族だった。 その年の当歳セレクトセールで、この鹿毛は一六〇〇万円で競り落とされる。買ったのは近藤利一。徳島に生まれ、大阪で解体工事の会社を興し、英語で賞賛を意味する「アドマイヤ」を冠名にしていた男である。賞賛のあとに続けられた言葉は、月だった。 育成では一日も調教を休まなかったという。丈夫な馬だ、というのが競馬場へ出る前の評判で、早くもクラシック候補と呼ぶ声があった。 2005年7月10日、函館の芝1800メートル。デビュー戦は5番人気。ゲートを出遅れ、四コーナーでもうステッキが入っていたが、直線で一気に抜け出して二着に0.4秒の差をつけた。鞍上は本田優。夏の札幌ではクローバー賞をニシノアンサーとの叩き合いの末にハナ差で制し、十月の札幌2歳ステークスで重賞を勝った。無傷の三連勝である。 暮れの阪神、ラジオたんぱ杯2歳ステークス。1番人気で好位から抜け出したところをサクラメガワンダーに差し返され、ハナ差の二着。初めての敗北だった。
勝ち馬欄の同じ名前
2006年の初戦、共同通信杯から鞍上が替わった。武豊である。この馬主は、自分の馬に武豊を乗せることを何よりも望む人だった。 2番人気。先行した1番人気フサイチリシャールを直線で捉えて重賞二勝目。続く弥生賞では、それまで唯一負けていた相手であるサクラメガワンダーを差し切り、皐月賞の優先出走権を得た。 中山では1番人気に推された。中団の後ろから四コーナーで進出したものの伸び切れず四着。0.5秒先にいたのはメイショウサムソンだった。 距離への不安を抱えて臨んだダービーは3番人気。稍重の東京で、直線の空いた場所へ持ち出しても脚は上がらず七着。掲示板を外したのは、これが初めてだった。勝ったのは、また同じ馬である。 成績表の「勝ち馬」の欄に、二度続けて同じ名前が並んだ。三歳のクラシックは、ひとまずそういう配置で終わった。
北から、海の外へ
夏、札幌記念。初めての古馬相手で五十四キロ。中団から差し切ってレクレドールに一馬身。のちに武豊は、この馬が変わったのは札幌記念からだったと振り返っている。 菊花賞には向かわなかった。秋は天皇賞。直線で内も外も塞がり、こじ開けて追い込んだが、ダイワメジャー、スウィフトカレントに続く三着。十二月、初めて日本を出た。香港カップでは直線でようやく前が開くと矢のように伸び、凱旋門賞二着馬プライドをハナ差まで追い詰めて二着に入っている。 2007年は京都記念から始まった。五十九キロを背負い、馬体は十八キロ増えて四百八十二キロ。中団から鋭く伸びて、追い込んでくるポップロックをクビ差だけ抑えた。 三月三十一日、ナドアルシバ。ドバイデューティーフリーの芝1777メートルは稍重だった。ダイワメジャー、その年のブリーダーズカップ・ターフを勝つイングリッシュチャンネル、リンガリ。1分47秒9。日本の馬がこのレースを勝ったのは、初めてのことだった。 この馬には癖があった。先頭に立つと集中を切らす。ドバイでも抜け出した直後に脚色が鈍り、後ろとの差が詰まっている。強いだけでは足りない、勝ち方を選ばなければ勝てない馬だった。 そのまま日本へ戻らず香港へ渡り、クイーンエリザベス2世カップは三着。遅い流れが、待つ馬の武器を殺していた。 帰国して、手綱が替わった。四月の皐月賞で武豊が乗ったアドマイヤオーラが1番人気を裏切って四着に敗れ、続く香港でこの馬が三着に終わる。二つの騎乗にオーナーは納得せず、長く続いた二人の関係は事実上そこで解けた。宝塚記念の依頼は、岩田康誠に届いた。
二〇〇七年六月二十四日、阪神
小雨が降っていた。芝は稍重。 岩田康誠は兵庫県姫路市の生まれで、園田の厩舎から騎手になった。地方で二千九百を超える勝ち星を挙げ、デルタブルースで菊花賞を勝って、地方所属のまま中央のクラシックを制した最初の騎手になっている。JRAへ移ったのは、前の年だった。 パドックを回るアドマイヤムーンは四百六十八キロ。ドバイと香港をひと回りして戻り、京都記念のときより十四キロ軽い。 ゲートが開く。ローエングリンが先手を取り、二つ目のハロンを十秒五、三つ目を十秒九で駆けた。2200メートルのGIで刻む数字ではない。 岩田は動かない。十八頭の十二番手。前は勝手に速く、うしろは長い。 向正面が終わり、三コーナー。逃げた馬の脚色が変わる。八つ目のハロンが十三秒ちょうど。前が止まりはじめた、その場所から順位が動きだす。 四コーナー。先頭はカワカミプリンセス。すぐ後ろにシャドウゲイト、コスモバルク、メイショウサムソンが固まる。アドマイヤムーンは六番手のあたりで直線に入った。 坂。先に抜け出したのはメイショウサムソンだった。皐月賞で見た背中である。ダービーで見た背中である。 並びかける。残り百メートルで、前に出る。 半馬身。上がり三ハロンは、十八頭でいちばん速かった。 武豊はこの日、ポップロックに乗って三着に入っている。 この日、この馬はまだ、アドマイヤの馬だった。
名義
七月二十七日、秋に向けて山元トレーニングセンターで放牧されていたこの馬の所有権が、ダーレー・ジャパンへ移ったことが明らかになった。八月九日、JRAで移譲の手続きが行われる。国内での馬主変更という形だったので、厩舎は松田博資のまま、栗東に残った。転厩もなく、走る場所も変わらない。書き換わったのは、出馬表の一行だけだった。 前哨戦は使わず、天皇賞(秋)へ直行することが決まる。四か月ぶりの実戦で2番人気。1番人気メイショウサムソンの鞍上には、かつてこの馬の手綱を取っていた武豊が座っていた。直線で他馬から不利を受け、六着。勝ったのはサムソンだった。それでも、陣営から落胆の声は出なかった。 十月三十一日、翌年からダーレーの施設で種牡馬入りすること、初年度の種付料がその施設で最も高い五百万円になることが発表された。行き先の決まった馬として、最後の一戦へ向かうことになる。 十一月二十五日、東京、晴。同じコースのダービーで七着に敗れていること、前走の六着、そして鞍上が東京競馬場の重賞で二十二回続けて敗れているという事実。それらが重なって、単勝は5番人気だった。 チョウサンが意表を突いて逃げ、誰も競りかけず、流れは落ち着いた。困ったのは他ならぬこの馬である。スタートが良すぎて一時はハナに立ちかけ、岩田は好位の内で抑え続けた。 直線。ロスなく回ってきた内から、先に抜け出す。残り二百メートルで先頭。外からメイショウサムソン、最後方からウオッカ、馬群を割ってポップロック。三頭が同時に来た。 アタマ差。一着から三着までの時計は、同じだった。 「折り合いを欠いた場面もあったのに、勢いよく坂を駆け上がって、最後まで馬が頑張ってくれた。感無量です」[^1] レース後、この一戦をもって引退することが発表された。十二月四日、競走馬登録抹消。
出典:日本中央競馬会「第27回 ジャパンカップ(GⅠ)レース結果」2007年11月25日、https://www.jra.go.jp/datafile/seiseki/g1/jc/result/jc2007.html、閲覧日:2026年8月2日。
短くなった血
2008年1月5日、前年のJRA賞が発表された。年度代表馬、そして最優秀4歳以上牡馬。十七戦十勝、獲得賞金十一億八千七百七十二万七千円。表彰された成績のうち、最後の二戦だけが別の名義で走られたものだった。 種牡馬としての産駒は2008年の交配から始まる。ファインニードルが2018年に高松宮記念とスプリンターズステークスを勝ち、その年の最優秀短距離馬に選ばれた。セイウンコウセイは2017年の高松宮記念を勝っている。ジャパンカップを勝った馬が、短距離の王者を二頭出した。血は、走った距離のとおりには伝わらない。2024年をもって、種牡馬を退いている。 母系のほうも続いた。祖母ケイティーズファーストのもう一頭の娘ケイティーズハートが産んだエフフォーリアは、この馬のいとこにあたる。2021年、皐月賞と天皇賞(秋)と有馬記念を勝って、同じ賞を受け取った。同じ牧場で生まれた二頭が、十四年を隔てて年度代表馬になっている。
宛先
メイショウサムソンとは、五度、同じレースを走った。前に出たのは二度だけである。その二度が、どちらもGIの一着だった。東京競馬場の重賞で二十二回続けて敗れていた騎手は、二十三回目にジャパンカップを勝ち、のちにダービーも勝つことになる。回ってきた手綱は、誰かが手放したものだった。 この馬を手放した夏のセレクトセールで、同じ母の弟二頭に二億五千万円と三億円が積まれた。アドマイヤコブラとアドマイヤハーレ。買ったのは、四年前にこの馬を一六〇〇万円で競り落とした同じオーナーである。四年で、同じ腹の値はそれだけ動いていた。 十二月六日、有馬記念のファン投票の最終結果が出た。アドマイヤムーンは六万四千八百八十六票を集めて五位に入っている。中山で見たかったのは、賞でも名義でもない。もう一度この馬が走るところだった。だが結果が出た二日前に、競走馬登録はもう消えていた。 賞は書き換えられた名義の欄に届き、票は宛先を失った。最後まで待たれていたのは、そのどちらでもない。阪神の坂と東京の直線で二度だけ見せた、前に出るときの、あの数完歩だった。
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