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アドマイヤマーズ
通算成績13戦6勝
獲得賞金5億5,700万円
生年月日 2016.03.16(平成28年)毛色 栗毛性 牡
全成績
主要戦績(抜粋)・新しい順| 年月日 | 着順 | レース | コース | 人気 | 騎手 | タイム | 上り3F | 映像 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 3 | GI香港マイル | シャティン 芝1600 | 2人気 | R.ムーア | — | 映像 | ||
| 3 | GIマイルチャンピオンS | 阪神 芝1600 | 5人気 | 川田将雅 | 1:32.2 | 上り33.6 | 映像 | |
| 3 | GII毎日放送賞スワンS | 京都 芝1400 | 2人気 | 川田将雅 | 1:21.5 | 上り34.5 | 映像 | |
| 6 | GI安田記念 | 東京 芝1600 | 6人気 | 川田将雅 | 1:32.3 | 上り34.7 | 映像 | |
| 1 | GI香港マイル | シャティン 芝1600 | 5人気 | C.スミヨン | 1:33.2 | — | 映像 | |
| 9 | GIII富士S | 東京 芝1600 | 1人気 | M.デムーロ | 1:33.7 | 上り34.1 | 映像 | |
| 1 | GINHKマイルカップ | 東京 芝1600 | 2人気 | M.デムーロ | 1:32.4 | 上り33.9 | 映像 | |
| 4 | GI皐月賞 | 中山 芝2000 | 2人気 | M.デムーロ | 1:58.5 | 上り34.9 | 映像 | |
| 2 | GIII共同通信杯 | 東京 芝1800 | 1人気 | M.デムーロ | 1:47.0 | 上り33.5 | 映像 | |
| 1 | GI朝日杯フューチュリティステークス | 阪神 芝1600 | 2人気 | M.デムーロ | 1:33.9 | 上り33.9 | 映像 | |
| 1 | GIIデイリー杯2歳S | 京都 芝1600 | 1人気 | M.デムーロ | 1:35.4 | 上り33.9 | 映像 | |
| 1 | OP報知杯中京2歳S | 中京 芝1600 | 1人気 | M.デムーロ | 1:34.7 | 上り34.9 | — | |
| 1 | 2歳新馬 | 中京 芝1600 | 1人気 | M.デムーロ | 1:37.7 | 上り33.3 | — |
血統
金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ| 父ダイワメジャーDaiwa Major | サンデーサイレンスSunday Silence | Halo |
| Wishing Well | ||
| スカーレットブーケ | ノーザンテーストNorthern Taste | |
| スカーレットインクScarlet Ink | ||
| 母ヴィアメディチ | Medicean | Machiavellian |
| Mystic Goddess | ||
| Via Milano | Singspiel | |
| Salvinaxia |
旅程 — この馬の物語
2016年生まれの栗毛の牡馬。父ダイワメジャー、母ヴィアメディチ。主な勝ち鞍は朝日フューチュリティ・NHKマイルC・香港マイル。
賞賛の名を継いで ― 名前と血
2016年3月16日、北海道安平町のノーザンファームに栗毛の牡馬が生まれた。父ダイワメジャーは皐月賞を勝ち、古馬になってからマイルのGIを重ねた栗毛。母ヴィアメディチはアイルランド産の栗毛で、フランスで7戦4勝、2010年にG3リューリー賞を制している。母の一族には Via Milano、Via Lazio、Via Ravenna と、イタリアの地名を冠した名が並ぶ。欧州の血に日本のマイル王を重ねた配合だった。 2017年のセレクトセール1歳馬市場。友道康夫調教師の推薦を受けて、この馬に5200万円(税別)の値を付けたのは「アドマイヤ」の冠名で知られる近藤利一だった。冠名は英語で賞賛を意味する Admire。1999年にアドマイヤベガで日本ダービーを、2007年にはアドマイヤムーンでドバイと宝塚記念を獲った馬主である。その所有馬の多くは、オーナー自身のイニシャル「R.K」を刺繍したメンコをつけていた。 2018年6月30日、中京の芝1600m。ミルコ・デムーロを背にした新馬戦を、圧倒的1番人気に応えてハナ差で勝ち上がる。そこで退けた相手の名は、ケイデンスコール。この名は、一年後の五月にもう一度この物語へ現れる。
無傷の四連勝 ― 二歳王者
7月の中京2歳ステークスは単勝オッズ1倍台の支持を集め、鞍上が手綱を持ったまま3馬身差。11月のデイリー杯2歳ステークスでは初めてハナを切り、直線でメイショウショウブとの追い比べを制して、無傷の3連勝で重賞を手にした。 12月16日、阪神の朝日杯フューチュリティステークス。1番人気はサウジアラビアロイヤルカップを快勝した牝馬グランアレグリアで、アドマイヤマーズは2番人気に退いた。逃げるイッツクールと、その直後につけたグランアレグリアを見ながらの3番手。直線で前の2頭を交わすと、追ってきたクリノガウディーに2馬身の差をつけた。1番人気の牝馬は3着。4戦4勝のままGI馬になった。友道康夫にとっては、このレース初めての勝利だった。 年が明け、JRA賞の記者投票が行われる。暮れのホープフルステークスを圧勝したサートゥルナーリア――こちらもデムーロが乗っていた――と票を分け合い、30票差で最優秀2歳牡馬に選ばれた。
マイルの外へ ― 春の二敗
明けて3歳。2歳王者2頭に乗るデムーロの兼ね合いが注目されていたが、1月10日、サートゥルナーリアの鞍上がクリストフ・ルメールに替わると発表される。デムーロはアドマイヤマーズに残った。 2月10日の共同通信杯は7頭立て。初めての長距離輸送と1800mへの距離延長を不安視されながら1番人気に推され、自ら逃げる手に出る。だが直線半ば、内からダノンキングリーに交わされて2着。5戦目にして最初の黒星だった。 4月14日、さらに200m延びた皐月賞。1番枠から2番人気で発走したが、直線で伸びを欠き、サートゥルナーリアら上位勢から2馬身ほど離された4着に終わる。父は皐月賞馬だったが、息子の距離はここではなかった。中山の直線で、かつて同じ手に導かれた2頭の2歳王者は、はっきりと明暗を分けた。
令和最初のGI ― 五月五日、東京
皐月賞から中二週、距離をマイルへ戻してNHKマイルカップへ向かう。相手は再びグランアレグリア。桜花賞を2馬身半差で制した牝馬が、ここでも1番人気に推された。 18頭立ての8枠17番から中団の外へ。直線、外に持ち出されたアドマイヤマーズが前をまとめて捉えにかかると、さらに外から一頭が矢のように伸びてきた。14番人気のケイデンスコール――前年の夏、中京の新馬戦でハナ差の2着に敗れた、あの馬である。半馬身。振り切ったのはアドマイヤマーズだった。1分32秒4、上がり33秒9。マイルのGI2勝目。 この日は令和が始まって最初のGIだった。不振の続いていたデムーロは、令和で最初のGIを勝てた、これで気持ちがすっきりした、と喜びを口にしている。なおグランアレグリアは4着に入線したが、直線でダノンチェイサーの進路を塞いだとして5着に降着している。
秋の躓きと、十一月十七日
香港マイルを最大目標に据え、秋は10月19日の富士ステークスから始動した。その年のヴィクトリアマイルを勝ったノームコアを抑えて1番人気。だが稍重の東京で直線の鞭に反応せず、勝ったノームコアから0秒7離された9着。マイル戦では初めての敗戦だった。デムーロは敗因が分からないとしつつ、久々の一戦だったことを挙げ、使って良くなりそうだと語っている。 その一か月後、11月17日の早朝。近藤利一が大阪市内の病院で息を引き取った。77歳。その年の夏にがんを公表し、闘病を続けていた。友道によれば、亡くなる一週間ほど前まで、オーナーは香港のことを気にかけていたという。 主を失ったまま、アドマイヤマーズは予定どおり香港へ発った。
喪章の香港 ― 十二月八日
シャティンの芝1600m。日本からはインディチャンプ、ノームコア、ペルシアンナイトとGI馬が並び、地元には前年このレースを圧勝したビューティージェネレーションがいた。1番人気はその香港の王。アドマイヤマーズは日本の発売で単勝13.4倍の5番人気にすぎない。鞍上は初コンビのクリストフ・スミヨンで、左足に喪章を着けていた。 香港での調整では、日本でつけていた鼻革も舌縛りも外された。下見所では、メンコさえ外していた。かわりに「R.K」の名は、調教師の胸にあった。友道が着ていた青いスーツは、近藤がこの日のために新調していたもので、左胸の内ポケットの上にオーナーのネームが入っている。サイズを直して袖を通し、ネクタイは前年の朝日杯でオーナーが締めていたものを選んだ。スタンドには、遺影を抱いて観戦する旬子夫人の姿があった。 レースは、カーインスター、ビューティージェネレーション、ザーキ、シンプリーブリリアントを前に見る5番手。直線入口の手応えは、決して良くは映らなかった。だが残り200mを切ると脚色が変わり、外めから前をまとめて飲み込み、追い上げるワイククを半馬身抑えて先頭でゴールを駆け抜けた。香港の王は3着に沈んでいた。 香港マイルを3歳馬が勝ったのは、この年が初めてだった。日本調教馬が3歳で海外GIを勝つのは2005年のシーザリオ以来2頭目、古馬に混じっての海外GIでは初めてになる。ゴールの瞬間、友道は大江祐輔助手と抱き合い、人目をはばからずに泣いた。「馬もわかっていたんじゃないですか」[^1]。スミヨンは、この勝負服を一番高いところに掲げることができてよかった、と言った。近藤利一の名義で走った馬が挙げた、最後のGI勝利だった。
出典:日本中央競馬会「レース結果・回顧:2019年香港マイル(海外競馬発売)」2019年12月8日施行、https://www.jra.go.jp/keiba/overseas/race/2019hkir/mile/kaiko.html、閲覧日:2026年7月25日。
連覇は遠く ― 二〇二〇年
4歳初戦はドバイターフの予定だった。スミヨンとの再コンビで現地に入ったが、新型コロナウイルスの感染拡大でレースそのものが中止となり、一度も走らずに帰国する。 半年ぶりの実戦となった6月の安田記念は、川田将雅を迎えて6番人気。先行したものの直線で伸びず6着に終わった。勝ったのはグランアレグリアである。朝日杯とNHKマイルで二度先着していた牝馬が、この年は前を走り抜けていった。 秋は58kgを背負い、キャリアで初めての1400m戦となるスワンステークスへ。2番手から粘って3着。続くマイルチャンピオンシップでも先行し、直線でインディチャンプと馬体を併せたが、外からグランアレグリアに差し切られ、インディチャンプにもクビ差及ばず3着。川田は、この馬本来の走りはできた、それ以上に強い馬が二頭いた、という趣旨を語っている。 連覇を目指した12月13日の香港マイル。スミヨンが検疫で新型コロナウイルスの再検査を求められて騎乗できなくなり、レースの3日前にライアン・ムーアへの乗り替わりが発表された。2番手から4コーナーで先頭に立ったが、直線半ばで1番人気ゴールデンシックスティに外から交わされ、最後はサザンレジェンドにもわずかに捉えられて3着。 帰国後の12月17日、この一戦を最後に現役を退くことが発表された。13戦6勝、GI3勝。デビューから二年半、けがで戦線を離れることは一度もなかった。
安平へ帰る ― 父となって
種牡馬としての繋養先は、生まれた町と同じ安平の社台スタリオンステーション。初年度の種付料は300万円。シャトル種牡馬として、オーストラリアのアローフィールドスタッドにも繋養されている。引退にあたって友道は、けがをせず海外遠征もこなしたこの馬の丈夫さが仔に伝わり、活躍馬が多く出ることを望むと述べている。 2024年7月6日、小倉の2歳未勝利をジャルディニエが勝ち、産駒がJRAで初めて勝ち星を挙げた。そして初年度産駒の世代から、一頭の鹿毛の牝馬が出る。エンブロイダリー。2025年2月にクイーンカップを勝って産駒初の重賞制覇をもたらすと、4月13日の桜花賞を制し、種牡馬アドマイヤマーズにGI初制覇を贈った。秋には秋華賞、翌2026年にはヴィクトリアマイルも加えている。 父が届かなかった場所もある。皐月賞の直線と、二度目の香港の暮れ。だが残り200mから脚色が変わるあの感じは、確かに次の代へ渡った。賞賛の名を背負い、オーナーの遺影の前で海外の王座を獲ったアドマイヤマーズは、いま生まれた土地の放牧地に立っている。旅は、その仔たちの脚で続いている。
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