名馬の記憶を、
再生する。

年表ICHINEN-ISSO — 2400m

BOKUJŌ-CHŌ — HOKKAIDO

牧場帖

一年ずつ、顔ぶれをたどる。引退した名馬たちの繋養・在籍と映像を綴る帳面。
HORSES

名馬録

この世代(生まれ年)

スライダーを動かすと、その世代に生まれた馬を獲得賞金の多い順で表示します。

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エイシンフェンサーのイメージビジュアル
エイシンフェンサーA Shin Fencer
A Shin Fencer

エイシンフェンサー

通算成績24戦6勝

獲得賞金17,403万円

生年月日 2020.04.29(令和2年)毛色 黒鹿毛

全成績

主要戦績(抜粋)・新しい順
エイシンフェンサーの成績一覧
年月日着順レースコース人気騎手タイム上り3F映像
11 GIIIシルクロードS 京都 芝1200 5人気 川又賢治 1:08.5 上り33.7映像
5 GII阪神カップ 阪神 芝1400 8人気 川又賢治 1:19.6 上り34.7映像
5 GIII京阪杯 京都 芝1200 3人気 川又賢治 1:07.9 上り34.1映像
12 GIチェアマンズSP シャティン 芝1200 6人気 C.ウィリアムズ
5 GI高松宮記念 中京 芝1200 8人気 川又賢治 1:08.5 上り34.2映像
1 GIIIシルクロードS 京都 芝1200 9人気 川又賢治 1:08.2 上り34.0映像
1 OPカーバンクルS 中山 芝1200 11人気 川又賢治 1:07.4 上り33.8
13 OPタンザナイトS 京都 芝1200 7人気 川又賢治 1:09.2 上り34.0
4 OPUHB賞 札幌 芝1200 3人気 川又賢治 1:08.2 上り34.4
1 TVh賞 札幌 芝1200 1人気 川又賢治 1:08.3 上り33.9
2 TVh杯 函館 芝1200 6人気 川又賢治 1:08.5 上り34.8
10 やまびこS 福島 ダ1150 2人気 川又賢治 1:09.1 上り37.7
3 淀屋橋S 阪神 芝1200 7人気 川又賢治 1:08.4 上り34.1
3 下関S 小倉 芝1200 8人気 川又賢治 1:09.3 上り34.8
10 カウントダウンS 阪神 芝1200 5人気 吉田隼人 1:09.3 上り34.4
3 キビタキS 福島 芝1200 7人気 川又賢治 1:10.3 上り36.2
1 HBC賞 札幌 芝1200 1人気 川又賢治 1:08.2 上り33.9
3 立待岬特別 函館 芝1200 6人気 川又賢治 1:10.0 上り34.7
1 3歳以上1勝クラス 函館 芝1200 2人気 川又賢治 1:09.7 上り35.1
5 3歳1勝クラス 阪神 ダ1200 6人気 団野大成 1:12.8 上り36.3
5 3歳1勝クラス 阪神 ダ1200 9人気 団野大成 1:12.3 上り36.9
1 3歳未勝利 阪神 ダ1200 1人気 岩田望来 1:13.7 上り37.8
2 3歳未勝利 中京 芝1400 9人気 岩田望来 1:23.6 上り36.2
5 2歳新馬 阪神 芝1600 2人気 団野大成 1:37.0 上り34.9

血統

金色の名は 名馬ジャーニー に掲載 — その馬のページへ
エイシンフェンサーの血統表(左から親・祖父母・曽祖父母)
ファインニードルFine NeedleアドマイヤムーンAdmire MoonエンドスウィープEnd Sweep
マイケイティーズ
ニードルクラフトNeedlecraftMark of Esteem
Sharp Point
エーシンパナギアエイシンサンディサンデーサイレンスSunday Silence
エイシンウイザード
サンタマリアガールHigh Yield
エイシンマリアンナ
STORY

旅程 — この馬の物語

2020年生まれの黒鹿毛の牝馬。父ファインニードル、母エーシンパナギア。主な勝ち鞍はシルクロードS。

剣士の名 ― 名前と血

冠名エイシンに、剣士を意味するフェンサーを継いだ。細い刃で間合いを詰め、一瞬の踏み込みで突く——短距離馬にふさわしい名だった。 2020年4月29日、北海道・三石の木田牧場に生まれた黒鹿毛の牝馬。父ファインニードルは2018年、シルクロードステークスから高松宮記念、そして秋のスプリンターズステークスまで駆け上がり、春秋のスプリントGIを制して、その年の最優秀短距離馬に選ばれた快速馬である。母エーシンパナギアは中央と佐賀を渡り歩いた地味なダート牝馬で、26戦してタイトルには手が届かなかった。華やかな父と、勝ち上がりに苦労した母。エイシンフェンサーの血には、その両方が流れていた。 そして、この牝馬の手綱をやがて長く握ることになる男がいた。川又賢治。2017年にデビューし、技術を評価されて競馬学校を巣立った若手だったが、重賞の大舞台とは長く縁がなかった。名を持つ牝馬と、名を待つ騎手。馬と人、二つの遠回りが、ここから始まる。

遠回りの入口 ― ダートから芝へ

2022年12月28日、阪神の芝1600メートル。団野大成を背にした新馬戦は、2番人気に応えられず5着だった。年が明けても未勝利は続き、中京の芝1400で2着に惜敗する。転機はダートだった。2023年2月、岩田望来に導かれた阪神ダート1200を1番人気で快勝し、ようやく一つ目の白星をつかむ。 だが勝ち上がった1勝クラスでは、ダートの1200で二度続けて5着に沈む。距離でも砂でもない。彼女の居場所は、まだ見つかっていなかった。答えは6月の函館で出る。芝1200に戻し、初めて川又賢治が跨ったその日、エイシンフェンサーは持ったままで抜け出した。夏の洋芝、短い直線、電光石火のスプリント——ここが彼女の間合いだった。続く札幌のHBC賞も1番人気で制し、剣先はようやく的を捉えはじめる。

夏の洋芝 ― オープンへの階段

芝の短距離に軸を定めてから、エイシンフェンサーは着実に番付を上げていった。3勝クラスの壁は厚く、下関ステークス、淀屋橋ステークスと3着が続く。それでも川又は乗り替わらなかった。2024年7月、札幌のTVh賞。1番人気に推された牝馬は、夏の洋芝で危なげなく突き抜け、ついにオープンの扉をこじ開ける。 昇級後はすぐに壁にぶつかった。12月のタンザナイトステークスでは13着と大敗する。重賞の常連たちの中で、彼女はまだ伏兵ですらなかった。川又にとっても、勝ち鞍は積み上がっても重賞のタイトルだけが遠かった。2022年には函館で落馬して右鎖骨を折り、痛みからも這い上がってきた男である。人も馬も、あと一つが足りない。その一つが、年明けの二週間で一気に埋まる。

二週間 ― 人馬、初のタイトル

2025年1月18日、中山のカーバンクルステークス。単勝は11番人気まで沈んでいた。だが好スタートから3番手につけたエイシンフェンサーは、直線で力強く伸び、猛追する1番人気バースクライをクビ差だけ抜かせなかった。オープン初勝利。伏兵の一撃だった。 勢いは止まらない。中二週で迎えた2月2日、京都のシルクロードステークス。稍重の芝1200で9番人気の低評価をよそに、絶好の発馬から中団に控えると、直線は内めの三分どころを鋭く割って一気に突き抜けた。2着グランテストに1馬身半。父ファインニードルが2018年に制したその同じ重賞を、娘が七年越しに勝ち継いだ——親子制覇である。そして鞍上の川又賢治にとっては、デビューから九年目、重賞挑戦二十六度目で初めて手にしたJRA重賞のタイトルだった。十戦以上を共にしてきた相棒と分け合った、悲願の一勝だった。

父の頂へ ― 高松宮記念

タイトルは、この牝馬をもう一段高い舞台へ押し上げた。2025年3月30日、中京の高松宮記念。父ファインニードルが七年前に、レッツゴードンキをハナ差で差し切って戴冠した、その春のスプリント王決定戦である。娘は8番人気ながら、掲示板に食い込む5着に走った。勝ったのはサトノレーヴ。頂には届かなかったが、父が立った同じ地面を、同じ距離で、堂々と走り抜けた。 翌月には香港への遠征も経験する。シャティンのチェアマンズスプリントプライズでは通用せず12着に終わったが、地方のダートを転戦した母から受けた血が、GIの舞台でアジアの一線級と渡り合う高みまで昇っていた。この春、川又賢治は吉村圭司厩舎の所属騎手となる。タイトルを分け合った牝馬の陣営に、正式に身を置くことになったのだ。

剣を納める ― 浦河へ

頂点を知った牝馬にも、下り坂は静かに訪れる。秋の京阪杯は5着、暮れの阪神カップも5着。年が明けた2026年2月1日、連覇を期して臨んだシルクロードステークスは11着に沈んだ。かつて栄光を掴んだ舞台での一戦が、結果として現役最後の走りになった。 2026年2月18日、エイシンフェンサーは競走馬登録を抹消された。向かった先は、北海道・浦河の栄進牧場。母エーシンパナギアが生まれたその牧場に、娘は繁殖牝馬として帰っていく。24戦6勝、獲得賞金は1億7403万円。砂の未勝利戦に始まり、夏の洋芝で花を開かせ、父の勝った重賞を勝ち継いで、GIの舞台にまで駆け上がった一頭だった。細い剣士は、生涯にただ一度、いちばん高いところで的を貫いてみせた。そしてその一突きは、九年間タイトルを待った一人の騎手を、重賞ジョッキーに変えたのだった。

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